「高速バス+カーシェア」は定着するか。乗り捨てできれば普及しそうだが

高速バスとカーシェアを組み合わせる社会実験が、この秋から始まっています。第一弾として、タイムズカープラスが東名高速の浜松インター近くの駐車場で、「高速バス停でクルマが借りられるサービス」を2016年11月15日に開始しました。この施策は定着するのでしょうか。

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高速バス&カーシェアリング社会実験

この取り組みは、国土交通省が主催する「高速バス&カーシェアリング社会実験」です。カーシェアリングと高速バスを連携させ、高速バス利用者の行動圏を拡大し、観光振興や地域活性化への寄与をめざします。

今回の社会実験では、タイムズカープラスが、高速バスの「浜松インター駐車場」バス停付近の、ステーション(カーシェアのクルマ置き場)に日産ノート3台を配備します。浜松以外でも、全国で実験が行われる予定です。

システムとしてはカンタンで、まず高速バスを予約し、その到着時間に合わせて、カーシェアのクルマを予約するだけです。到着後は、ステーションで予約したクルマを拾い、観光やお出かけを楽しみ、高速バスで帰ります。

これまでにも、カーシェアでは、鉄道の主要駅や空港などへの車両配備が行われています。たとえば、タイムズでは鉄道とカーシェアリングを組み合わせて移動する「レール&カーシェア」を推進しており、山陽新幹線などと連携しています。こうした取り組みを高速バスでも実施するわけです。

高速バスカーシェア

二次交通の貧弱さを補う施策

高速バス停は、一部のターミナルを除き、鉄道駅に比べて不便な場所にあります。二次交通となる公共交通網が貧弱で、「バス停で降りたら、どこにも行けない」という場所も多いです。これが高速バスの弱点の一つとなっています。

「高速バス&カーシェア」は、この弱点を補う施策で、定着すれば、高速バスの二次交通として大きな存在になるのは間違いありません。その意味で、今回の社会実験には意味があると思います。

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「乗り捨て」で広がる可能性

ただ、気になるのは、カーシェアでは原則として乗り捨てが不可能な点です。乗り捨てが可能なステーションもありますが、かなり限られています。原則として、借りたクルマは元のステーションに返さなければなりません。

往復に高速バスを使う観光客ならいいのですが、たとえば、帰りは新幹線を使いたい、という人には、乗り捨て不能はネックになります。高速バス停近くでクルマを借りて、帰りは新幹線駅近くで返せればいいのですが、そうした使い方ができないからです。

あるいは、自宅近くと高速バス停近くにカーシェアのステーションがあり、乗り捨てが可能なら、自宅近くでクルマを借りて、高速バス停近くで返し、高速バスに乗る、という使い方ができます。

こうした使い方ができれば、高速バスは便利になると思いますが、これも乗り捨て可能であればこそです。

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「カーシェア乗り捨て」普及に期待

現在でも、多摩都市モノレール甲州街道駅から近い「中央道日野」や、阪急西山天王山駅直結の「高速長岡京」のように、二次交通がしっかりしている高速バス停は、利用しやすいものです。こうしたバス停が増えればいいのですが、高速バス停の近くにいまさら鉄道を引っ張ってくるのは困難です。

その点、カーシェアは、高速バス停のアクセスの悪さを低コストで解消できます。高速バスの利便性向上のためには、バス停近くにカーシェア・ステーションを設置するだけでなく、「カーシェア乗り捨て」の普及が不可欠に思えます。

乗り捨てできないなら、カーシェアで目的地まで行っても高速バスと時間は変わらないですし、手間もかかりません。したがって、乗り捨てできないなら、効果は小さいでしょう。

長くなるので書きませんが、カーシェアの乗り捨て普及にも、いろいろハードルはあります。それでも、実現すれば、利用者は増えるのではないでしょうか。(鎌倉淳)

カレコ・カーシェアリングクラブ

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