福岡市営地下鉄をJR長者原駅まで延伸する計画が動き始めます。福岡県が6月議会で調査費を計上することが明らかになりました。
古くからある構想
福岡市営地下鉄空港線は、姪浜~福岡空港間13.1kmを結ぶ路線です。福岡空港が終点ですが、さらに延伸して、JR篠栗線(福北ゆたか線)まで延伸する構想が、古くからありました。
粕屋町の議事録によると、1986年頃に、福岡空港駅を経て原町駅に至る路線構想が盛り上がったそうです。ただ、1993年に地下鉄が福岡空港駅まで開業した後、その先の延伸については、具体的な動きがありませんでした。
飯塚で運動が始まる
実現に向けた動きが活発になったのは、比較的最近のことです。2016年7月に、飯塚商工会議所などが主体となった「福岡市営地下鉄福岡空港駅とJR九州長者原駅接続促進協議会」が発足し、建設運動が動き出しました。
2017年9月には、福岡市や糟屋地域の企業など約70団体が「JR長者原駅と福岡市営地下鉄福岡空港線接続促進協議会」を結成し、署名運動を開始しました。署名は10万人分集まり、2018年10月に両促進協議会などが、福岡県議会、福岡県、福岡市に建設を要望しています。
3012万円の調査費
その後も要望を重ね、2021年2月には糟屋地区の6町(宇美町、篠栗町、志免町、須恵町、久山町、粕屋町)、筑豊地区の2市3町(直方市、飯塚市、小竹町、鞍手町、桂川町)が「福岡市地下鉄福岡空港駅・JR九州長者原駅接続促進期成会」を結成。福岡県に対し、調査実施を求める要望書を提出しました。
これを受け、福岡県議会の2月定例会で、服部誠太郎副知事が調査費を計上することを表明。実現へ向けた基礎調査を実施する方針を明らかにしました。
そして、各社報道によると、3012万円の調査費が、6月議会に提案されるとのことです。2016年の飯塚での促進協議会発足から、わずか5年で、延伸に向けた調査が動き出すことになります。
実現性は?
調査内容は、ルート、技術的課題、費用対効果、採算性などです。
駅位置などは未定ですが、福岡空港駅~長者原駅は、直線距離なら約3.3km。途中駅を設けるとすれば1駅で、志免付近でしょうか。
相互乗り入れも期待したくなりますが、地下鉄は直流電化、福北ゆたか線は交流電化なので、両線の直通運転は困難です。となると、たんに長者原駅で乗り換えができるという意味での「接続」になるとみられます。
実現性については、現状では何ともいえませんが、2020年12月議会で、小川洋知事は「接続のためには多額の事業費を要することが見込まれ、接続後の路線を継続的に運営していくための採算性の確保というものも重要になる」と答弁しており、慎重な言い回しにとどめています。
長者原接続が実現すれば、飯塚方面から福岡空港への利便性は向上しますが、天神など福岡市中心部へ行く場合には、これまで通り博多駅乗り換えのほうが早そうです。となると、JRから地下鉄へ移る旅客は限られるため、需要予測は厳しい結果が予想され、そう簡単に実現する話ではない気がします。
仮に実現に向けて動くにしても、福岡市の地下鉄が採算性の低い市域外を走ることになるので、費用負担などの調整で難航しそうです。(鎌倉淳)