飛行機にペットと乗る方法と注意点【2024年版】JAL、ANA、スターフライヤーのサービスを比較

LCCは預からない

飛行機にペットと一緒に乗りたい、という人は少なくありません。飛行機でペットとともに旅をすることは可能ですが、細かいルールもあります。ここでは主に国内線について、2024年の最新情報に基づいて、わかりやすく解説しましょう。

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フルサービスキャリアのみのサービス

JAL、ANA、スカイマーク(SKY)、エアドゥ(ADO)、ソラシドエア(SNJ)、スターフライヤー(SFJ)といった、国内の主要航空会社(フルサービスキャリア)では、ペットを飛行機に乗せることができます。

一方、ピーチ、ジェットスターといった格安航空会社(LCC)では、ペットを飛行機に乗せることはできません。したがって、飛行機をペットに乗せるつもりなら、LCCは対象外になります。ペット同行は、フルサービスキャリアのみのサービスです。

ペットを持ち込める場合でも、一部の航空会社を除き、ペットを客室に同伴することはできません。ペットは「受託手荷物」の扱いとして、貨物室に「預ける」ことになります。小鳥などの小動物も同様です。

いずれの航空会社も、金魚、昆虫などは条件を満たせば機内持ち込みができる場合があります。盲導犬や介助犬といった身体障がい者補助犬も客室に同行することができます。

なお、国内線では、スターフライヤーが、「FLY WITH PET!」という名称で、小型のペットを機内に持ち込めるサービスを実施しています。この場合は、ケージ(カゴ)の中にペットを入れて客室に持ち込めます。スターフライヤーのサービスについては、記事の後のほうで紹介します。

柴犬

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飛行機に乗れるペットは?

まず、飛行機にペットとして預けることができる動物は、小犬、ネコ、小鳥、うさぎ、ハムスターなどです。

また、金魚やカメ、昆虫類は、条件を満たせば機内に持ち込めます。小型の容器に入れて、逃げ出したりせず、匂いがしないなど、他の旅客の迷惑とならないような形ならば、預けずに、機内持込手荷物にできます。

一方ペットとして預けることができない動物もいます。代表例は、ブルドッグなどの、短頭種犬(短吻種犬)です。

【預けられない動物】
JAL…フレンチ・ブルドッグ、ブルドッグ。
ANA…ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、ボクサー、シーズー、ボストン・テリア、ブル・テリア、キングチャールズ・スパニエル、チベタン・スパニエル、ブリュッセル・グリフォン、チャウチャウ、パグ、チン、ペキニーズの預かりを5~10月のみ中止。
SKY…パグ、シーズ-、ボストン・テリア、ペキニーズ、チン、ボクサー、ブルドッグ、チベタン・スパニエルなどの短吻種犬。

短頭犬種が預けられない理由は、暑さに非常に弱いためです。実際に、短頭犬種が熱中症で死亡した事故もあります。

スカイマークは、「鼻腔が短いとされる短吻種犬につきましては、航空輸送時の環境の変化を受けやすく、体調に変調をきたすおそれがある」とし、短吻種犬を通年にわたり預かりません。

ANAやエアドゥ、ソラシドエア、スターフライヤー(貨物室預け)では、5~10月のみ、短頭犬種の預かりを中止しています。

JALは、夏季の短頭犬種の輸送について明記がなく、応じているようです。ただし、JALも「暑さに弱い子犬、高齢犬、短頭犬種については、輸送の時期・時間を十分にご留意ください」として、日中の時間帯を避けるよう推奨しています。

短頭犬種に限った話ではありませんが、夏場の貨物室や空港施設は暑く、ペットが熱中症になるリスクがあります。そのため、ペットと旅行する際は、なるべく日没後に離着陸する夜間便を利用した方がいいでしょう。

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ペットはどうやって運ぶの?

