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沖縄鉄軌道

沖縄鉄軌道

沖縄県では、沖縄本島を縦貫する那覇~名護間に鉄道を敷設する計画があります。これが沖縄鉄軌道です。「沖縄縦貫鉄道」とも呼ばれたりします。 沖縄の鉄道計画には、沖縄県が計画を進めている計画と、内閣府による調査・検討がありますが、ここでは沖縄県が進めている計画を中心に紹介します。現時点では計画段階で、開業予定などは未定です。 沖縄鉄軌道の概要 沖縄鉄軌道計画は、那覇~名護間を1時間で結ぶものです。沖縄本島南部都市圏の交通渋滞緩和が主な目的で、本格的な計画案づくりは2014年に開始されました。 2018年3月までに、おおざっぱなルート案が確定しました。「C派生案」と呼ばれるもので、那覇、浦添、宜野湾、北谷、沖縄、うるま、恩納、名護の8市町村を経由するものです。「中部東海岸、北部西海岸」を経由するルートです。   那覇~うるま間は主に地下路線、うるま~名護は主に山岳トンネルです。高架区間は宜野湾~北谷と、うるま~恩納の一部のみで、全体的にトンネルだらけの鉄道路線です。 総延長は67~68kmで、那覇~名護間を59分で結びます。 駅の配置については、経由する市町村に、最低1箇所は拠点駅を設置する方針を示し、拠点駅間距離が長い場合や、市街地が続く地域では、必要に応じて拠点駅間に中間駅を設定するとしています。 また、市街地地域においては、おおむね2~3kmに1箇所程度の駅を配置。郊外では、5~7kmに1箇所程度としています。 快速列車は、経由する市町村で各1箇所を快速停車駅として想定。運転本数は、那覇~うるまといった都市部では、ピーク時に毎時「各駅7本+快速3本」、オフピーク時に「各駅4本+快速2本」を運転します。 うるま~名護といった郊外部では、ピーク時に毎時「各駅2本+快速1本」、オフピーク時に「各駅1本+快速1本」という想定です。 想定するシステムは、那覇と名護の約70kmを約1時間で結ぶスピードを確保するものという条件が課されています。そのため、専用軌道を有するシステムで、小型鉄道程度の輸送力が必要です。検討対象として、リニア式の小型鉄道と専用軌道のLRTなどが取り上げられています。 総事業費と費用便益比 ルート案は、那覇近郊を330号線(内陸)を通る案と、50号線(海沿い)を通る案があります。総事業費は、ルート決定時点(2018年)で国道330号線ルートが6,100億円、国道50号ルートが6,000億円とされました。その後、2019年にコスト縮減案が示され、330号ルートが5,810億円、50号ルートが5,930億円とされています。 費用便益比は、ルート決定時の試算では、入り込み観光客を1,000万人と見込んで、0.39~0.59と算出しました。2019年の試算では、観光客数を1,350万人とし、選考接近法で算出すれば、330号ルートで1.04となり、1を超えるとしています。 観光客数は2018年度に1.000万人に達していて、その後のインバウンドの伸びを考えれば、1,350万人も荒唐無稽な数字とはいえません。 費用便益比が1を超えるのは330号ルートなので、基本的には同ルートを軸に検討されていくとみられます。ただ、現時点では構想段階で、事業化の可否は決まっていません。当然、開業時期などはまったく未定です。 沖縄鉄軌道の沿革 沖縄本島には戦前、県営の軽便鉄道が走っていましたが、沖縄戦で被災し、戦後も復旧されていません。新たに鉄道を敷設しよういう意見は本土復帰時からありましたが、具体化しはじめたのは2012年「沖縄県総合交通体系基本計画」(第4次)が公表されてからです。 同計画には「需要の規模や特性を踏まえた観光地への鉄軌道を含む新たな公共交通システムの導入」が施策として明記されました。これをうけて、2013年6月には「鉄軌道を含む新たな公共交通システム導入促進検討業務」報告書(平成24年度報告書)が公表されました。 2014年10月からは、沖縄県が鉄軌道導入に向けて「沖縄鉄軌道計画検討委員会」などを組織し、計画案づくりをスタート。2018年3月に『沖縄鉄軌道の構想段階における計画書』(沖縄鉄軌道計画検討委員会案)がまとまりました。2020年8月に費用便益分析検証委員会を開催し、需要予測や費用便益比の試算を公表しました。 ここまでの検討で、費用便益比はケースによって1を超えるものの、採算性おいては特例制度の創設が必要という結論でした。そのため、沖縄県は、全国新幹線整備法を参考にした特例制度の創設を国に要請。国は2022年度の「沖縄基本方針」において、その検討をする旨を明記しました。 一方、「沖縄基本方針」には、2012年度の旧方針から沖縄鉄軌道の検討が盛り込まれていて、内閣府はそれに基づいて、沖縄県とは別に沖縄鉄軌道の調査を毎年実施しています。検討結果としてのルートは沖縄県案と大きくは変わらず、費用便益比は1を超えられないとしています。 2022年度からの新基本方針に基づいて、内閣府調査でも整備新幹線を参考にした新制度を検討する方針です。ただ、整備新幹線方式であっても、費用便益比が1を超えることが必要です。これまでの内閣府調査では、費用便益比をクリアできないとして、採算性にかかわる新制度論には踏み込んでいません。   沖縄鉄軌道のデータ 沖縄鉄軌道データ 営業構想事業者 未定 整備構想事業者 未定 路線名 未定 区間・駅 那覇~名護 距離 67~68km 想定利用者数 68,000~77,000人/日 総事業費 5,810~5,930億円 費用便益比 0.91~1.04(観光客1,350万人、所得接近法) 累積資金収支黒字転換年 発散 種別 未定 種類 普通鉄道 軌間 未定 電化方式 未定 単線・複線 複線(一部単線案もあり) 開業予定時期 未定 備考 全国新幹線整備法に準ずる補助を要望 ※データは主に『沖縄鉄軌道の構想段階における計画書』(2019年)、『沖縄鉄軌道費用便益分析に係る検証委員会資料』(2020年)より。 沖縄鉄軌道の今後の見通し 沖縄鉄軌道は現時点では構想段階です。県を挙げての取り組みでもあり、実現性は低くなさそうですが、事業化に向けて、超えなければならないハードルはいくつもあります。 最大の課題は普天間基地の返還でしょう。沖縄鉄軌道計画は普天間基地の返還を前提にしており、ルートも普天間基地を通ります。しかし普天間基地の返還の道筋は不透明で、現時点ではいつになるか見通せません。 仮に普天間基地の返還が実現したとしても、建設費の問題もあります。約70kmで6000億円規模の事業の予算化は容易ではありません。近年の建設費の高騰をみれば、実際には1兆円規模のプロジェクトになるでしょう。 沖縄県では、整備新幹線並みの手厚い補助金を要請していて、国も応じる構えを見せていますが、現時点では具体化していません。 とはいえ、沖縄県中南部の道路渋滞はひどく、鉄軌道がとくに必要とされているのは事実です。時間はかかりますが、いずれ実現へ向け前進する鉄道計画と信じたいところです。 【参考資料アーカイブ】 『沖縄鉄軌道の構想段階における計画書(2018)』[PDF]
北海道新幹線路線図

