「肥薩線再生協議会」スタート。沿線自治体がメンバー、鉄道復旧方針を確認

費用負担に応じられるか

2020年7月豪雨で不通が続く肥薩線の復旧に向けて、沿線自治体で構成する「JR肥薩線再生協議会」の初会合が開かれました。鉄道での復旧方針を確認しましたが、費用負担をめぐる議論はこれからです。

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沿線12自治体で構成

JR九州の肥薩線は、2020年7月豪雨で鉄橋を流出するなど大きな被害を受け、八代~吉松間の不通が続いています。JR九州は、2022年3月に復旧費用の概算額を約235億円と公表しました。

これを受け、熊本県と沿線12自治体で作る「JR肥薩線再生協議会」が発足。2022年4月18日に初会合が開かれました。

肥薩線

検討会議との違い

肥薩線復旧をめぐる枠組みとしては、国、熊本県、JR九州で構成する「JR肥薩線検討会議」があります。これに対し、「再生協議会」は熊本県と沿線市町村をメンバーとしています。

市町村をメンバーとする協議会が設けられた背景として、復旧の枠組みを巡る問題があります。

検討会議で議論されている復旧の枠組みは、河川事業や道路復旧費用と連携させることで、復旧費用を軽減する方法です。その上で、上下分離を行い、鉄道軌道整備法による補助金を活用すれば、国が復旧費用の3分の1を負担してくれます。

ただ、上下分離となると、地方自治体も応分の負担が求められそうです。また、JR九州は、復旧後の運行費用の一部負担も求めています。こうした財政負担に応じるには、沿線全市町村の同意が不可欠です。

このため、協議会では、JRから提示された復旧案を受け、復旧に向けた方策の検討をするほか、持続可能な運行に向けた利用促進策などを話し合います。

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自治体が合意できるか

この日の会議は非公開で行われましたが、各社報道によりますと、鉄道での復旧を目指す方針を確認したほか、復旧費用について国への財政支援をどう求めるかについて協議が行われたということです。

鉄道復旧方針が改めて示されたことは何よりですが、地元自治体が費用負担で合意できるかは何ともいえません。とくに運行費用の補助は将来にわたり生じる負担なので、鉄道利用が少ない自治体が渋ってもおかしくなく、難航する可能性もありそうです。

鉄道復旧という総論に異を唱える自治体はなさそうですが、各論ではどうなるでしょうか。(鎌倉淳)

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