台湾で「国立鉄道博物館」計画が本格始動します。日本統治時代の鉄道工場「台北機廠」を博物館化するもので、このほど準備組織が設立されました。
1935年落成
台北機廠は台北市信義区にあった旧鉄道車両工場です。台北駅の東約4kmに位置し、日本統治時代の1935年に供用が開始されました。戦後も長らく台湾鉄路管理局(台鉄)の最大の車両工場として使用されてきました。
施設を建設したのは主に大倉土木(現大成建設)です。モダニズムの雰囲気漂う職員用大浴場は台湾総督府鉄道部の速水和彦が設計。円形の浴槽が特徴的です。
台北機廠は2013年まで現役で稼働していましたが、桃園市郊外に新設された富岡車両基地などに機能を移転。その役目を終えました。
保存運動実る
台北機廠の跡地は再開発される予定でしたが、台湾市議や鉄道関係者、文化遺産専門家などから保存運動が起こりました。台鉄は当初、全面的な保存に後ろ向きでしたが、2014年の台湾市長選で保存を訴えた柯文哲が当選し、2015年に文化部(文化省)が国定古跡指定を公告。全面保存が決定しました。
文化部と交通部(交通省)は2017年に、跡地全域を2026年までに鉄道博物館として修復・整備する10カ年計画に着手。保存エリアは「台北機廠鉄道博物館園区」と名付けられました。施設を修復して公開するほか、体験コーナーやショップ、レストランも併設します。すでに修復の終わった部分に関しては予約制で一般公開を開始しています。
「生きた鉄道博物館」
2019年8月16日には、準備組織「国家鉄道博物館準備処」が行政院(内閣)の承認を経て設立されました。国家プロジェクトとして「国立鉄道博物館」になることが正式に決まったことになります。
文化部によりますと、準備処の設立に際し鄭麗君文化部長は、鉄道博物館を動的・静的両面の展示を備えた「生きた鉄道博物館」とする構想を示しました。台湾の鉄道の歴史と人々の記憶を保存し、観光を促進する施設になるとの期待感を示しています。
日本の鉄道博物館(大宮)、トヨタ産業技術記念館が運営面で協力。2017年には国鉄583系電車2両が譲渡されています。全面オープンはまだ先ですが、非常に楽しみな施設が台北に誕生しそうです。(鎌倉淳)