北海道新幹線札幌延伸

北海道新幹線は、青森県青森市から北海道札幌市を経て旭川市までを結ぶ計画の新幹線です。このうち、青森市から札幌市までの区間が整備新幹線に指定されています。 現在、新青森駅~新函館北斗駅間が開業済みです。新函館北斗~札幌間は建設中で、開業予定は2030年度末となっていましたが、数年の遅れが生じています。札幌~旭川間の建設のメドは立っていません。 北海道新幹線札幌延伸の概要 北海道新幹線は、新青森駅~新函館北斗駅間148.8kmが開業済み、新函館北斗~札幌間211.5kmが建設中です。 新函館北斗~札幌間には、新八雲(仮称)駅、長万部駅、倶知安駅、新小樽(仮称)駅の4駅を設けます。札幌までの開業予定は2030年代半と見込まれています。   札幌駅の新幹線ホームは、在来線ホームより東側に建設します。創成川の東西に改札口を設けます。   北海道新幹線札幌延伸時の所要時間 北海道新幹線の札幌延伸時の最高速度は260km/hで計画されましたが、320km/hに引き上げる予定です。札幌まで開業し、320km/h運転が実現した場合の所要時間は、東京~札幌間で4時間30分を目指しています。 新函館北斗~札幌間は、2012年の試算(260km/h運転)で約1時間5分とされています。320km/h運転が実現すれば5分程度短縮しますので、約1時間になる見通しです。 走行する列車名などは未定です。 総事業費と費用便益比 北海道新幹線の工事費は、国土交通省の試算によると、新青森・新函館北斗間で約5,783億円、新函館北斗・札幌間で2兆3,159億円、合計で2兆8,942億円とされています。 2012年1月の国交省第1回整備新幹線小委員会参考資料『整備新幹線(未着工区間)の整備効果等について』で示された試算では、輸送密度14,800人、事業費7283億円、費用便益比1.1とされました。 2022年の国会答弁によれば、想定輸送密度は17,800人です。しかし、2023年の事業再評価によりますと、建設費の高騰により、費用便益比は0.9%と1を割り込んでいます。ただし、残事業に限れば1.3とされ、事業の続行が決定しています。 建設スキームと並行在来線 北海道新幹線の新函館北斗~札幌間は「整備新幹線」として整備が進められています。 整備新幹線は、鉄道・運輸機構(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が新幹線施設を建設・保有し、営業主体であるJRに対して施設を貸し付ける枠組みです。貸付を受けるJR北海道は受益の範囲内で鉄道・運輸機構に貸付料を支払います。 北海道新幹線の開業後、並行在来線はJR北海道から切り離されます。新函館北斗~札幌間が開業すると、JR函館線の函館~小樽間が並行在来線として、JR北海道から経営分離される予定となっています。 函館~小樽間のうち、函館~新函館北斗間は、第三セクターに転換のうえ存続します。新函館北斗~長万部間は旅客営業が廃止され、貨物線となる見通しです。長万部~小樽間は鉄道が廃止されることが決まっています。 北海道新幹線札幌延伸の沿革 北海道新幹線は、「全国新幹線鉄道整備法」に基づいて整備が進められている新幹線です。1972年7月3日運輸省告示第243号により青森市~札幌市が基本計画区間に追加され、1973年11月13日に、同区間の整備計画を決定しています。同日、札幌市~旭川市も基本計画区間に追加されました。 このうち、新青森~新函館北斗間は、2005年4月27日に工事実施計画が認可・着工され、2016年3月26日に開業しています。 新函館北斗~札幌間は、2012年6月29日に認可・着工され、新函館北斗開業の概ね20年後(2035年)までの開業が予定されていました。その後、2015年1月14日の「政府・与党申し合わせ」において、開業を5年前倒しし、2030年度末の開業を目指すことが決定しています。 ただし、工事は順調に進んでおらず、2024年5月10日に、建設主体である鉄道・運輸機構が、数年の遅れが生じていることを国交省に伝えています。長大トンネルの掘削に時間がかかっていることが主要因なので挽回は難しく、開業は順調にいっても2030年度半ばになりそうです。 北海道新幹線の計画上の終点は札幌ではなく、旭川です。札幌~旭川間は「基本計画路線」と位置づけられています。ただし、現時点で建設のメドは立っておらず、着工の時期や、設置駅なども未定です。   北海道新幹線札幌延伸のデータ 北海道新幹線札幌延伸データ 営業構想事業者 JR北海道 整備構想事業者 鉄道・運輸機構 路線名 北海道新幹線 区間・駅 新函館北斗~札幌(途中駅:新八雲、長万部、倶知安、新小樽) 距離 211.5km 想定輸送密度 17,800人/日 総事業費 2兆3,159億円 費用便益比 0.9(2023年再評価時) 累積資金収支黒字転換年 -- 種別 第一種鉄道事業 種類 新幹線鉄道 軌間 1,435mm 電化方式 交流25,000V 単線・複線 複線 開業予定時期 2030年代半ば 備考 全国新幹線整備法 北海道新幹線札幌延伸の今後の見通し 北海道新幹線札幌延伸は2031年春の開業を目指して工事が進められていました。しかし、工事には遅延が生じていて、回復が難しく、予定通りの開業は絶望的になりました。 新たな開業予定時期は示されていませんが、うまくいって2034年春ころで、もう少し後ろ倒しになる可能性もありそうです。 途中、長万部や倶知安までの先行開業を唱える動きもありますが、長万部以南のトンネル工事にも遅れがでているので、そうした形での部分開業も難しいでしょう。 札幌~旭川間については、現時点ではまったく白紙です。札幌開業後に議論されることでしょう。 【参考資料アーカイブ】 『「収支採算性及び投資効果の確認」に関する参考資料』(2012)[PDF] 『北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)再評価報告書(2023)』[PDF]
上越新幹線新宿延伸