前述したように、ペットは基本的に貨物室に入れられます。「バルクカーゴルーム」という、空調の効いた貨物スペースが機体後方にあり、そこがペットのスペースに充てられています。

飛行機にペットを預ける場合、プラスチックか金属のクレート(ケージ、キャリー、ハウスなど)に入れる必要があります。クレートは航空会社に用意があります。ソフトキャリーなどの柔らかいバッグに入れた状態では預けられません。

ペットクレート
画像:JAL

 
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搭乗当日の流れ

搭乗日当日の流れとしては、出発空港のカウンターで同意書や確認書を提出し、ペットを預けます。

同意書は「ペットに何かあっても、航空会社の責任を問いません」といった内容です。当日空港で書けますが、ホームページで事前にダウンロードして記入しておくこともできます。事前記入のほうが、当日はスムーズです。

ペットを連れている場合は、搭乗手続きに時間がかかる場合がありますので、通常よりも余裕をもって手続きを済ませるようにしましょう。手続き締切は、JALが出発時刻の40分前、それ以外の各社は出発時刻の30分前です。

ただ、30~40分前では、ぎりぎりで乗り遅れることがあるので、1時間前には手続きをしておきたいところです。

到着空港では、手荷物受け取りエリアで、係員から直接手渡しでペットを返却されます。ペットの返却場所を示す看板を設置している空港もあります。

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運賃と予約

ペット運搬料金は航空会社や路線によって異なります。JAL国内線の場合、ペットクレート1個1区間あたり6,600円が標準で、一部区間は4,400円です。事前料金は5,500円が標準で、一部区間が3,500円です。

ANAとソラシドエアは6,500円が標準で、一部区間が4,500円です。エアドゥは一律6,000円です。スカイマークは一律5,000円です。スターフライヤーは貨物室預けで6,500円です。

クレートレンタルは、各社とも無料です。

【ペット運搬の標準料金】
JAL…6,600円(事前料金5,500円)
ANA、SNJ、SFJ…6,500円
ADO…6,000円
SKY…5,000円
※航空会社により短距離区間は割引あり。スターフライヤーは貨物室預けの場合。

乗り継ぎ便の場合はその都度ペット料金がかかります。

飛行機でペットを運ぶ場合の予約は、基本的には不要です。利用当日、搭乗手続き時に申し込めばOKです。

ただし、レンタルクレートの数が足りなくなることがありますし、事前に予約をしておいたほうがスムーズでしょう。JALやANAは、インターネットで事前予約、事前支払が可能です。スカイマークは事前予約などはできず、当日カウンターで料金を支払います。

大きい動物は「貨物」扱い

ペットを預けることのできるペットの大きさは、航空各社によって基準が定められています。

JALの場合はクレート重量を含めて32kgまでが「手荷物」として預けられます。「手荷物」の範囲に収まらないような大型ペットは、「貨物」になります。

ANAの場合は、重量制限はなく、LLサイズのクレート(幅65×奥行95×高さ70cm)が上限です。ただし、小型機(Q84、Q82、CR7)で運航する便は、LLサイズのペットゲージは預けられません。これに入らないペットは「貨物」扱いとなります。

JAL、ANAとも、ペットが貨物の扱いになった場合は、旅客ターミナルのカウンターで手続きすることができず、貨物の受付カウンターで手続きします。

スカイマークは51×69×48cmのクレートでの32kgが上限で、これに入らないペットは「貨物」としても預けることができません。

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スターフライヤー「FLY WITH PET!」

国内の航空会社で、唯一、ペットを客室内に同伴できるサービスをおこなっているのがスターフライヤーです。

「FLY WITH PET!」というサービス名で、羽田~北九州線で実施しています。2024年1月15日からは、同社の国内全路線に拡大されます。羽田~関西、山口、北九州、福岡と、中部~福岡に路線を有しています。

同伴できるペットは、40×40×50cmのケージに、余裕を以て収まる程度の犬または猫です。クレートSサイズ相当で、貨物室預けに比べると大きさの制約は厳しいです。チワワ、マルチーズなどの小型犬や猫に限られるでしょう。

