長良川鉄道について、沿線の岐阜県関市長が将来的な「一部区間廃止」の可能性に言及しました。利用者の少ない末端区間について、いずれ存廃が議論されることになりそうです。
沿線自治体が経営を支援
長良川鉄道は、岐阜県の美濃太田~北濃間72.1kmを結ぶ第三セクター鉄道です。
2022年度の輸送密度は341と低く、2023年度には3億6615万円の経常赤字を出しています。沿線の5市町(美濃加茂市・富加町・関市・美濃市・郡上市)が中心となって、設備の修繕費や経営を支援するための費用を負担しています。
補助金の金額がまとまった資料は見当たりませんが、確認できた資料では、郡上市が約1億9000万円(2022年度)で、関市が約1億円(2023年度)となっています。基礎自治体としては大きな負担です。
当面は存続するが
長良川鉄道の社長を務めるのは、関市の山下清司市長です。
山下市長は、2025年3月3日の関市議会で、長良川鉄道の今後について問われ「全線72.1kmで、全線開通から90年を経過するということで大変老朽化しているので、今後、維持のためにはさらに経費がかかることを考えると、補助金が減っていくという状況にならないのではないか」としたうえで、「今後のあり方については、沿線市町の担当あるいは首長も含めて検討しているところ。いますぐただちに廃線という状況にはない」と述べ、当面の存続を明言しました。
しかし、その後「いまのままでは存続が危うい。私としては、通学の生徒たちが困らないように、必要な部分を残すために、一部の地域の廃線も視野に入れながら構築をしていくことが当面必要と考えている」と述べ、部分廃止も視野に入れていることを明らかにしました。
ただし、部分廃止については「私の思いだけで、市町の長がすべてこれで同意ということではない」とも述べ、個人的な見解であることを付け加えています。
将来的な維持は困難
つまり、簡単に言えば、長良川鉄道について当面廃止の予定はないが、72kmの長大路線で老朽化も進んでいることから、更新費用を考えると、将来的に全線の維持は難しいという見通しを、沿線自治体の市長でもある会社の社長が公式に示したことになります。
長良川鉄道の利用者数は、長期的に低減傾向にありましたが、2013年度の約72万人を底に下げ止まり、近年は70万人台で安定しています。コロナ禍で2020年度は約54万人にまで落ち込みましたが、2023年度は約75万人にまで回復しています。
ただ、そのうちの約48万人が定期利用者で、そのほとんどが沿線の高校生とみられます。今後の少子化を見据えると、利用者の減少は避けられません。
こうした利用状況も踏まえたうえで、関市長兼社長が部分廃止の可能性に触れたのでしょう。

廃止が検討されるのは?
では、廃止が検討されるとすれば、どの区間でしょうか。真っ先に俎上にのりそうなのは、最末端部の美濃白鳥~北濃間の6kmでしょう。ただ、それだけでは経営改善効果が小さいので、郡上八幡~美濃白鳥間19.2kmも議論の対象になるかもしれません。
郡上八幡~北濃間は、すべて郡上市の市域です。前述の通り、郡上市は2億円近い補助金を長良川鉄道に支払っています。郡上市の2024年度の予算規模は総額で約498億円、自主財源79億円なので、2億円なら許容範囲ともいえますが、今後、鉄道施設の更新費用の負担が年数億円単位で生じると、厳しくなっていくでしょう。
一方で、美濃白鳥は旧白鳥町の中心地で、長良川鉄道の郡上八幡~美濃白鳥間は郡上市内の基幹的な交通機関です。バスの運転手不足が深刻化するなか、鉄道を廃止した場合の代替交通の確保は大きな課題となり、難しい議論となりそうです。(鎌倉淳)