芸備線・木次線・福塩線をどう復旧するか。運転再開見通し示されず

利用者が少ない区間だが

2018年7月の西日本豪雨で被災した路線について、JR西日本が復旧計画を明らかにしました。しかし、中国山地のローカル線である芸備線・木次線・福塩線の一部区間では、具体的な復旧の見通しが示されていません。輸送密度がきわめて低いこれらの区間を、どう復旧するのでしょうか。

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中国山地3線の見通し示さず

JR西日本は2018年7月18日の社長記者会見において、「平成30年7月豪雨」に伴う長期間の運転見合わせ区間の復旧見通し詳細を明らかにしました。

JR西日本によりますと、現時点で把握された被災箇所数は、279カ所におよびます。そのうち、伯備線や芸備線の下深川以南は8月中旬までに運転再開し、大動脈である山陽本線についても、「数ヶ月から年内」で復旧できるとの見通しが示されました。

一方、芸備線・備後落合~狩留家間、木次線・出雲横田~備後落合間、福塩線・府中~塩町間については、「運転再開まで長期間」としたのみで、具体的な復旧見通しを示しませんでした。

芸備線橋梁流出
芸備線 白木山~狩留家駅間 橋桁流出箇所。画像:JR西日本プレスリリース

輸送密度は?

復旧見通しが示されなかった区間の2016年度の輸送密度(平均通過人員)は、以下の通りです。

・芸備線 備後落合~三次 225
・芸備線 三次~狩留家 1,381
・福塩線 府中~塩町 206

木次線については、不通区間のみの輸送密度は公表されていません。ただ、全線で204となっており、出雲横田~備後落合間に限ればもっと低いでしょう。

このエリアの最大の被害箇所は、芸備線・白木山~狩留家駅間の第1三篠川橋桁流出です。朝日新聞7月18日付によりますと、信号などを動かすケーブルごと橋桁が流失し、同じケーブルを使う福塩線、木次線も復旧が見通せないとのことです。

一方で、輸送密度が9と、日本で最も低い芸備線・東城~備後落合間を含む、新見~備後落合間については、JR西日本は「数ヶ月後~年内」との復旧見通しを示しています。

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三江線は復旧したが

JR西日本は、いまのところ全線復旧する意思を示しています。しかし、利用者が少ない区間だけに、順序としては後回しになりそう。朝日新聞によると、JR西日本の来島達夫社長は「存廃は地元との協議次第との認識を示した」とのことで、復旧の場合も地元に費用負担を求める可能性を示唆したようです。

2013年の島根県集中豪雨の際に、同じJR西日本の三江線が、橋梁流出などの大きな被害を受けました。このときは、林野庁の「災害関連緊急治山事業」を活用した公的資金支援のスキームを構築し、JR西日本の負担額を抑える形で復旧が実現しました。ただ、三江線は、復旧後3年半で廃止され、税金を投入した復旧の意味を問われました。

中国地方の3路線が復旧するのか、復旧するとしてどのようなスキームになるのかはわかりません。輸送密度だけ見れば、いずれ存廃の議論が出てきそうな区間も含まれていますが、地元の方にはかけがえのない鉄路です。

地域のシンボルとして、地元負担を受け入れて残す決断をした、只見線の例もありますし、鉄道軌道整備法の改正で、黒字鉄道会社への災害復旧補助が可能にもなっています。被災した鉄道をどうするのか。実のある議論を期待したいところです。(鎌倉淳)

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