神奈川県山北町の「山北鉄道公園」に静態保存されている蒸気機関車(SL)「D52」が動き出すことになりました。山北町議会で復活のための予算が可決され、2016年秋頃の運転開始を目指します。
全国に7両が現存
D52は日本最大の貨物用テンダー機関車で、「デゴニ」の愛称でも知られています。1943年に投入開始され、1946年までの約3年間に285両が製造されました。主に戦時中に製造されたため、粗悪な機関車も多かったようで、現存するのは全国で7両の静態保存だけです。
山北鉄道公園に保存されているのは、その貴重な1両で、「D5270」です。1944年に製造され、山陽本線や東海道本線などで活躍し、1951年に御殿場線に転用された後、1968年の電化にともない引退しました。1970年に国鉄から山北町に無償貸与され、山北駅南側の公園に展示されています。
写真:神奈川県
圧縮空気により運転
45年間にわたり眠り続けたD52を動かすわけですが、さすがにボイラーは使えないようで、車輪を動かすのにコンプレッサーを用います。連結されている石炭車に大型コンプレッサー2基を積み、そこから圧縮空気をシリンダーに送り込むという方法です。
運転は鉄道公園内だけで、12メートルの軌道を新たに敷設し、動輪2回転分の距離にするそうです。コンプレッサーで十数メートルだけ動くSLを「動態保存」と表現していいのかはわかりませんが、「動き出す」のは間違いありません。動き出せば、全国で唯一の「動くデゴニ」となります。
地方創生交付金を活用
この事業は、山北町が国の地方創生交付金を活用し、3700万円の補正予算を組んで実施します。地方創生交付金は、「ふるさと旅行券」などにも使われていますが、SL復活事業のほうが後に残るので、使い方としてはより適切だと思います。
復活のための工事は2016年3月までに行い、その後、軌道沿いにフェンスを設けるなど、安全対策を施したうえで、2016年秋にも運転開始を目指すとのこと。予定通り行けば、数ヶ月後には全国で唯一の「動くデゴニ」が山北町で見られそうです。楽しみですね。(鎌倉淳)