上越新幹線新宿延伸

上越新幹線は、東京都と新潟市を結ぶ計画の路線です。大宮~新潟間は開業済みで、すべての列車が東北新幹線に乗り入れて上野駅/東京駅まで走っていますので、事実上全線完成しているといっていいでしょう。 ただ、東京都内の本来の起点は新宿駅とされていて、新宿~大宮間が未開業区間として残されています。この区間の具体的なルートや開業予定時期などは決まっていません。 上越新幹線新宿延伸の概要 上越新幹線は、大宮駅~新潟駅間269.5 km(営業キロ303.6 km)が開業済みです。すべての列車が東北新幹線の東京駅または上野駅発着で、東京駅~新潟駅方面を直通運転しています。 本来の上越新幹線の起点は「東京都」です。埼玉県さいたま市ではありません。そのため建設当初から、上越新幹線は「都心乗り入れ」が検討されてきました。東京都内の上越新幹線の発着駅については、1970年代にさまざまな議論があり、新宿駅がターミナルとなる予定でした。 ただ、東北・上越新幹線が開業した1982年当時は、東京~大宮間の新幹線の線路容量が逼迫していないとして、東北・上越両新幹線が同区間を共用することになり、新宿~大宮間は作りませんでした。以来、40年以上が経ちますが、いまだに新宿~大宮間は、工事計画すらできていません。 北陸新幹線、北海道新幹線と、JR東日本の新幹線路線が延伸するにつれ、東京~大宮間の新幹線の線路容量の問題が浮上し、新宿~大宮間の新幹線建設が根強く話題に上ります。実際に何度も検討されましたが、数千億円が見込まれる建設費がネックとなり、実現に至っていません。   上越新幹線新宿延伸の沿革 上越新幹線は、全国新幹線鉄道整備法に基づき建設する初の新幹線鉄道として、1971年1月に、東北新幹線(東京都~盛岡市)とともに東京都~新潟市間の基本計画が決定しました。同年4月に整備計画が決定され、10月に工事実施計画が申請されました。 当時の計画では、東北新幹線は東京駅に、上越新幹線は新宿駅にそれぞれターミナルを設置し、それぞれ大宮駅に至る路線を建設することが想定されていました。しかし、当時は、東京~大宮間を両新幹線で線路を共用しても容量が足りると予測されたうえ、都心乗り入れは巨費を要するため、大宮以南はとりあえず東北新幹線のみ建設することになりました。 このとき、東北・上越新幹線の都心乗り入れについては、現在の埼京線に並行する「A新幹線ルート」と、東北本線に並行する「B新幹線ルート」の2案がありました。このうち、「A新幹線ルート」が埼京線と同時に建設され、東北新幹線として実現します。上越新幹線の都心乗り入れルートは、東北新幹線と並行する「A新幹線ルート」も検討されましたが、最終的に「B新幹線ルート」が有力だったようです。 「B新幹線ルート」は、東北貨物線を廃止して、その跡地に建設するものです。大宮駅から東北貨物線をたどり、赤羽から池袋を経て新宿に至る形で、現在の湘南・新宿ラインのルートに近い形です。東北貨物線は、武蔵野線の開業後に貨物列車が減少することから、新幹線用地に転用できるという皮算用でした。 東北新幹線は、大宮~盛岡間が1982年6月23日に先行開業し、1985年3月14日に上野~大宮間、1991年6月20日に東京~上野間がそれぞれ開業します。 一方、上越新幹線は1985年11月15日に大宮~新潟間が開業したものの、新宿~大宮間については、国鉄の経営悪化や分割民営化が議論されるなか、棚上げされます。上越新幹線の建設用地として想定されていた東北貨物線も、湘南新宿ラインとして通勤列車が運転されるようになり、いまさら新幹線に転用するのは困難になっていました。   その後、1988年に長野新幹線(北陸新幹線)の建設が決まった段階で、東京駅のホームが逼迫することから、上越新幹線の新宿駅乗り入れ計画が再検討されました。このときは、上記の「B新幹線ルート」を地下でたどる案が検討されています。しかし、建設費が7,000億円に達することから断念され、東京駅の新幹線ホームを増設することになりました。 2004年12月の政府与党申し合わせで、北海道新幹線新青森~新函館間の着工と北陸新幹線長野~金沢間のフル規格着工が決定すると、再び新宿~大宮間の新幹線計画が浮上します。このときは、自民党内で検討され、建設費6,000億円強と試算されました。 しかし、運営するJR東日本が建設に積極的な姿勢をみせなかったこともあり、新宿乗り入れ案は実現しませんでした。 今後、北海道新幹線の札幌延伸や、北陸新幹線の大阪方面への延伸が行われると、東京~大宮間の線路容量はさらに厳しくなります。2016年には、当時の麻生太郎財務相が「東京~大宮間がいっぱいだ。もう一本(線路を)引くのを計算しないと話は成り立たない」述べるなど、この区間の建設構想は、いまも根強く残っています。   上越新幹線新宿延伸のデータ 上越新幹線新宿延伸データ 営業構想事業者 未定(JR東日本) 整備構想事業者 未定 路線名 上越新幹線 区間・駅 新宿~大宮 距離 27.4km(在来線営業キロ) 想定輸送密度 -- 総事業費 -- 費用便益比 -- 累積資金収支黒字転換年 -- 種別 未定(第一種鉄道事業) 種類 新幹線鉄道 軌間 1,435mm 電化方式 交流25,000V 単線・複線 複線 開業予定時期 未定 備考 全国新幹線整備法 上越新幹線新宿延伸の今後の見通し 整備新幹線の議論が湧き上がるときに、浮かんでは消えるのが、上越新幹線の新宿~大宮間の建設構想です。東北・北海道・山形・秋田・上越・北陸の新幹線を、東京~大宮間の複線だけで対応するには無理がある、という指摘は、古くからありました。 しかし、本当に東京~大宮間の新幹線がパンクするなら、上越・北陸新幹線の一部列車を大宮発着にすればいいだけの話、という冷めた指摘もあります。実際、東北・上越・北陸新幹線は、大宮からの利用客も多いので、それで何とかなるのかもしれません。 建設費が6,000億~7,000億円規模の新線というのは、事業化に向けて強く運動する組織がなければ実現しませんが、その役割を期待されるJR東日本にも熱意が見受けられません。地元の埼玉県や東京都にとっては人ごとですし、東北・上越新幹線の沿線自治体も、費用負担をしてまで建設を求めることはないでしょう。 こうしたことから、建設への議論はなかなか進みません。一方で、必要性はたしかに認められる路線なので、今後もしばらくは「未成線」として話題に浮かんでは消える、ということを繰り返しそうです。
北陸新幹線新大阪延伸地図

