ウィラーグループが、2015年4月から参入する鉄道事業について概要を発表しました。鉄道事業を行う新会社として「WILLER TRAINS株式会社」(ウィラー・トレインズ)を設立し、現在の北近畿タンゴ鉄道を引き継いで、「京都丹後鉄道」として運営を開始します。路線名も一部変更し、「宮豊線」、「宮舞線」、「宮福線」とすることを決めました。
鉄道運行子会社が「ウィラー・トレインズ」
北近畿タンゴ鉄道は、京都府や福知山市、宮津市などが出資する第三セクター鉄道で、宮福線(宮津~福知山間)と宮津線(宮津~豊岡間)の2路線を運営しています。しかし、経営難が続き、自力での運営を断念。上下分離方式による運営委託を決め運行事業者を公募していました。
これに高速バス会社のWILLER ALLIANCE(ウィラー・アライアンス)が応じ、2014年5月に北近畿タンゴ鉄道の運行会社として選ばれました。ウィラーが鉄道運行を行う子会社として設立したのが、ウィラー・トレインズです。
「三丹」を路線名に入れる
ウィラー・トレインズは、会社名とは別に、鉄道路線を「京都丹後鉄道」と名付けました。略称は「丹鉄」(たんてつ)。路線のある丹波・丹後・但馬を指す「三丹」の「丹」を用いることで、地元に愛着を持たれる鉄道を目指すということです。
路線名も一部変更し、宮津~豊岡間を「宮豊線」、宮津~舞鶴間を「宮舞線」としました。宮津~福知山間の「宮福線」はこれまで通りです。拠点駅の宮津を中心として、どの方角に行く路線かわかりやすいように改称したということです。
第三セクターは「漢字かな混じり長文」が主流
最近の第三セクター鉄道は、漢字かな混じりが主流で、アルファベットを組み合わせた長文のものが増えています。北陸新幹線開業により生まれた第三セクターも「IRいしかわ鉄道」や「あいの風とやま鉄道」「えちごトキめき鉄道」と、一度で正確に覚えるのは難しいものばかり。
それに比べれば「京都丹後鉄道」は地域名ずばりで、とても覚えやすい名称です。路線名の「宮豊」「宮舞」「宮福」も覚えやすく言いやすく、「日本海ひすいライン」「妙高はねうまライン」などに比べればとてもシンプルです。
外国人集客も視野
ウィラーは、路線名変更について「地元の方に愛される」「観光客にわかりやすい」「インバウンドに視覚的にわかりやすい」の3つの理由をあげました。地元や日本人観光客だけでなく、外国人への集客を狙って「京都」というわかりやすい名称を入れたようです。
これまでの第三セクター鉄道の名称は、「地元に愛される」という視点はあったと思いますが、一見の観光客や外国人にわかりやすいとはいえないものが多く、ウィラーはそこに一石を投じたといえそうです。
ウィラートレインズは、駅名も一部変更しました。現在の野田川駅を「与謝野」、丹後大宮駅を「京丹後大宮」、木津温泉駅を「夕日ヶ浦木津温泉」、丹後神野駅を「小天橋」、甲山駅を「かぶと山」、厚中問屋駅を「福知山市民病院口」、但馬三江駅を「コウノトリの郷」としています。これも、地元住民や観光客へのわかりやすさを狙ったものだそうです。
覚えやすく言いやすいのが一番
固有名詞には好き嫌いがありますので、筆者の好みだけで断じるつもりはありませんが、やっぱり覚えやすく言いやすいのが一番ではないでしょうか。案内をする立場でも、「えちごトキめき鉄道の日本海ひすいラインをご利用下さい」よりも「京都丹後鉄道宮豊線をご利用ください」のほうがわかりやすいでしょう。
これを機会に、そろそろ第三セクターの「漢字かな交じり長文名称」のブームが終わることを祈りたいところです。
他路線参入を見据えた会社名
上述したように、運営会社はWILLER TRAINS株式会社という名称です。「京都丹後鉄道株式会社」にしなかったのは、今後、他路線への参入を見据えてのことでしょう。
経営難に陥っている第三セクター鉄道は他にもあります。「京都丹後鉄道」が成功すれば、ウィラーが他路線にも手を広げる可能性は高いといえます。ウィラーの鉄道運営の手法はまだ未知数ですが、今回の発表では、多彩な企画きっぷを設定するなど意欲的な面が多くみられました。期待したいところです。