本州と四国の間にはさまざまな会社のフェリーが就航しています。全てのフェリー航路と所要時間、格安利用術などを比較しながらまとめてみましょう。
8社8航路
まずは、本州~四国間のフェリー航路を一覧表にしてみました。8社8航路があります。
旅客運賃はオフシーズンの最低運賃、車両運賃は4m~5mの乗用車の最低運賃を示しています。いずれも時期により価格は変わります。
運航本数は1日あたりの標準的なスケジュールを示していて、路線により運休日があったり、時期や曜日により減便や増便がおこなわれることもあります。
航路 | 運航会社 | 所要時間 | 運航本数 | 旅客運賃 | 車両運賃 |
---|---|---|---|---|---|
東京 徳島 |
オーシャン 東九フェリー |
18時間 | 1往復 | 14,080円 | 37,950円 |
大阪 東予 |
オレンジ フェリー |
8時間 | 1往復 | 8,200円 | 21,700円 |
神戸 新居浜 |
オレンジ フェリー |
7時間 | 1往復 | 8,200円 | 20,300円 |
神戸 高松 |
ジャンボ フェリー |
4時間45分 | 4往復 | 1,990円 | 6,230円 |
和歌山 徳島 |
南海フェリー | 2時間15分 | 8往復 | 2,500円 | 13,000円 |
広島 松山 |
瀬戸内海汽船 石崎汽船 |
2時間40分 | 10往復 | 5,000円 | 11,000円 |
呉 松山 |
瀬戸内海汽船 石崎汽船 |
1時間55分 | 10往復 | 4,000円 | 9,300円 |
柳井 松山 |
防予フェリー 周防大島 松山フェリー |
2時間30分 | 13往復 | 3,900円 | 13,000円 |
※旅客運賃は大人1人の最安クラスの最低価格を表示。クラスや季節により変動する。車両運賃は4m~5mの乗用車。
※運航本数は1日あたりの標準的な数字。路線により欠航日あり。
多彩な航路
本州側の発着地は東京、大阪、神戸、和歌山、広島、呉、柳井の7港。四国側の発着地は徳島、高松、東予、新居浜、松山(観光・三津浜)の5都市6港です。
2019年に宇野~高松航路が廃止され、岡山県と四国を結ぶフェリーはなくなりました。
フェリーの往来が活発なのは広島~松山航路と柳井~松山航路です。柳井~松山間は1日最大13往復が運航しています。
順にご紹介していきましょう。なお、運航本数は時期や曜日により異なります。車両運賃は4m~5mの金額を表示していて、旅客1名を含みます。
東京~徳島
東京と四国を結ぶ唯一のフェリー航路が、オーシャン東九フェリーです。東京~新門司港を結ぶ航路が、途中で徳島に立ち寄る形です。所要時間は18時間です。
使用船舶は12,000トン級の大型フェリーです。2等洋室の相部屋と、2人用・4人用個室があります。船内設備として大浴場などがあります。レストランはありませんが、自由に使える「オーシャンプラザ」というスペースがあり、メニュー豊富な自動販売機が並んでいます。
運賃は2等洋室で14,080円。乗用車運賃(5m未満)は37,950円。安く乗るには、WEB事前決済割引で乗用車2,090円引き、旅客990円引きになります。学割は約20%割引(11,880円)で、学生証の提示で適用されます。
北海道や九州方面への豪華フェリーに比べると、シンプルな車内設備です。東京を夜19時30分(日祝は18時)に出て、翌日の午後に着きますので、深夜に東名や名神の運転をせずに、車両ごと移動できるのが魅力です。
大阪~東予
大阪南港と愛媛県西条市の東予港を結ぶ航路で、四国開発フェリー(オレンジフェリー)が毎日1往復を運航しています。
使用船舶は14,000トン級の大型フェリーです。2018年に登場した「おれんじえひめ」「おれんじおおさか」の2隻が就航しています。「動くホテル」がコンセプトの豪華フェリーです。
大部屋はなく、全個室が特徴。シングルからロイヤルの4種類の客室があり、船内設備としては大浴場、レストランなどを備えます。
運賃は時期により異なり、シングルが8,200円~9,700円。乗用車料金は21,700円です。
WEB割引5%、往復割引10%、学生割引20%などの割引があります。学割は学生証の提示で適用されます。
往復とも22時出発、6時到着で、到着後、1~2時間の船内休息が可能です。関西と四国で夜行便で移動するのにちょうどいい運航時刻です。
神戸~新居浜
神戸六甲港と愛媛県新居浜東港を結びます。こちらも、オレンジフェリーが毎日1往復を運航しています。
ただし、新居浜発は金土日が欠航、神戸発は土日月が欠航です。祝日がらみも欠航します。ということで、実質的には週4往復程度です。
使用船舶は15,000トン級の大型フェリーです。貨物主体で、客室はシングルとロイヤルの2種類のみ。船内設備としてバスルーム、レストランを備えます。
運賃は時期により異なり、シングルが8,200円~9,700円。乗用車料金は20,300円です。
往復割引10%、学生割引20%などの割引があります。
神戸発が深夜1時20分、新居浜着08時20分。新居浜発が16時20分、神戸着が23時40分。この時刻からみてもトラック向けで、一般旅客にはやや使いにくい時間です。神戸六甲港から最寄駅への連絡バスもありません。