北陸新幹線新大阪延伸

北陸新幹線は、東京都と大阪市を北陸経由で結ぶ新幹線です。高崎~金沢間が開業し、金沢~敦賀間が2024年3月16日に開業しました。残る未開業区間は敦賀~新大阪間で、着工に向けた準備が進められています。 北陸新幹線は、最終的には、東京~金沢~新大阪間の路線となります。ただし、東京~高崎間は、東北・上越新幹線と線路を共用します。 北陸新幹線新大阪延伸の概要 北陸新幹線は、高崎駅~敦賀駅間470.6km(実キロ)が開業済みです。敦賀~新大阪間はルートが決定したのみで、着工時期や開業時期は未定です。 敦賀以西には、東小浜付近、京都、松井山手付近、新大阪に駅ができます。いずれの駅も在来線駅と併設される予定です。 東小浜付近の駅は、東小浜駅の西約1kmの小浜線との交点付近に設置します。京都駅は「東西案」「南北案」「桂川案」の3案がありますが、「東西案」「南北案」は京都駅に接着し、「桂川案」は桂川駅に接着します。 松井山手付近の駅は松井山手駅と接着します。新大阪駅は東海道新幹線の南側地下にできる予定です。   概算事業費と費用便益比 北陸新幹線の敦賀~新大阪間は「整備新幹線」として整備が進められています。 整備新幹線は、鉄道・運輸機構(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が新幹線施設を建設・保有し、営業主体であるJRに対して施設を貸し付ける枠組みです。貸付を受けるJR西日本は受益の範囲内で鉄道・運輸機構に貸付料を支払います。 北陸新幹線の敦賀~新大阪間の建設費(工事費)は、東西案が3.7兆円、南北案が3.9兆円、桂川案が3.4兆円となっています。物価上昇を加味した金額は、それぞれ5.3兆円、5.2兆円、4.8兆円です。 京都駅の工期は、東西案が28年、南北案が20年、桂川案が26年です。新大阪駅の工期は25年です。そのため、全線開通までの工期は、東西案が28年、南北案が25年、桂川案が26年となります。 北陸新幹線の新大阪延伸の費用便益比や収支採算性は公表されていません。   並行在来線問題 整備新幹線は、開業後、並行在来線がJRから切り離されるルールです。ただし、敦賀~新大阪間の並行在来線がどこになるかは、いまのところ明らかにされていません。 特急並行線区と考えれば湖西線が該当しますが、移管には滋賀県の同意が必要となります。滋賀県は同意しないでしょうから、湖西線を並行在来線とした場合、北陸新幹線の新大阪延伸は着工できません。そのため、湖西線を並行在来線にすることはなさそうです。 あり得るとすれば、小浜線の敦賀~小浜間でしょうか。ただ、並行在来線は並行する特急運行線区とする場合が多いので、小浜線も該当しないと受けとめることもできます。いずれにしろ、並行在来線問題は不透明です。 北陸新幹線新大阪延伸の沿革 長野開業まで 1970年に全国新幹線鉄道整備法が制定され、1973年に北陸新幹線の整備計画の決定と建設が指示されました。区間は東京都~大阪市間で、途中、高崎、長野、富山、金沢を経由するものです。 当時は、東北、上越、成田の3新幹線に続く次期建設路線とされていましたが、オイルショックや国鉄の経営悪化の影響を受けて着工は見合わせとなり、1982年9月24日に、北陸新幹線を含む整備新幹線全線の着工凍結が閣議決定されました。 1987年1月30日の閣議決定で着工凍結が解除された後、1988年8月に、運輸省が建設費を削減した暫定整備計画案を発表します。このときは、高崎~軽井沢間がフル規格、軽井沢~長野間がミニ新幹線、糸魚川~魚津間と高岡~金沢間がスーパー特急方式という内容でした。 なお、スーパー特急方式による高岡~金沢間は、並行在来線の経営分離区間を短縮したいとの地元の意向により、後に建設区間を石動~金沢間に変更しています。 1989年に高崎~軽井沢間が着工。1991年に長野市が1998年のオリンピック開催地に決定したことから、軽井沢~長野間もフル規格に変更となりました。高崎~長野間は、1997年10月1日に開業しています。 金沢延伸開業まで 長野~金沢間は、1992年8月に石動~金沢間、1993年10月に糸魚川~魚津間がスーパー特急として着工。