豪雨災害による不通が続く日田彦山線の添田~夜明間について、復旧への議論が行き詰まっています。JR九州は運行再開後に年1億6000万円の収支改善を要求。沿線自治体は反発しています。
年間2億6600万円の赤字
JR九州の日田彦山線は、2017年の九州北部豪雨で被災し、添田~夜明間で不通が続いています。JRと沿線自治体は2018年4月に「日田彦山線復旧会議」を立ち上げ、復旧に向けた協議を開始しました。
これまでの議論で、JRは同区間の被災前の収支状況を公表。営業収益が年2800万円に対し、費用が2億9300万円もかかっており、年間2億6600万円の赤字を出していることを明らかにしました。そのため、JRは、復旧に際し、運行再開後の収支改善を求めています。
年1億6000万円の支援求める
2019年1月16日に開催された「第3回日田彦山線復旧会議検討会」で、JR側は、復旧後の路線の継続的な運行には、年1億6000万円の収支改善をする必要があると、具体的な金額を提示しました。沿線自治体に、復旧後の運行費支援を求めた形です。
1月31日に開かれた協議で、JR九州は1億6000万円の根拠について説明。被災前の2016年度に、当該区間での地上設備の維持にほぼ同額の費用がかかっており、利用者数にかかわらず必要な金額との見解を明らかにしました。
自治体側の収支改善策
一方、沿線自治体側も、地域イベントの開催や二次交通の充実などの利用促進策を提示しています。ウォーキングの実施、車窓からみえる沿線の景観整備、鉄道利用者に対するホテルの割引や買い物特典、通学定期に対する助成、鉄道に接続するバスやデマンドタクシーの整備などです。
こうした利用促進策で、自治体側は年間2520万円の増収効果が期待できると主張しています。しかし、JRは381万円ほどの効果しかないと見ています。JRと自治体側の主張の隔たりは小さくありません。
復旧費は56億円
これとは別に、復旧費用の問題もあります。
復旧費は節約しても56億円と見積もられていて、鉄道軌道整備法を活用した場合、JR九州が28億円を負担し、残りを国と自治体が折半することになります。復旧費の負担については、自治体側も受け入れる姿勢を見せています。
しかし、JR九州としては、28億円かけて、年2億円の赤字を生む路線の復旧をするわけにはいかないという立場です。このまま代行バスを走らせている方が、負担は少ないわけで、復旧を急ぐ理由はありません。
実質的な上下分離
JR九州の青柳俊彦社長は、これまでの議論で、上下分離やバス転換を示唆したこともあります。今回の1億6000万円の収支改善要求についても、基礎的な運行費用の負担を求めているわけですから、実質的な上下分離要求と見ることもできるでしょう。
沿線自治体としては、年1億円以上の運行費拠出となれば大きな負担となります。永続的な支出になる可能性が高いため、納税者が納得できる理由を示す必要もあり、そう簡単に受け入れることはできないでしょう。
復旧会議では、2019年4月までに一定の結論を出すことにしています。しかし、両者の主張の隔たりは大きく、結論は見通せません。(鎌倉淳)