アストラムラインの延伸区間のルート案と駅位置案が公表されました。広域公園前~JR西広島駅の7.1kmに6駅を新設します。その詳細を見てみましょう。
広域公園前~西広島間7.1km
アストラムライン(広島高速交通)は、広島市中心部の本通駅から、大町駅などを経て広域公園前駅まで18.4kmを営業している新交通システムです。これをJR西広島駅まで延伸する計画があり、2015年に事業化が決定しています。
延伸区間となるのは広域公園前~JR西広島駅の7.1km。「新交通西風新都線」と名付けられています。広島市は2019年2月5日の市議会都市活性化対策特別委員会で、西風新都線のルートと駅位置の詳細案を明らかにしました。
それによりますと、広域公園前駅の南側にある五月が丘団地内に、「五月が丘1」、「五月が丘2」の2駅を設け、ジ・アウトレット広島の敷地内に「石内東駅」を整備。己斐地区内には「己斐上」「己斐中」の2駅を設置し、終点の西広島駅でJR山陽線と接続します(駅名は全て仮称)。
石内東~己斐上間には、5.9%の急勾配区間があります。計画段階では6.5%の国内最急勾配が想定されていましたが、公表ルートでは5.9%に抑えられ、埼玉県のニューシャトルと同程度にとどまりました。
五月が丘団地に2駅
ルート詳細を見ていきましょう。五月が丘団地では、アストラムラインの利用促進や地域の活性化を図るため、団地内を経由するルートとなりました。
2つの駅については、団地内からのアクセス性を考慮して、主要な交差点付近に配置しています。
新たな用地取得を少なくするため、団地内の幹線道路(市道佐伯1区117号線、幅16m)を活用します。車道と歩道は、現在と同程度の幅員を確保しています。
アウトレット敷地内に新駅
石内東地区では、事業費が安くすむ道路法面など市有地などを活用するルートを設定しています。駅を「ジ・アウトレット広島」敷地内に引き込むことで迂回をするような曲線になり、初期計画より勾配が緩やかになっています。
駅がアウトレットに隣接することで、利用者増が期待できます。また、路線バスなどを使えば、周辺地域からアストラムラインへのアクセスもしやすくなります。
西広島駅は南口上空に
己斐地区については、アストラムラインの導入空間として都市計画道路己斐中央線の区域内にルートを設定しています。
新駅は、沼田分かれ交差点付近と、己斐上二丁目のフレスタ己斐上店付近に計画しています。
終点駅となる西広島駅は、JR山陽線をまたいで南口広場の上空付近に配置します。JR、広電市内線・宮島線相互の乗り換えの利便性を考慮しています。
2段階で開業
延伸区間は単線を予定しており、各駅に交換設備を設置します。総事業費は約570億円。市が約289億円を負担し、残りは国が負担します。
今後、2020年度までに環境影響評価や都市計画法、軌道法の手続きを終え、2021年度に事業着手を予定しています。事業は広域公園前~石内東間と、石内東~西広島駅間で分けて進められ、石内東までの部分開業予定が平成30年度後半(2025年前後)です。
石内東~己斐上間には1.7kmに及ぶトンネルを掘削する必要があり、西広島駅周辺では再開発計画が動き出したばかりで、その整備にも時間がかかります。そのため、石内東~西広島間の開業は平成40年代初頭(2030年前後)になると見込まれています。西広島駅までの開業後は広域公園前駅~西広島駅を14分で結び、1日平均15,200人の利用を見込んでいます。
アストラムラインは、西広島から先、本通までの延伸計画もあります。この区間は「新交通都心線」と名付けられていて、実現すればアストラムラインの環状運転が実現します。しかし、都心線の事業化は決定しておらず、本通までの開業のメドは立っていません。(鎌倉淳)