1996年12月には、長野~上越間がフル規格で建設することが政府与党合意で決まり、1998年3月に着工しています。 さらに、2000年12月の政府与党申し合わせにより長野~富山間のフル規格一括整備が決定し、2001年5月に着工。そして、2004年12月の政府与党申し合わせで、長野~富山~金沢間のフル規格一括整備が決まり、2005年4月に富山~金沢間で着工しています。 このように、北陸新幹線は何度も政治的な合意を繰り返した結果として、長野~金沢間のフル規格化を達成し、2015年3月14日に開業しています。 敦賀延伸開業まで 金沢~敦賀間については、2008年12月に金沢~福井間と敦賀駅部を2009年末までに認可することで、政府・与党が合意します。しかし、2009年に政権交代すると、民主党新政権はこれを撤回します。 その後の議論を経て、野田政権が2011年12月に「整備新幹線の整備に関する基本方針」を決定し、金沢~敦賀間の建設方針が固まりました。2012年6月に金沢~敦賀間の工事実施計画が認可され、8月に着工しました。 この時点では2025年度開業の予定でしたが、その後、自民党が政権を奪回すると前倒しを検討、2022年度末(2023年春)の開業に変更されました。しかし、工事の遅延で延期となり、2023年度末(2024年春)開業目標に後ろ倒しされました。結局、敦賀まで開業したのは2024年3月16日です。 新大阪延伸へ 残る敦賀~新大阪間に関しては、「米原ルート」「湖西ルート」「小浜ルート」の3案が並立し、ルート決定がなかなか進みませんでした。 事態打開を狙うJR西日本が、2015年に「小浜・京都ルート」という新案を提言。与党の建設推進プロジェクトチームがこれを受け入れる形で、2016年12月に敦賀駅~小浜市~京都駅に至る「小浜・京都ルート」が決定しました。 この段階では京都~新大阪間のルートが未決定でしたが、2017年3月に京都駅~松井山手付近~新大阪駅に至る「南回りルート」を選択。敦賀~小浜~京都~松井山手~新大阪というルートに決定しました。 小浜・京都ルートの建設費は2兆1,000億円、想定工期は15年と概算されました。しかし、2029年8月に詳細駅位置とルートを公表した際に、3兆4,000億円~3兆9,000億円、想定工期は25年~28年と、大幅に上振れすることが明らかになっています。   北陸新幹線新大阪延伸のデータ 北陸新幹線新大阪延伸データ 営業構想事業者 JR西日本 整備構想事業者 鉄道・運輸機構 路線名 北陸新幹線 区間・駅 敦賀~新大阪 距離 144km(京都駅南北案) 想定輸送密度 40,400人キロ 総事業費 3兆9,000億円(京都駅南北案9 費用便益比 -- 累積資金収支黒字転換年 -- 種別 第一種鉄道事業 種類 新幹線鉄道 軌間 1,435mm 電化方式 交流25,000V 単線・複線 複線 開業予定時期 未定 備考 全国新幹線整備法 ※データは「北陸新幹線京都〜新大阪間のルートに係る調査」(2017)及び「北陸新幹線(敦賀・新大阪間)詳細駅位置・ルート図(案)」(2024) 北陸新幹線新大阪延伸の今後の見通し 北陸新幹線の敦賀~新大阪間は、最新の試算で工期が25年以上かかることが明らかになっています。調査後、すぐに事業着手しても、開業は2050年代になります。 京都駅南北案を採用すれば、京都駅までの工期は約20年とやや短いので、敦賀~京都間の暫定開業を目指す可能性もあるでしょう。その場合でも、京都開業は、早くても2040年代後半になります。 予算の問題もあります。整備新幹線建設の財源は限られていて、直近の予算のほとんどは北海道新幹線札幌延伸に使われています。北陸新幹線新大阪延伸に予算が振り向け可能になるのは、北海道新幹線札幌開業後となります。 札幌延伸開業は2030年代半ばとみられていますので、そこから工事を本格的に始めるとなると、新大阪開業は2060年ごろになるかもしれません。 それではあまりにも遅すぎるので、何らかの予算措置が講じられる可能性はあるでしょう。とはいえ、現時点で決まっていることは何もありません。 事業着手が決まった以上、北陸新幹線の敦賀~新大阪間は、いずれ開業するとは思われます。ただ、それがいつになるか、明確に示すことはできません。
西九州新幹線マップ

