JR九州が路線・区間別の輸送密度の2018年度版を公表しました。2017年度の数字もあわせて掲載し、2018年3月ダイヤ改正で行われた大幅減便がどう影響したか検証してみましょう。
22路線58区間
JR九州は2019年7月12日に、2018年度(2018年4月~2019年3月)の路線・区間別平均通過人員(輸送密度)を公表しました。公表したのは、災害運休などでデータのない3区間を除く、22路線58区間です。
JR九州では、2018年3月に、同社発足以来となる1日当たり117本の大幅減便を行いました。この影響がどの程度出ているかも含めて、JR九州の全路線の区間別輸送密度をランキング形式で見てみましょう。
順位 | 線名 | 区間 | 平均通過人員 (人/日) |
前年度比 | |
---|---|---|---|---|---|
2018年度 | 2017年度 | ||||
1 | 鹿児島本線 | 小倉~博多 | 82,713 | 83,716 | 99% |
2 | 鹿児島本線 | 博多~久留米 | 68,269 | 68,642 | 99% |
3 | 筑肥線 | 筑前前原~姪浜 | 46,283 | 44,975 | 103% |
4 | 篠栗線 | 吉塚~篠栗 | 32,975 | 32,538 | 101% |
5 | 長崎本線 | 鳥栖~佐賀 | 31,057 | 31,546 | 98% |
6 | 日豊本線 | 小倉~中津 | 28,424 | 29,266 | 97% |
7 | 九州新幹線 | 博多~熊本 | 27,986 | 27,579 | 101% |
8 | 鹿児島本線 | 門司港~小倉 | 24,075 | 23,849 | 101% |
9 | 長崎本線 | 佐賀~肥前山口 | 21,001 | 21,434 | 98% |
10 | 山陽本線 | 下関~門司 | 18,961 | 18,795 | 101% |
11 | 長崎本線 | 諫早~長崎 | 18,220 | 18,702 | 97% |
12 | 篠栗線 | 篠栗~桂川 | 14,445 | 14,439 | 100% |
13 | 日豊本線 | 中津~大分 | 14,074 | 14,726 | 96% |
14 | 九州新幹線 | 熊本~鹿児島中央 | 13,226 | 13,062 | 101% |
15 | 鹿児島本線 | 鹿児島中央~鹿児島 | 11,917 | 11,900 | 100% |
16 | 日豊本線 | 国分~鹿児島 | 11,319 | 11,329 | 100% |
17 | 豊肥本線 | 熊本~肥後大津 | 11,265 | 10,957 | 103% |
18 | 鹿児島本線 | 熊本~八代 | 10,548 | 10,793 | 98% |
19 | 鹿児島本線 | 久留米~大牟田 | 8,843 | 9,311 | 95% |
20 | 指宿枕崎線 | 鹿児島中央~喜入 | 8,555 | 8,474 | 101% |
21 | 筑豊本線 | 折尾~桂川 | 8,443 | 8,608 | 98% |
22 | 長崎本線 | 肥前山口~諫早 | 8,334 | 8,613 | 97% |
23 | 香椎線 | 香椎~宇美 | 7,852 | 7,860 | 100% |
24 | 鹿児島本線 | 川内~鹿児島中央 | 7,452 | 7,360 | 101% |
25 | 鹿児島本線 | 大牟田~熊本 | 6,942 | 6,989 | 99% |
26 | 佐世保線 | 肥前山口~佐世保 | 6,463 | 6,660 | 97% |
27 | 日豊本線 | 延岡~南宮崎 | 6,145 | 6,028 | 102% |
28 | 筑肥線 | 唐津~筑前前原 | 5,870 | 5,859 | 100% |
29 | 日豊本線 | 大分~佐伯 | 5,308 | 6,948* | 76% |
30 | 大村線 | 早岐~諫早 | 4,968 | 5,246 | 95% |
31 | 香椎線 | 西戸崎~香椎 | 4,909 | 4,858 | 101% |
32 | 長崎本線 | 喜々津~浦上 | 4,666 | 4,765 | 98% |
33 | 筑豊本線 | 若松~折尾 | 3,980 | 4,069 | 98% |
34 | 豊肥本線 | 三重町~大分 | 3,877 | 3,943 | 98% |
35 | 日南線 | 南宮崎~田吉 | 3,770 | 3,726 | 101% |
36 | 日豊本線 | 南宮崎~都城 | 3,584 | 3,624 | 99% |
37 | 久大本線 | 久留米~日田 | 3,437*** | –** | — |
38 | 指宿枕崎線 | 喜入~指宿 | 2,537 | 2,551 | 99% |
39 | 日田彦山線 | 城野~田川後藤寺 | 2,471 | 2,514 | 98% |
40 | 久大本線 | 由布院~大分 | 2,294 | 2,483 | 92% |
41 | 唐津線 | 久保田~唐津 | 2,203 | 2,229 | 99% |
42 | 宮崎空港線 | 田吉~宮崎空港 | 1,918 | 1,841 | 104% |
43 | 久大本線 | 日田~由布院 | 1,756 | 1,340 | 131% |
44 | 日豊本線 | 都城~国分 | 1,438 | 1,478 | 97% |
45 | 後藤寺線 | 新飯塚~田川後藤寺 | 1,315 | 1,309 | 100% |
