青春18きっぷのシーズンが3月1日から始まります。JR全線乗り放題のお得なきっぷとして知られていますが、「割引率」という視点で見た場合、どのくらいお得なのでしょうか。調べてみました。
1日2,410円
いまさら説明するまでもありませんが、青春18きっぷはJR全線の普通・快速列車が乗り放題になるフリーきっぷです。5日間セットで12,050円。1日あたりなら2,410円という破格値です。
2,410円で、JR線の在来線ならば、1日どこまででも行けるわけです。そう聞いただけでお得ですが、どれだけ乗れば、どれくらいの「割引率」になるのかは意外と知られていません。ということで、JR線の運賃表と比べて計算してみました。
「割引率」を計算してみる
JR本州3社の幹線の普通運賃表を用いて、2,410円を超える区間(141km以上)の割引率と、東京起点で該当する東海道・山陽線方面の主要駅を一覧表にしてみました。
営業キロ (km) |
片道運賃 (円) |
割引率 | 東京起点 の主要駅 |
---|---|---|---|
141~160 | 2,640 | 9% | 富士 |
161~180 | 3,080 | 22% | 清水 |
181~200 | 3,410 | 29% | 静岡 |
201~220 | 3,740 | 36% | 島田 |
221~240 | 4,070 | 41% | 掛川 |
241~260 | 4,510 | 47% | 浜松 |
261~280 | 4,840 | 50% | 鷲津 |
281~300 | 5,170 | 53% | 豊橋 |
301~320 | 5,500 | 56% | 蒲郡 |
321~340 | 5,720 | 58% | 岡崎 |
341~360 | 6,050 | 60% | 大府 |
361~380 | 6,380 | 62% | 名古屋 |
381~400 | 6,600 | 63% | 岐阜 |
401~420 | 6,930 | 65% | 大垣 |
421~440 | 7,150 | 66% | 近江長岡 |
441~460 | 7,480 | 68% | 米原 |
461~480 | 7,700 | 69% | 近江八幡 |
481~500 | 8,030 | 70% | 草津 |
501~520 | 8,360 | 71% | 京都 |
521~540 | 8,580 | 72% | 高槻 |
541~560 | 8,910 | 73% | 大阪 |
561~580 | 9,130 | 74% | 芦屋 |
581~600 | 9,460 | 75% | 神戸 |
601~640 | 9,790 | 75% | 明石 |
641~680 | 10,010 | 76% | 姫路 |
681~720 | 10,340 | 77% | 和気 |
721~760 | 10,670 | 77% | 岡山 |
761~800 | 11,000 | 78% | 福山 |
801~840 | 11,330 | 79% | 三原 |
841~880 | 11,550 | 79% | 西条 |
881~920 | 11,880 | 80% | 広島 |
921~960 | 12,210 | 80% | 岩国 |
961~1,000 | 12,540 | 81% | 徳山 |
1,001~1,040 | 12,870 | 81% | 新山口 |
1,041~1,080 | 13,200 | 82% | 宇部 |
1,081~1,120 | 13,420 | 82% | 小倉 |
東京~小倉で82%OFF
ご覧のように、おおむね静岡で3割引、浜松で5割引、名古屋で6割引、京都・大阪で7割引、広島で8割引となります。青春18きっぷで東名阪間を乗車する人は多いですが、東京~名古屋なら6割引、東京~大阪なら7割引という計算です。
東京から青春18きっぷで1日で到着できる限界は小倉ですが、東京~小倉の普通運賃は13,420円。青春18きっぷ1日分2,410円で乗れば82%の大幅割引となります。
百分率の計算であるため、遠距離になるほど、距離に対する割引率の差が小さくなります。JR運賃が遠距離逓減制を採用していることもあり、広島も小倉も割引率ではあまり変わりません。
3割引を基準にすれば
JRの割引きっぷの多くは2割以下の割引率です。学割も運賃が2割引です。つまり、鉄道運賃において2割を超える割引率は、お得度が高いといえます。
そういう視点で、おおむね3割引以上を「お得度が高い」と考えると、本州幹線運賃で200km程度を乗車すれば、その水準に達します。
東京・大阪を起点に、200km前後の主要駅を紹介すると、以下のようになります。
路線名 | 駅名 | 距離 |
---|---|---|
東海道線 | 静岡 | 180.2km |
中央線 | 上諏訪 | 201.9km |
上越線 | 越後湯沢 | 199.2km |
東北線 | 新白河 | 185.4km |
常磐線 | いわき | 215.2km |
路線名 | 駅名 | 距離 |
---|---|---|
東海道線 | 名古屋 | 190.4km |
北陸線 | 福井 | 190.9km |
山陽線 | 倉敷 | 192.4km |
山陰線 | 城崎温泉 | 183.7km |
紀勢線 | 白浜 | 166.8km |
東京起点の場合は、静岡、上諏訪、越後湯沢、新白河、いわき。大阪起点の場合は、名古屋、福井、城崎温泉、倉敷、白浜あたりです。都道府県でいうと、東京から静岡県、長野県、新潟県、福島県あたり。大阪から岡山県、福井県、愛知県、和歌山県あたりまでになります。
東京・大阪からこれらのエリアまで青春18きっぷで旅をすれば、おおむね3割程度の割引を受けられるという計算です。普通・快速列車で3~4時間の距離なので、疲れない範囲の適度な旅行ができるでしょう。
言葉をかえれば、青春18きっぷを使う場合、1日200km程度の乗車にとどめるのが、お得感と疲労度で「バランスの取れた旅」になるのかもしれません。
実際には?
ここまで1日あたり2,410円で見てきましたが、青春18きっぷの定価は5日間12,050円です。割引率を考えるなら、5日間トータルで検討すべしという意見もあるでしょう。
また、実際の青春18きっぷの使い方としては、単純な2点間移動だけでなく、往復したり周遊したりも多いでしょう。そうした場合に割引率を求めるなら、もう少し手間がかかります。
ということで、言うまでもありませんが、上記の運賃表に基づく1日あたりの割引率は、あくまでも一つの目安にすぎません。
さらにいえば、青春18きっぷの特徴は、区間の決められたきっぷを買わずに、自由気ままに行き先を変えられる点にあります。この自由こそが青春18きっぷの魅力の本質で、「割引率」で計算できません。(鎌倉淳)