飼い慣らされていて、鳴き声などで他の利用者の迷惑にならないよう、充分にトレーニングされていることなどが条件とされています。

ペットにはおむつを着けさせ、機内最後方の座席上に、ケージのまま、シートベルトで固定する形で運びます。搭乗は優先搭乗、降機は一番最後です。

FLY WITH PET!
画像:スターフライヤー

緊急時の酸素サービスを、ペットは利用できません。また、緊急脱出の際は、ペットは機内に置いていかなくてはなりません。

予約期限は搭乗4日前まで、搭乗手続締切は40分前ですが、出発時刻の1時間30分前までの手続きを推奨しています。価格は一律50,000円です。

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リスクはある

ペット輸送については、「クレートを貸し出し、貨物室で運ぶ」のが原則です。JALでは、輸送環境について、ウェブサイトで以下のように記しています。

・出発間際までは空調の効いた場所や日陰にて預かるが、航空機への移動、乗り降りは屋外となるため、季節によっては温度・湿度に大きな変化が生じる場合がある。
・飛行中は照明が消え、暗室となる。気圧は0.8気圧(2,000mの山頂と同程度)となるため、上昇中、下降中の気圧の変化で耳の機能などに悪影響を与える恐れがある。
・ペットを運ぶ貨物室内は客室内と同じ温度・湿度となるよう空調管理をしている。
・離発着時や飛行中は機械操作音や風切り音がする。
・航空機への搭載・取り卸し作業時には航空機や地上車両の音が聞こえる。

こうした環境にペットはストレスを感じますし、急激な環境変化についていけなくなる場合もあります。つまり、ペットを貨物室で運ぶ際に、ペットの健康を害する可能性があるわけで、最悪の事態として、死亡事故も起きています。

こうしたリスクは、各社とも当然認識しており、JALはウェブサイトで「日常生活とは大きく異なる輸送環境においては、ペットの健康状態にさまざまな影響を与える可能性がございます」と記しています。死亡事例も掲載していて、2019年から2023年の5年間で、11件の死亡事故が発生したことを伝えています。

ANAも「ペットが衰弱、もしくは死傷する場合があります」とはっきり書いています。そして、ペットが死傷した場合でも、航空会社は責を負いません。

ANAは、2016年頃まで、ペット輸送を「ペットらくのりサービス」と銘打っていました。しかし、現在、ANAはこのサービス名を用いていません。「ペットをお連れのお客様向けサポート」という堅い名称になっています。

「らくのり」というネーミングをやめた、と受け取られても仕方なく、そこに至った事情が察せられます。

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ペットの負担を減らす

利用者としては、不測の事態を避けるため、少しでもペットの負担を減らすための方法を施したほうがいいでしょう。

飛行機で運ぶ際には、クレートは航空会社が用意してくれますが、できれば自分で持っていきましょう。貨物室での輸送に耐えうる丈夫なものを選び、普段からクレートに入れることに慣れさせておき、当日のストレスを減らします。

クレートをレンタルする場合も、乗客自身が給水器を持参し、ペットクレートに設置します。給水は体温調節の一助となります。給水ボトルが初めてのペットはうまく使えない場合もありますので、事前に練習させておきましょう。

当日、搭乗前のペットの食事は避けたほうがいいでしょう。貨物室内で吐き戻したりする恐れがあるからです。

緊急時には置き去りに

2024年1月2日に発生したJALの羽田空港衝突事故では、乗員乗客が全員避難できた一方で、貨物室に預けられた2頭のペットが犠牲になりました。

上述したように、ペットは「受託手荷物」という扱いであり、緊急時には貨物室内に置き去りにして、人間だけが逃げる決まりになっています。

これは、スターフライヤーの「FLY WITH PET!」でも同じです。たとえ客室内にペットを同伴したとしても、緊急事態の際に機内に残さざるを得ない点では、貨物室預けと同じです。

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新幹線は?

ちなみに、新幹線のペット持ち込みは、タテ・ヨコ・高さの合計が120cm以内のケースに入れる必要があり、重量制限は10kgと定められています。新幹線でペットは「手回り品」の扱いとなり、価格は1個につき290円です。

ペットを客室内に持ち込めて、価格も安く、緊急時の制約もないので、新幹線を利用できるなら、そのほうがいいでしょう。

ただ、3辺120cmのケースに入るのは小型犬や猫くらいまでです。中型以上の犬を運ぶには、やはり飛行機に頼らざるをえません。

気をつけて使いこなす

ペットにとって、飛行機旅行は、狭いゲージに閉じ込められて、気圧や気温の変化に耐えなければならない苦行です。その点を意識して、飼い主としては、旅行前に、とくにペットの健康状態の維持に気をつけましょう。

緊急時のリスクを懸念する声も多いですが、それ以前に、環境面のリスクに備えることが重要です。

実際のところ、ほとんどのペットは、無事目的地に到着しています。利用者としては、気をつけてサービスを使いこなし、ペットと楽しい旅をしたいところです。(鎌倉淳)

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