46 | 三角線 | 宇土~三角 | 1,242 | 1,331 | 93% |
47 | 日南線 | 田吉~油津 | 1,160 | 1,189 | 98% |
48 | 唐津線 | 唐津~西唐津 | 1,005 | 1,066 | 94% |
49 | 豊肥本線 | 豊後竹田~三重町 | 951 | 947 | 100% |
50 | 日豊本線 | 佐伯~延岡 | 889 | 793 | 112% |
51 | 肥薩線 | 吉松~隼人 | 656 | 719 | 91% |
52 | 吉都線 | 吉松~都城 | 465 | 474 | 98% |
53 | 肥薩線 | 八代~人吉 | 455 | 603 | 75% |
54 | 指宿枕崎線 | 指宿~枕崎 | 291 | 306 | 95% |
55 | 筑肥線 | 伊万里~唐津 | 222 | 227 | 98% |
56 | 日南線 | 油津~志布志 | 193 | 210 | 92% |
57 | 肥薩線 | 人吉~吉松 | 105 | 138 | 76% |
58 | 豊肥本線 | 宮地~豊後竹田 | 101 | 99 | 102% |
59 | 筑豊本線 | 桂川~原田 | –** | 534 | — |
60 | 日田彦山線 | 田川後藤寺~夜明 | –** | –** | — |
61 | 豊肥本線 | 肥後大津~宮地 | –** | –** | — |
*長期間運転を見合わせていた区間については、その期間を除いた実績で算出しています。 **一部で運転を見合わせている(もしくは見合わせていた)区間については開示していません。 ***「光岡~日田」は一時期運転を見合わせていましたが、年間全区間で運転していたものとし、「参考値」として算出しています。
鹿児島本線は微減
JR九州全路線で輸送密度がもっとも高いのは鹿児島本線の小倉~博多間の82,713。次いで、博多~久留米間の68,269です。博多駅を挟んだ鹿児島本線の主力区間は、いずれも前年度よりも1%程度の微減となりました。
2018年3月のダイヤ改正で特急や快速などが削減されたので、その影響が多少はありそうですが、はっきりと数字に出ているとまではいえません。
一方、減便のなかった筑肥線の筑前前原~姪浜間の輸送密度は46,283で、前年度比103%と好調でした。
久留米~大牟田間は5%減
「幹線相当」とみなされる輸送密度8,000を超えたのは、22区間。新幹線と福岡都市圏がほとんどで、長崎市、熊本市、鹿児島市の都市圏路線の一部が含まれます。これらの区間では、前年度比増減まちまちで、大幅減便の影響は路線により異なります。
たとえば、日中時間帯の運転本数を毎時3本から2本に削減した香椎線は、香椎~宇美間でほぼ前年並み、西戸崎~香椎間では前年度比1%増となり、大幅減便の影響を感じさせません。
一方、博多直通の快速サービスが削減された鹿児島本線の久留米~大牟田間では、前年度比5%減の8,843と落ち込みました。この区間は、減便の影響があらわれているように感じられます。
日豊本線の小倉口も毎時1本程度の減便が実施され、小倉~中津は輸送密度3%減。この区間も多少は大幅減便の影響がありそうです。ただ、人口減少など他の要因もありますので、3%減程度では、一概にいえません。
長崎方面はやや不振
輸送密度8,000未満で、「特定地方交通線基準」に入らない輸送密度4,000を維持したのは、長崎本線喜々津~浦上間までの10区間。佐世保線・肥前山口~佐世保間が前年度比3%減、大村線が5%減となっていて、長崎エリアの輸送密度の減少が目立ちます。輸送密度8,334の長崎本線・肥前山口~諫早間も3%減と、やや振るいませんでした。
長崎方面では、「かもめ」の運転本数削減、「みどり」の最終繰り上げ、「快速シーサイドライナー」の運転縮小などが実施されています。3%程度の減少は解釈が難しいですが、5%減の大村線は、快速サービスの削減の影響が出ているように感じられます。
鹿児島線の久留米~大牟田間や大村線といった、バスや私鉄など競合する交通機関が強い区間では、ダイヤ改正が利用者の流出に繋がった可能性がありそうです。
地震、豪雨の傷深く
輸送密度が最も低かったのは、豊肥本線の宮地~豊後高田間の101。豊肥本線は2016年4月に発生した熊本地震で被災し、現在も肥後大津~阿蘇間が不通です。復旧工事が進められており、2020年度には運転再開見込みです。復旧後は、路線全体として輸送密度は回復するでしょう。
九州では2016年から2018年にかけて地震や豪雨による災害が多く、JR九州でも多数の不通区間が生じました。輸送密度の低いローカル区間では、その影響が大きく数字に出ている印象です。
増えるにしろ、減るにしろ、前年度に比べ変動が大きな区間としては、日豊本線の佐伯~延岡間(112%)、肥薩線八代~人吉間(75%)、肥薩線人吉~吉松間(76%)などが目に付きます。これらの区間は、ダイヤ改正の影響よりは、災害による変動とみたほうがよさそうです。
宮崎方面では、減便規模が比較的大きめだった日南線の油津~志布志間の前年度比92%が目を引きます。同線の田吉~油津間は同98%で踏みとどまりました。吉都線も同98%にとどまっていて、数字上はそれほど大きな利用者減になっていません。
輸送密度の低い区間では、全体的に前年度比減の路線が多いです。これが大幅減便のせいなのか、災害の影響なのか、人口減少の結果なのか、輸送密度の数字だけで判断するのは難しそうです。(鎌倉淳)