阪神高速湾岸線の湊川延伸事業が進んでいます。最大の難所である六甲アイランド~ポートアイランド間の長大橋梁のデザインも決定。同時に、名神高速への連絡道路も建設されます。概要と開通予定を見ていきましょう。
大阪湾岸道路西伸部
阪神高速5号湾岸線は、南港JCT~六甲アイランド北出入口間が供用中で、さらにポートアイランドを経て垂水JCTまで延伸する計画があります。これを「大阪湾岸道路西伸部」といいます。
このうち、六甲アイランド北~駒栄間が2016年に事業化されています。駒栄では阪神高速31号神戸山手線に接続し、湊川JCTを経て7号北神戸線へ抜けられることから、「湾岸線湊川延伸」と呼ばれることもあります。
現在、六甲アイランドで途切れてしまっている湾岸線がポートアイランドまで伸び、さらに湊川を経て山陽道方面まで抜けられるようになるわけです。
ただし、湊川ジャンクションでは構造上、湾岸線から3号神戸線へ入ることはできません。駒栄出口で降りて、湊川入口から乗り直す必要があります。
神戸市中心部へアクセス改善
大阪湾岸道路西伸部の総延長は14.5km。片側3車線(両側6車線)で、設計速度は80km/hです。
設置される出入口は、六甲アイランド西、ポートアイランド東、ポートアイランド西、駒栄の4つ(いずれも仮称)。このうち、ポーアイ東は大阪方面の出入口、六アイ西とポーアイ西は湊川方面の出入口となります。駒栄は両方向に出入りでききます。
大阪方面からやってきてポーアイ東で降りれば、すぐに港島トンネルの入口で、神戸大橋も近くです。三宮や新神戸、神戸空港にスムーズにアクセスできます。
これまでも住吉浜からハーバーハイウェイを経由すれば、神戸市中心部やポーアイへのアクセスはできましたが、「湊川延伸」により、3車線の道路でスムーズに走行できるようになるわけです。
事業費5,000億円
ということで、神戸市民ならずとも、関西エリアの住民には待望の高速道路です。もっと早くできていてよかった区間、とお考えの方も多いでしょう。
なかなか事業化に至らなかったのは、区間の多くが海上をまたぐ橋梁で、建設費が非常に高いからです。
全体事業費は、じつに約5,000億円と見積もられています。西九州新幹線の建設費が約6,200億円でしたので、その8割に達する金額です。
14kmの高速道路にしては巨額すぎるように感じますが、それだけの金額を投じる価値があると判断されたのでしょう。事業化決定から2年後の2018年12月に着工となりました。
世界最大規模の連続斜張橋
2023年8月1日には、六甲アイランド~ポートアイランド間の長大橋のデザインが発表されました。
神戸港への航路をまたぐ区間で、「湊川延伸」で最大の難所ともいえる場所です。
橋の構造は「7径間連続4主塔鋼斜張橋」です。主塔が4つ連続する「斜張橋」で、前後の区間とあわせて橋脚の間が7箇所ある、という意味です。
橋の長さは2,739mです。最大支間長が650mで、連続斜張橋としては世界最大規模だそうです。
斜張橋の主塔の高さは最大213mに達し、基礎部から70mの位置に橋桁を設置します。大型船が橋桁下を通れるようにするためです。
東神戸大橋の主塔は150mですから、それよりも60mも高いです。この大橋が、阪神高速湾岸線の新たなシンボルとなるのは間違いなさそうです。
橋梁デザインは、「神戸の都市景観との調和」「シンボル性」「走行空間からの眺望性・演出性」などに配慮します。路線全体として明るくモダンな印象となるように、ベージュ系を基軸とした色相となります。
名神高速とも接続
「湊川延伸」により、5号湾岸線の西側の行き止まり問題は解決します。
しかし、湾岸線にはもう一つ課題があります。名神高速へアクセスしづらいことです。せっかく湾岸線が湊川まで延びても、名神高速と接続しなければ、京都方面のクルマは利用できません。
そこで、湾岸線と名神高速をつなぐ高速道路の建設する計画も進められています。「名神湾岸連絡線」といい、名神高速西宮ICと阪神高速西宮浜ランプを接続します。
名神湾岸連絡線が開通すれば、北神戸線から名神高速に向かう際、湊川JCTから湾岸線を経由することができるようになります。もちろん、ポーアイや六アイからの名神アクセスも改善します。
名神湾岸連絡線の開通後、西宮浜ランプはジャンクションとなり、湾岸線の双方向と往来できるようになります。名神湾岸連絡線の西宮浜ICもできます。つまり、湾岸線両方向と西宮浜ICから名神高速に乗ることができるようになります。
道路延長は約2.7km、片側1車線(上下2車線)で、設計速度は60km/h。全体事業費は1050億円です。
開通時期は?
気になる開通時期ですが、湾岸線湊川延伸、名神湾岸連絡線ともに、はっきりとは示されていません。したがって、以下は当サイトの予想です。
まず湾岸線湊川延伸は、工事期間は10年程度と見積もられています。2018年に着工していますので、順調にいけば2028年ごろに開通する計算です。環境影響評価書には「計画交通量」が示されていますが、その想定時期は2030年度となっていて、この頃には開通している想定であることが読み取れます。
つぎに、名神湾岸連絡線は、工事期間が8年程度と見積もられています。2021年度に事業化されましたが、まだ着工に至っていません。環境影響評価書に示された計画交通量は、湾岸線延伸と同じ2030年度です。
これらのことから、おおざっぱにいえば、両高速道路とも開通時期のメドは2030年ごろといえます。湾岸線湊川延伸は、もう少し早く、2028年ごろには完成するかもしれません。
ただ、工事に遅延は付きものですし、建設に対する反対運動もあります。地元の理解を得ながら進めるなら、もう少し遅くなることもありそうです。(鎌倉淳)