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美祢線、鉄道廃止が事実上決定。沿線自治体がBRT化受け入れ、鉄路復旧は断念

実態は「ほぼ路線バス」に

被災による運休中の美祢線が、鉄道を復旧せずにBRTに転換する方針となりました。沿線自治体が、JRの提案を受け入れます。鉄道復旧は断念し、事実上の廃線が決まったことになります。

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利用促進協議会で方向性

JR美祢線は山口県の厚狭~長門市間46.0kmを結ぶローカル線です。2023年6月の豪雨被害で約80箇所が被災し、現在も復旧していません。

その復旧について議論する美祢線利用促進協議会の臨時総会が、2025年7月16日に同県小野田市で開催されました。沿線3市の市長が参加し、バス高速輸送システム(BRT)を基軸に検討する方向性が決まりました。

鉄道の廃止が、事実上決定した形です。今後、山口県と沿線3市の協議を経て、法定協議会の場で、今後の具体的な議論に入ります。

美祢線

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約4.2kmを専用道化

利用促進協議会では、前回5月の会合で、復旧検討部会が「とりまとめ」を示し、鉄道、BRT、路線バスについて、費用や利便性などの検討結果を報告していました。

それによりますと、鉄道での復旧費は58億円以上、年間運営費は5.5億円以上、復旧まで最低10年を要します。

一方、BRTに転換する場合、湯ノ峠~厚保間の約4.2kmを専用道化する案では、復旧費が約55億円、年間運営費は約2.5億円で、復旧まで3~4年とされました。専用道以外は2年以内に運行を開始できます。

美祢線BRT専用道
画像:JR美祢線利用促進協議会資料

 
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苦渋の決断

とりまとめを受けて、JR西日本は「BRTでの復旧が望ましい」と、公式に表明していました。今回、協議会がJRの提案を受け入れた形です。

総会後、協議会会長の篠田洋司美祢市長は、「JR単独での鉄道での復旧を求め続けても、平行線をたどって何も進まない」と明かし、「JRの提案にあったBRTでの復旧を基軸に考えざるを得ない」と、苦渋の決断であることを強調しました。

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実態は「ほぼ路線バス」

被災したローカル線をBRTで復旧させる例は、JR東日本の気仙沼線と大船渡線、JR九州の日田彦山線に続き、3例目です。JR西日本としては初めてです。

美祢線の場合、JR西日本が示した基本案では、46kmの路線のうち専用道は4km程度で、残る区間は一般道を走る形になります。そのため、「BRT」といっても実態は路線バスに近いといえます。

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やむを得ない結論

ただ、JRのネットワークに組み込まれ、時刻表上や運賃計算上、鉄道と同等の扱いを受ける点が、ローカル路線バスとは異なります。

何よりも、JRが責任をもって維持してくれることが、自治体にとっては大きなメリットでしょう。

被災による鉄道廃止は残念ですが、地域公共交通を維持するという観点からみれば、やむを得ない結論というほかありません。(鎌倉淳)

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