北海道新幹線新小樽駅(仮称)の駅附帯施設の想定案が明らかになりました。待合室と観光案内所が備わる程度の小さな駅となり、コンビニや売店、飲食店などのスペースは用意されないようです。
市街地から3~4km
新小樽駅は、2030年度に開業を予定している北海道新幹線の新駅です。JR函館線の南小樽駅から約3km、小樽駅からだと約4.5km離れた山間部に設置されます。
北海道新幹線が札幌開業を迎えた場合、東京~新小樽間は4時間半~5時間程度で結ばれる見込みです。新小樽~札幌間は12分程度です。
小樽市は人口12万人を抱え、年間約700万人の観光客が訪れる都市です。しかし、新小樽駅は市街地から離れた位置に設置されるため、想定利用者数はそれほど多くなく、小樽市では1日あたり1,100人程度の乗降客数を見込んでいます。
新幹線開業を10年後に控え、小樽市では駅周辺のまちづくり計画をすすめていて、このほど、駅施設の配置イメージが明らかになりました。
観光案内所と情報発信スペース
小樽市の資料によりますと、駅附帯施設の面積は約199平米で、待合室が52平米57席、観光案内所が22平米でカウンター3席、係員2名を想定。情報発信スペースとしてデジタルサイネージなどを備え、32列のコインロッカーを設けます。
トイレは女子が7ブース、男子が小便器5台、個室4ブースなどを備えます。
下図は駅附帯施設の配置イメージです(確定計画ではありません)。待合室、トイレといった必要不可欠な駅施設のほかは、観光案内所と情報発信スペースが設けられるだけで、コンビニやキオスクといった売店や、カフェやレストランなど飲食店のスペースは用意されていません。
駅構内そのものがコンパクトですが、それには理由があります。新小樽駅は新幹線の保守基地を併設していて、駅南側の高架下に業務用車両の通行幅が必要になり、旅客用のスペースが十分に確保できません。また、東側は川になっているという制約もあります。
出店が担保されるわけではない
小樽市の資料によると、市が設置する営利施設(コインロッカー)の設置費用が1,020万円、非営利施設(観光案内所、情報発信スペース)の設置費用が2,340万円で、合計の市の負担分は3,360万円です。
これに対し、売店や飲食店などのスペース約300平米を市の負担で設置した場合、営利施設の建築費用は1億8,000万円にふくれあがります。非営利施設を含めた総額で見ると、2億340万円もかかります。飲食店などのスペースを設けない場合に比べて、約6倍の建築費用がかかるのです。
これだけの費用を市が負担して、売店や飲食店などの営利スペースを確保したとしても、出店が担保されるわけではありません。そのため、小樽市は、営利施設をコインロッカーだけに絞る上記の附帯施設案を示したわけです。
ちなみに、乗降客が1,000人クラスの新幹線駅の駅附帯施設の設置状況は以下の通りです。(○は設置あり、△は周辺等に設置あり)
コンビニもキオスクも飲食店もないのは、高畠駅(山形新幹線)くらいです。
JRが売店くらい出さないのか、と期待していまいますが、小樽市の資料を見る限り、物販施設のような駅附帯施設の設置は自治体側の費用負担とされていますので、JR側が設置する見通しは現時点ではないようです。
駐車場は300台
では、駅舎の外はどうでしょうか。下図は、駅前広場のレイアウト案です。バス乗り場、タクシー乗り場のほか、自家用車の乗降場が駅前に設けられます。
駅周辺の駐車場は約300台です。1日の乗降客数が1,000人クラスの新幹線駅としては、やや少なめかもしれません。北海道新幹線では、倶知安駅(1日乗降客数想定500人)が約400台、長万部(同1,400人)が500台などとなっています。
駅周辺には、駐車スペース以外に、建物は設けられません。周辺の土地利用計画を見ても、ホテルやレンタカー店に使える用地は道路を挟んだ反対側の「利便機能誘導ゾーン」に限られそうです。
小樽市としても、レストランやコンビニといった営利施設の出店希望があった場合の設置箇所は、利便機能誘導ゾーンを想定しています。
停車本数がネックに
新小樽駅から札幌駅までは、新幹線で約12分。この距離なら札幌への新幹線通勤も見込めるため、もう少し駐車場台数を増やして、駅にコンビニくらいは設けてもいいのではないか、と思わなくもありません。
ただ、ネックとなるのが、新幹線の停車本数です。
北海道新幹線の札幌開業時の列車運転本数について、確定した内容はありません。新小樽駅の停車本数も未定です。
小樽市では、札幌発着列車を1日21本(片道)と仮定した場合、そのうち13本が小樽に停車すると試算しています。1~2時間に1本程度の計算です。小樽市では北海道新幹線の全列車の新小樽停車を求めてはいるものの、駅施設建設時の試算としては現実的に考えている様子です。
停車本数が本当にこの程度だとすると、いくら新小樽~札幌間が12分でも、毎時4本走る在来線に比べて便利とはいえず、新幹線通勤がそれほど多くならない可能性が高いでしょう。
最速達タイプの列車が停車しない場合、観光客の利用が伸び悩む可能性もあります。
12万都市としては寂しい
すでに開業している新幹線で、在来線と接続していない地方の駅に行くと、がらんとしたスペースが広がっていて、閑散とした雰囲気を感じることがあります。店舗スペースのシャッターが閉まっていたりすると、余計に過疎感を覚えます。小樽市の手堅い方針は、そうした現実を知った上のことでしょう。
面積的な制約のある駅高架下に、コンビニやカフェ向けのスペースをひねり出したところで、店舗が入ってくれなければ整備費用が無駄になるだけでなく、寂れた雰囲気を醸し出してしまうだけです。そう考えれば、小樽市の方針は合理的というほかありません。
現実に向き合えば仕方のないことなのでしょうが、人口12万人都市にしてはちょっと寂しい新幹線駅になりそうです。現時点では確定事項ではないとのことですが、本当に物販施設が全くできないなら、旅客の立場からみると、車内で食べるお弁当もお土産も買えないことになります。東京へ向かう際には不便に感じられるのではないでしょうか。(鎌倉淳)