西九州新幹線

西九州新幹線は、福岡市と長崎市を結ぶ整備新幹線です。博多~新鳥栖間は九州新幹線として開業済みで、武雄温泉~長崎間も2022年9月23日に開業しました。残る未開業区間は新鳥栖~武雄温泉間ですが、着工に向けた準備は進んでいません。 なお、西九州新幹線は、かつては「長崎新幹線」や「九州新幹線長崎ルート」「九州新幹線西九州ルート」などと呼ばれたこともありますが、現在は「西九州新幹線」の名称が定着しています。当記事でも「西九州新幹線」で統一します。 西九州新幹線新鳥栖~武雄温泉間の概要 西九州新幹線は、博多~新鳥栖間26.3km(営業キロ28.6km)と武雄温泉~長崎間66.0kmが開業済みで、新鳥栖~武雄温泉間が未着工です。 武雄温泉駅は、新幹線と在来線特急が対面で乗り換えられるホームが整備され、同じホームで乗り換えが可能です。この設備を利用して、武雄温泉で新幹線と在来線を乗り継ぐ「リレー方式」により、博多~長崎間を結んでいます。 本来は、フリーゲージトレイン(軌間可変電車)を投入して、博多~新鳥栖~武雄温泉~長崎を直通運転する計画でした。しかし、フリーゲージトレインの開発が頓挫して、リレー方式に変更されました。   新鳥栖~武雄温泉間の整備計画は示されていません。国と長崎県は、標準軌複線の「フル規格新幹線」の導入に前向きです。フル規格新幹線の場合、新鳥栖~武雄温泉間に高速新線を建設し、途中駅として佐賀駅を設けるのが基本的な構想です。江北に駅を設ける案もあります。 2021年度の国交省の調査によりますと、フル規格で佐賀駅を通るルートを建設する場合、博多~佐賀間が20分(現行35分)、新大阪~佐賀間が2時間44分(現行3時間13分)、博多~長崎間が51分(現行1時間20分)、新大阪~長崎間が3時間15分(現行3時間58分)で結ばれるとしています。 ただし、地元の佐賀県はフル規格新幹線の導入に消極的です。導入によるメリットが小さく、費用負担が重いためです。整備新幹線は地元自治体の合意と費用負担が前提のため、佐賀県が消極的である以上、フル規格新幹線建設の見通しは立っていません。 フル規格新幹線以外では、国交省が2018年にミニ新幹線の試算を明らかにしています。「単線並列」、「複線三線軌」の2つのパターンを検討しましたが、工期が長いほか、整備後のダイヤに影響が生じるといった課題があります。複数軌間を併用してのミニ新幹線にはメンテナンスの課題があり、JR九州が消極的です。 そうした事情もあり、ミニ新幹線案は採用されず、現在はフル規格新幹線に絞って議論がおこなわれています。 概算事業費と費用便益比 2021年度の国交省の調査によりますと、佐賀駅を経由するフル規格新幹線を整備する場合の概算事業費は約6,200億円。想定工期は12年、費用便益比は3.1、収支改善効果は年86億円と試算されました。 上記の調査では、佐賀市北部を経由するルート、佐賀空港を経由するルートも記されています。その場合の評価は下表の通りです。いずれも途中駅は一駅の想定ですが、決定したことではありません。 さかのぼる2018年の国交省の調査では、フル規格で新鳥栖~佐賀~武雄温泉を作った場合、事業費は約5,300億円、工期は約12年と見積もられていました。ミニ新幹線では単線並列が約500億円で約10年の工期、複線三線軌の場合は約1,400億円の約14年です。 費用便益比はフル規格が3.3、単線並列が3.1、複線三線軌が2.6となっていました。   並行在来線 整備新幹線は、開業後、並行在来線がJRから切り離されるルールです。しかし、西九州新幹線の新鳥栖~武雄温泉間の並行在来線がどこになるかは、いまのところ明らかにされていません。 佐賀県の強硬姿勢をみて、JR九州は、並行在来線の移管をしないことも検討しているようです。九州新幹線が開業した際に、鹿児島線博多~八代間は移管されていませんので、同様の扱いになる可能性が高そうです。 ただ、現時点では並行在来線の議論には至っておらず、扱いは不透明です。 西九州新幹線の沿革 短絡ルートの決定まで 1970年に全国新幹線鉄道整備法が制定され、1972年に九州新幹線長崎ルートとして福岡市~長崎市間の基本計画が公示されました。1973年には九州新幹線長崎ルートを含む、整備新幹線5路線の決定と建設の指示がなされました。 しかし、オイルショックや国鉄の経営悪化の影響を受けて着工は見合わせとなり、1982年9月24日に、九州新幹線を含む整備新幹線全線の着工凍結が閣議決定されました。ただ、計画の検討は進められ、1985年1月に、九州新幹線長崎ルートの経路について、国鉄が早岐経由とすることを公表しました。 1987年1月30日の閣議決定で整備新幹線の着工凍結が解除されましたが、JR九州が長崎ルートについて「早岐経由では収支改善効果は現れない」と意見を表明(1987年12月)して停滞します。運輸省が1988年8月に示した暫定整備計画案でも、九州新幹線長崎ルートの着工は盛り込まれませんでした。 こうした事態を受け、早岐経由とされていた当初ルート案の見直しが行われ、嬉野経由に変更して距離を短縮し、建設費の圧縮を図る案(短絡ルート)が浮上。1992年にJR九州が武雄市から諌早市・大村市を経由して長崎市に至る短絡ルートについて、スーパー特急方式の収支試算結果を公表します。 その後、地元自治体などで構成する九州新幹線長崎ルート建設促進連絡協議会も、短絡ルートによるスーパー特急方式を地元案として合意しました。この時点で、武雄温泉、新大村を経由する現ルートの骨格が固まったわけです。 スーパー特急方式での着工 スーパー特急方式というのは、在来線特急(狭軌)が高速新線に乗り入れる形を指します。フル規格ではなく、在来線の高速化で整備する方針となったわけです。 1998年2月に、日本鉄道建設公団が武雄温泉~新大村(仮称)間の駅・ルートを公表。10月には環境影響評価に着手し、この区間のスーパー特急方式での建設に向け準備が進みます。 