JR北海道の平均輸送密度が第1次特定地方交通線並みに。新型コロナの影響で

幹線の減少大きく

JR北海道が、2020年4~6月期の輸送密度や区間別収支を発表しました。新型コロナウイルス感染症の影響で利用者が激減し、全区間平均の輸送密度は2,103と、国鉄時代の「第1次特定地方交通線」並みに落ち込みました。

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利用者6割減

JR北海道が発表した2020年4~6月期の輸送密度は、全区間平均で2,103で、前年度の5,163に比べ約60%減となりました。国鉄時代に廃止対象となった「第一次特定地方交通線」の輸送密度の基準が2,000でしたので、それに近い水準です。

全23区間の営業損益は219億1900万円の赤字で、前年同期の116億800万円の赤字に比べ、約1.9倍に増えています。売上高に当たる営業収益は70億6000万円で、前年同期比63%減と落ち込みました。

おおざっぱにいうと、利用者も売り上げも6割減ってしまい、赤字が2倍に膨らみました。

路線別の営業収益と輸送密度は以下の通りです。

JR北海道2020年第1四半期収益と輸送密度
路線名 区間 営業収益 前年度比 輸送密度 前年度比
函館線 函館~長万部 3億1500万円 29% 761 21%
長万部~小樽 3900万円 42% 309 52%
室蘭線 長万部~東室蘭 1億9200万円 27% 1,103 23%
室蘭~苫小牧 2億6500万円 33% 2,220 33%
沼ノ端~岩見沢 1,900万円 68% 310 72%
日高線 苫小牧~鵡川 900万円 82% 521 90%
鵡川~様似 700万円 78% 96 83%
函館線 小樽~札幌 45億1100万円 44% 25,154 54%
札幌~岩見沢 23,104 53%
千歳線 白石~苫小牧 19,008 40%
札沼線 桑園~医療大学 10,617 56%
函館線 岩見沢~旭川 3億5300万円 29% 2,563 33%
石勝・根室線 南千歳~帯広 3億1500万円 35% 769 24%
根室線 帯広~釧路 1億1900万円 33% 443 31%
釧路~根室 1,400万円 35% 126 48%
滝川~富良野 800万円 30% 171 45%
富良野~新得 400万円 57% 64 76%
石北線 新旭川~上川 2200万円 37% 505 50%
上川~網走 6800万円 37% 321 48%
釧網線 東釧路~網走 1800万円 26% 176 51%
留萌線 深川~留萌 500万円 56% 78 53%
富良野線 富良野~旭川 4600万円 57% 1,044 74%
宗谷線 旭川~名寄 6,400万円 44% 686 51%
名寄~稚内 2,800万円 30% 92 29%
北海道新幹線 新青森~新函館北斗 6億3500万円 25% 524 9%
合計 全区間 70億6000万円 37% 2,103 41%
札沼線 医療大学~新十津川 500万円 125% 112 175%
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札幌圏は踏ん張ったが

路線別にみると、輸送密度の落ち込みが大きかったのは北海道新幹線で、前年度5,725が524と91%も減少しました。

つづいて函館線・函館~長万部間で、前年度3,641が761となり、前年度比79%の大幅減となっています。室蘭線・長万部~東室蘭間が77%減、石勝線・南千歳~帯広間が76%減で続き、長距離特急が走る幹線の利用者減少が激しかったことがわかります。

JR北海道の屋台骨である札幌圏は、千歳線が前年度比60%減と落ち込みましたが、その他の線区は50%減程度で踏みとどまりました。千歳線は快速「エアポート」の利用客が多いため、空港利用者減少の直撃を受けましたが、函館線小樽~岩見沢間などは、通勤・通学需要に支えられて、やや踏みとどまった印象です。

ただ、札幌圏は利用者数が多いだけに減収額は大きく、営業収益は前年度より56億9800万円も減り、45億1100万円にとどまりました。赤字額は前年度の8200万円が54億9200万円と67倍に増えていて、JR北海道の経営を揺るがしています。

JR北海道全体では、営業損失が103億円も拡大しています。損失が拡大したのは、インバウンドを中心とした観光客や出張の利用の多い幹線が中心で、幹線だけで94億円も損失が拡大しています。なかでも、札幌圏が損失拡大幅の半分以上を占めています。

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落ち込みが少なかった路線

輸送密度が前年度を上回ったのは、札沼線・北海道医療大学~新十津川間のみ(75%増)。この区間は2020年5月7日に廃止されたので、お別れ乗車の利用者が集まったようです。新型コロナウイルス感染症の影響で、4月17日で運転を打ち切っていますが、もしゴールデンウィークまで運行していたら、もう少し高い輸送密度になっていたでしょう。

それ以外の線区で輸送密度の落ち込みが少なかったのは日高線・苫小牧~鵡川間(10%減)と、富良野線(26%)減、室蘭線・沼ノ端~岩見沢間(28%減)といった区間です。特急が走らない、地元利用客主体の路線の落ち込みは小さかったと言えます。ただ、これらの路線はそもそもの輸送密度が低いので、堅調だったとまでは表現できません。

日高線の鵡川~様似間も17%減と比較的落ち込みは小さかったですが、運休によりバス代行中なので参考記録です。

一時的な減少で終わるか

輸送密度が全体で「第一次特定地方交通線」並みになったといったところで、新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言が出されていた時期の話で、一時的とみることもできるでしょう。新型コロナウイルスが収束すれば、インバウンドなど観光客はある程度戻るとみられます。

ただ、それがいつ頃になるのかは見通せません。また、在宅勤務が定着すれば、札幌圏では利用者数が元に戻らない可能性もあり、厳しい状況は続きそうです。

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