JR九州「12路線17区間」の線区別収支。南九州で採算厳しく

存廃に直結せず

JR九州が、在来線の線区別収支の一部を初めて公開しました。輸送密度2,000人未満の12路線17区間についてで、南九州のローカル線の採算がとくに厳しくなっています。

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路線維持の協力求める

JR九州が収支を公開した路線は、輸送密度(平均通過人員)2,000人未満だった12路線17区間。利用状況の低い路線について、厳しい収支状況を公表することで、沿線自治体や住民に路線維持の協力を求めることが目的です。

公表された区間の収支は以下の通りです。数字は2018年度のものです。20区間ありますが、3区間は2018年に長期運休が発生したため収支を算出しておらず、実質的に17区間となっています。

JR九州・線区別収支(2018年度)

線名 区間 営業収支
(百万円)
輸送密度
(人/日)
営業収益 営業費 営業損益
日豊本線 佐伯~延岡 396 1,070 ▲674 889
都城~国分 442 833 ▲392 1,438
筑肥線 伊万里~唐津 39 232 ▲193 222
宮崎空港線 田吉~宮崎空港 94 99 ▲6 1,918
筑豊本線 桂川~原田 -(534)※1
日田彦山線 田川後藤寺~夜明 -(299)※2
後藤寺線 新飯塚~田川後藤寺 76 255 ▲179 1,315
久大本線 日田~由布院 708 962 ▲254 1,756(2,027)※3
唐津線 唐津~西唐津 33 262 ▲229 1,005
豊肥本線 肥後大津~宮地 -(1,854)※4
宮地~豊後竹田 44 392 ▲348 101(463)※5
豊後竹田~三重町 112 318 ▲206 951(1,331)※5
肥薩線 八代~人吉 271 844 ▲573 455
人吉~吉松 61 322 ▲261 105
吉松~隼人 120 479 ▲359 656
三角線 宇土~三角 157 430 ▲273 1,242
吉都線 吉松~都城 90 430 ▲341 465
指宿枕崎線 指宿~枕崎 43 448 ▲405 291
日南線 田吉~油津 212 697 ▲485 1,160
油津~志布志 38 436 ▲398 193

※1:筑豊本線(桂川~原田)に2018年7月豪雨に伴い運休していた期間があるため、参考値として、カッコ内に2017年度の平均通過人員を記載。
※2:日田彦山線(添田~夜明)に2017年九州北部豪雨に伴い運休が発生しているため、参考値として、カッコ内に2016年度の平均通過人員を記載。
※3:久大本線(光岡~日田)に2017年九州北部豪雨に伴い運休していた期間があるため、参考値として、カッコ内に2016年度の平均通過人員を記載。
※4:豊肥本線(肥後大津~阿蘇)に2016年熊本地震に伴い運休が発生しているため、参考値として、カッコ内に2015年度の平均通過人員を記載。
※5:豊肥本線(肥後大津~阿蘇)に2016年熊本地震に伴い運休が発生しているため、参考値として、カッコ内に2015年度の平均通過人員を記載。

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南九州の路線が厳しく

赤字が最も大きかったのは日豊線の佐伯~延岡間で、6億7400万円。次いで肥薩線の八代~人吉間が5億7300万円、日南線の田吉~油津間が4億8500万円、指宿枕崎線の指宿~枕崎間が4億0500万円、日南線の油津~志布志間が3億9800万円です。

その他の路線も、おおむね2~3億円程度の赤字を出していて、輸送密度の低い路線の収支状況が厳しいことが見て取れます。地域的には、南九州の路線で大きな赤字が目立ちます。

最大赤字となった日豊線佐伯~延岡間や、つづく肥薩線の八代~人吉間は、特急も走る線区で、列車本数も比較的多いです。列車本数が多い路線ほど赤字が増えやすいため、赤字の大きさそのものが問題になるとは限りません。

一方で、日南線の油津以南や、指宿枕崎線の指宿以南は、輸送密度や営業収益の小ささに比して赤字額が大きく、心配になります。

指宿枕崎線

存廃に直結せず

全路線の収支ではなく、輸送密度の低い路線についてのみ収支状況を公表した理由について、JR九州の青柳俊彦社長は、「どうすれば鉄道網を維持できるのか、知恵を出すための基本資料」などと説明しました。沿線自治体に鉄道維持を求めるための材料として提供したという姿勢です。現時点で、運転中の路線の維持のために、自治体に費用負担は求める提案はしていません。

そのため、今回、収支が公表された路線について、すぐに存廃論議が始まるというわけではなさそうです。

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