2000年12月の政府与党申し合わせを受けて、2001年12月に同区間の暫定整備計画が決定され、2002年1月8日には、鉄建公団が武雄温泉~長崎間の工事実施計画をスーパー特急方式で認可申請しました。 2004年12月の政府与党申し合わせでは、武雄温泉~諫早間をスーパー特急方式で着工し、その際にフリーゲージトレインによる整備を目指すことが取り決められました。 しかし、並行在来線となる長崎線肥前山口~諫早間の沿線自治体が在来線の経営分離に強硬に反対し、整備新幹線着工の条件の一つである「並行在来線の経営分離への沿線自治体の合意」が達成されず、着工は先送りとなります。 事態打開のため、JR九州が譲歩し、2007年12月に、JR九州と佐賀、長崎両県は、肥前山口~諫早間の全区間をJR九州が継続して運行することで合意。新幹線開業後の同区間の赤字は、JR九州と両県が20年間負担することになりました。 それでも鹿島市は反対を続けましたが、並行在来線の経営分離が行われないことにより「沿線自治体の合意」が不要になったとして、2008年3月に、武雄温泉~諫早間の工事実施計画が認可され、4月28日に着工しました。 フル規格で長崎までの建設に この時点では、建設区間は「諫早まで」でした。しかし、長崎までの整備を求める声は根強く、2008年12月16日に、長崎駅部を2009年末までに認可する方向で政府・与党が合意。しかし、2009年の政権交代で未着工の整備新幹線についてが、いったん白紙に戻ってしまいます。 民主党政権での議論の後、2011年12月に「整備新幹線の整備に関する基本方針」が決定され、武雄温泉~諫早~長崎間が「一体的な事業」として整備されることになりました。佐世保線肥前山口~武雄温泉間を複線化し、軌間可変電車(フリーゲージトレイン)方式(標準軌)により「諫早・長崎間の着工から概ね10年後に完成・開業する」との方針が決定しました。フル規格による武雄温泉~長崎間の建設が決まったわけです。 これを受け、2012年6月12日に、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が長崎ルート武雄温泉~長崎間の工事実施計画を国土交通省に認可申請。6月29日に認可され、フル規格による武雄温泉~長崎間が着工。博多~武雄温泉間はフリーゲージトレインで乗り入れることになりました。開業予定は2022年度末頃と決められています。 フリーゲージトレインの頓挫 フリーゲージトレインの開発も進められました。2014年4月に、フリーゲージトレインの第三次試験車両での性能確認試験を開始します。 しかし、同年12月に車軸に摩耗などが発生し、試験が中断。これにより、2022年度末の武雄温泉~長崎間の開業時にフリーゲージトレインを全面導入することは困難になり、2016年3月、国や長崎、佐賀両県など関係6者は「リレー方式」で2022年度に開業させることで合意しました。 フリーゲージトレインは、2016年12月に検証走行試験を実施したものの、ふたたび車軸に磨耗が見つかってしまいます。2017年7月14日、国土交通省は、2022年度の長崎ルート暫定開業時に、フリーゲージトレインの先行車両を導入することができないことを認めました。 同7月25日には、JR九州の青柳俊彦社長が、与党の整備新幹線推進プロジェクトチーム(与党PT)の会合で、「フリーゲージトレインによる運営は困難」と述べ、長崎新幹線へのフリーゲージトレイン導入そのものを断念することを明らかにしています。 与党PTでは、新鳥栖~武雄温泉間の整備方法を再検討。2018年3月30日に開かれた会合で、国交省が「九州新幹線(西九州ルート)の整備のあり方について(比較検討結果)」を報告し、対面乗換開業時・FGT・ミニ新幹線(単線並列と複線三線軌の2パターン)・全線フル規格の試算を公表しました。 与党PTは、2018年7月19日の会合でフリーゲージトレインの導入を正式に断念し、2019年8月にはフル規格で整備すべきとの方針を決定しています。 ただし、佐賀県はフル規格の建設方針に一貫して反対。与党PTのほか、国交省やJR九州、長崎県を交えた協議もおこなわれてきましたが、これまでのところ合意に至っていません。   西九州新幹線新鳥栖~武雄温泉間のデータ 西九州新幹線新鳥栖~武雄温泉間データ 営業構想事業者 JR九州 整備構想事業者 鉄道・運輸機構 路線名 西九州新幹線 区間・駅 新鳥栖~武雄温泉 距離 約50km(佐賀駅ルート、フル規格) 想定輸送密度 -- 総事業費 6200億円(佐賀駅ルート、フル規格) 費用便益比 3.1 収支改善効果 約86億円/年 種別 第一種鉄道事業 種類 新幹線鉄道 軌間 1,435mm 電化方式 交流25,000V 単線・複線 未定 開業予定時期 未定 備考 全国新幹線整備法 ※データは2021年九州新幹線西九州ルートに関する「幅広い協議」の資料(国土交通省鉄道局)より。 西九州新幹線新鳥栖~武雄温泉間の今後の見通し 西九州新幹線の新鳥栖~武雄温泉間は、全区間が佐賀県です。しかし、その佐賀県が新幹線建設をする気がありません。整備新幹線は「地元が要望して、費用の一部を負担する」というスキームです。西九州新幹線の場合、地元が要望しておらず、費用負担にも難色を示している以上、建設することは難しいでしょう スキームを変更するか、何らかの特例を設ける方法も考えられます。しかし、新幹線ができれば在来線特急が廃止また削減されます。佐賀県は、低価格で利用できる在来線特急の廃止による利便性低下も懸念しているため、新幹線を迷惑に感じている気配すらあります。こうなると、建設費負担の話だけではなくなりますので、「金で解決する」ことも難しいといえます。 ということで、現時点で、西九州新幹線新鳥栖~武雄温泉間に着工の見通しはありません。国が新たなスキームを考案できるかにかかっているといえそうです。
日ハムボールパーク新駅