ということで、一般の旅行者の場合、関西~愛媛間のフェリーは大阪南港~東予航路のほうが使いやすいでしょう。
神戸~高松
神戸三宮フェリーターミナルと、高松東港を結びます。ジャンボフェリーが1日4往復を運航しています。
使用船舶は2000年建造の「りつりん2」と、2022年建造の「あおい」。「りつりん2」が3,000トン級で、「あおい」が5,000トン級です。新造船の「あおい」は、自由席、プレミア席、コンパートメント、ボックス席、ファミリー席といった多彩な客室バリエーションが特徴です。船内設備として、カフェやキッズスペースなどを備えます。
旅客運賃は1,990円で、ネット割、U25割は1,890円。土日・深夜は500円増し。プレミア席や個室料金は別途かかります。車両運賃は4,990円で、ネット割は4,740円です。別途燃油サーチャージがかかり、2023年5月現在で1,240円です。
5時間弱、約2,000円という手頃で乗りやすい航路です。三宮駅、高松駅からの連絡バスもあるので、車なしの利用者も使えます。車両運賃も燃油サーチャージを入れて6,000円程度で、高速代を考えれば陸路よりもおトクでしょう。
和歌山~徳島
南海フェリーが、和歌山港~徳島港を毎日8往復しています。所要時間は2時間15分です。
和歌山港は南海電車の和歌山港駅と接していて、特急「サザン」が連絡しています。接続時間は10分あまりと効率のいいダイヤになっていて、大阪のなんば駅から徳島港まで、約3時間半で旅行できます。徳島港とJR徳島駅の間にも連絡バスがあります。
使用船舶は2,600~2,800トンの中型フェリー2隻です。じゅうたん席、椅子席、テーブル席などの一般席と、グリーン席があります。船内設備はシャワー室や売店、自販機コーナーがあります。2隻のうち「フェリーあい」が2019年に登場した新造船です。
旅客運賃は2,500円。南海なんば~徳島港までの鉄道・フェリーがセットになった「好きっぷ」なら、なんば~徳島間が2,500円となります。
車両運賃は時期により異なり、13,000円~14,000円です。乗用車にはWEB割(乗用車500円割引、同乗者100円割引)とWEB早割14(乗用車500~4,000円割引、同乗者100~2,000円割引)があります。JAF割引、復路割引でも5%引となります。
学割は20%引ですが学割証が必要で、南海電車とフェリーとあわせて100km以上の乗車に適用されるため、あまり実用的ではありません。
和歌山側は阪和道と京奈和道が和歌山ICまで来ているので、大阪南部や奈良方面からクルマで四国に向かう際は、利用しやすいフェリーです。
広島・呉~松山
広島宇治港から呉港を経て松山観光港までを結ぶフェリーです。「クルーズフェリー」の愛称で、瀬戸内海汽船と石崎汽船が共同で毎日10往復運航しています。広島~松山間の所要時間は2時間40分、呉~松山間が1時間55分です。
使用船舶は900トン級の中型フェリーです。瀬戸内海汽船は「シーパセオ」という2019~2020年に建造された新造船で、ソファ席やラウンジ席など多彩なシートで人気を博しています。
石崎汽船の旭洋丸、翔洋丸も2019~2020年に建造された新造船で、シートとカーペット席を備えます。いずれも船内には売店がありますが、レストランはありません。
広島~松山間の旅客運賃は5,000円で、車両運賃は11,000円です。呉~松山間の旅客運賃は4,000円、車両運賃は9,300円です。往復割引や学生割引はありません。なお、車両運賃は「フェリーマイカー割引」 (6m未満の車輌が対象の片道割引)の適用価格です。
広島港は路面電車の電停に近く、市内アクセスは良好です。松山観光港は伊予鉄道高浜駅から徒歩10分(800m)ほどで、JR松山駅までの連絡バスもあります。徒歩旅行者にも自動車旅行者にも便利なフェリーです。
柳井~松山
防予フェリー「オレンジライン」が山口県柳井港と松山市三津浜港を1日最大13往復しています。土休日は深夜便が運航せず、10往復程度になります。所要時間は2時間30分です。
一部便は途中、周防大島の伊保田港に立ち寄ります。立ち寄り便は周防大島松山フェリーの運航です。
使用船舶は700トン級の中型フェリーです。船室には椅子席やソファー席があります。レストランやカフェはなく、自販機コーナーが設けられています。伊保田立ち寄り便は400トンクラスの小さなフェリーです。
旅客運賃は4,200円、車両運賃は13,000円です。深夜早朝割引が20%、学生割引が20%、10枚回数券が10%割引です。
山口県と愛媛県をショートカットで結ぶ航路で、日中時間帯に約2時間間隔で運航しています。価格も手ごろで、利便性が高いです。
本州・四国のフェリー利用術
本州・四国間では架橋が進み、フェリー航路は少なくなりました。それでも、道路に比べて距離が短い神戸~高松間、広島~松山間、柳井~松山間や、橋のない紀淡海峡にはフェリーが健在です。
遠距離としては東京発着のオーシャン東九フェリーが残っています。モノクラスに近いシンプルなサービスで、北海道航路のようなエンタメ感はありませんが、東京から徳島まで運転しなくていいのはラクでしょう。
旅客向けの夜行フェリーとしては、大阪~東予航路がおすすめです。所要8時間で、新鋭船の客室でゆっくり休むことができ快適。翌朝からのドライブがはかどりそうです。(鎌倉淳)