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日田彦山線復旧に転機は来たか。JR九州がBRTなどを提案

鉄道復旧との三択迫る

不通が続くJR日田彦山線の添田~夜明間について、JR九州がBRTやバスへの転換案を提示しました。統一地方選を終えて、福岡、大分両県知事の発言にも変化の兆しがあります。復旧問題に一つの転機が訪れたのでしょうか。

日田彦山線復旧会議

JR日田彦山線の添田~夜明間は、2017年7月の豪雨で被災し、現在も不通が続いています。JR九州と、福岡、大分両県をはじめとする沿線自治体は、「日田彦山線復旧会議」を設けて協議を続けてきました。

これまでの協議で、JR九州は、不通区間が2016年度に2億6600万円の赤字を生んでいるとして、鉄道で復旧する場合、運行再開後に自治体側に年1億6000万円の支援を求めています。

自治体側はこれに反発。当初は、2018年度末までに復旧の方向性を出す予定でしたが、現在まで議論はまとまっていません。

日田彦山線

鉄道復旧案

新年度にずれ込んで2019年4月23日に開かれた第4回日田彦山線復旧会議では、JR九州が、通常のバスとBRTへの転換案を新たに提示しました。鉄道復旧を含めた3案を、JR九州の復旧案として提示しています。

JR九州は、復旧の前提として、運行主体はJR九州もしくはその委託先とし、継続的な運行が確保できる内容としました。

まず鉄道復旧案ですが、復旧費用に56億円がかかり、鉄道軌道整備法による補助を申請します。年間の運行費用として、2.9億円を見込んでいて年1億6000万円の運行支援を地元自治体に求めています。

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BRT、バス転換案

BRTに転換する場合、釈迦岳トンネルを含む区間7.9kmを専用道にします。初期費用は10億8000万円で、年間運用費用は1億1000万円です。

通常のバスに転換する場合、ルートは現在の鉄道代行バスをなぞります。既存の一般道をバスが走るため、初期費用は1億8000万円と低くなります。年間運行費用は1億4000万円です。

所要時間は、鉄道44分、BRT49分、バス69分。鉄道とBRTの所要時間に大差はありませんが、一般道を走るバスは時間がかかります。ただし、一般道バスの場合、釈迦岳トンネルを通らないため、東峰村の小石原地区で乗車機会が提供できます。

BRTの初期費用は鉄道の5分の1で、年間運行費用も半額以下。一般道バスの初期費用は鉄道の3%で、年間運行費用も半分です。JR九州は、BRTやバス転換の場合には、年間運行費用の財政支援を自治体に求めないとしています。

自治体側は、この提案を持ち帰り、住民の意見を聞いて対応を決めるとして、会議が終了しました。

日田彦山線復旧会議資料
画像:第4回日田彦山線復旧会議資料

日田彦山線復旧会議資料
画像:日田彦山線復旧会議資料
日田彦山線復旧会議資料
画像:日田彦山線復旧会議資料

知事発言に変化

会議後の福岡、大分両知事の発言からは、これまでの鉄道復旧一辺倒の姿勢から、変化の兆しが見て取れます。

大分県の広瀬勝貞知事は「住民は早期復旧を望んでいる。住民がどう思うかが大事」などと述べました。

福岡県の小川洋知事は、翌日の記者会見で「鉄道での復旧が望ましいという考えは変わっていないが、まず地域のみなさまの声を大事にしたい」と述べました。

いずれも、地域住民が受け入れるなら、BRT・バス転換を容認する可能性を示唆したとも受け取れます。

両知事は、2019年4月7日投票の統一地方選で、再選されたばかりです。自身の選挙を終えたことが、発言内容に影響を及ぼしているのかもしれません。

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只見線スキーム

ただ、日田彦山線添田~夜明間でBRT・バス転換が受け入れられるかは、まだわかりません。

2011年に災害で一部区間が不通となったJR東日本の只見線は、似たような状況で、沿線自治体が負担を受け入れ鉄道復旧に踏み切りました。

只見線は、2011年7月の新潟・福島豪雨で一部区間が不通となり、現在も会津川口~只見間が運休中です。復旧費の総額は約81億円で、JR東日本は当初、復旧に否定的な姿勢を示していました。しかし、地元自治体が、地元負担による鉄道復旧をJR東日本に要請。JR東日本が求めた上下分離も受け入れたため、全線復旧される見通しとなりました。

復旧費用81億円は、国、地元自治体、JR東日本が、それぞれ3分の1ずつ負担します。さらに、運転再開後の年間維持管理費の約2億1000万円についても、その7割を県が負担し、沿線自治体が3割を負担します。

運行費用の負担を沿線自治体が受け入れたことで、JR東日本は鉄道復旧に踏み切りました。

三択を迫る

JR九州は、只見線スキームに似た「自治体が運行費用を負担する鉄道存続」か、「BRT転換」「バス転換」の三択を、自治体側に迫っています。「JR九州が運行費用を全額負担する鉄道復旧」は、選択肢にありません。

日田彦山線の被災前の輸送密度は、田川後藤寺~夜明間で「299」にすぎません。添田~夜明間に限れば、もっと少ないでしょう。こうした過疎区間に巨費を投じて鉄道を復旧させ、赤字を垂れ流して運行させるわけにはいかない、というJR九州の強い意志が感じられます。

沿線自治体としても、復旧費用の一部負担を受け入れる姿勢は見せています。しかし、復旧後の永続的な運行費用負担については、抵抗感が強いようです。

被災から2年

とはいえ輸送密度299はさすがに低すぎるので、沿線自治体としても、反発はしても反論はできない状況に陥っているように見受けられます。

沿線自治体が「JR九州の運行費用全額負担」にこだわり続ければ、現状のバス代行が続くだけです。そのため、いずれかを選択しなければならない局面になってきたといえます。

被災からもうすぐ2年が経ちます。日田彦山線の復旧問題に、一つの転機が訪れたようです。(鎌倉淳)