北海道・東北地方の新駅

北海道・東北地方の新駅設置計画をまとめました。ある程度設置が具体化してきた新駅を中心に、位置や開業予定時期をご紹介します。 JR千歳線「日ハムボールパーク新駅」 千歳線・上野幌-北広島間(北海道北広島市)。プロ野球球団の北海道日本ハムファイターズが、新本拠地としているきたひろしま総合運動公園に隣接する新駅です。正式駅名は未定です。2023年を予定する球場開設にあわせた開業をめざすと報じられましたが、当面は北広島駅の拡張で対応し、新駅設置は延期となりました。 2023年2月には、JR北海道が資材高騰などの影響で建設費用が当初の計画より4割ほど増加した最大125億円となる建設計画を北広島市に提示。北広島市は合意できず、設計や配線の変更も含め工費の圧縮をJRに求めました。 これを受け、新駅位置を少しずらして建設する案をJR北海道が提示。建設費は約3割圧縮した85~90億円となりました。北広島市がこれを受け入れ、2023年10月26日に建設で合意。開業予定は2028年夏です。
村岡新駅

関東地方の新駅

関東地方の新駅設置計画をまとめました。ある程度設置が具体化してきた新駅を中心に、位置や開業予定時期をご紹介します。 JR東海道線「村岡新駅」 JR東海道線・大船-藤沢間(藤沢市)。1985年に廃止された湘南貨物駅跡地の新駅計画です。住所は藤沢市村岡東で、TSUTAYA村岡店付近です。 整備費用は155億円です。請願駅なので、基本的には神奈川県、藤沢市、鎌倉市が費用負担をします。2018年12月27日に県と両市が費用負担に合意。県が30%、2市がそれぞれ27.5%ずつ、JR東日本が15%を負担します。2021年2月8日に、駅設置が正式決定しました。 「村岡新駅」は仮称で、正式駅名は未定。2019年度に新駅概略設計に着手し、2020年1月に事業実施の決定を最終判断しました。2024年5月20日に「工事等の施行に関する協定書」を締結。同年秋に着工です。JRは施工期間を約8年としており、開業は2032年ごろを想定しています。 東葉高速線「東海神~飯山満新駅」 東葉高速鉄道東海神~飯山満間。海老川上流地区のまちづくりの一環として、メディカルタウンに新駅を設置。海老川を渡った東側付近です。 ...
上所駅

中部地方の新駅

中部地方の新駅設置計画をまとめました。ある程度設置が具体化してきた新駅を中心に、位置や開業予定時期をご紹介します。 JR越後線「上所駅」 越後線新潟~白山間。上所(かみところ)地区の和合線西跨線橋西側付近に新駅を設けます。対向式2面2線です。既存の地下道を通路とし、ホーム階へのエレベーターを整備。 駅前広場を除いた事業費は約27億円で、請願駅のため全額を新潟市が負担します。 2022年2月7日に新潟市とJR東日本が「越後線白山・新潟間(仮称)上所新駅設置等に関する基本協定」を締結。2025年春の開業を目指します。 駅名は市の意向を踏まえ、JRが決めるという取り決めで、2023年6月1日に「上所駅」と正式に決まりました。1日あたり2,300人(乗降客数4,600人)の利用を想定。 ハピライン福井「しきぶ駅」 武生~王子保間のほぼ中間に設置。紫式部ゆかりの市紫式部公園から、東に約800メートルに位置します。2024年2月8日に、駅名が「しきぶ駅」に決定。2025年春開業予定。 ハピライン福井「福井~森田間新駅」 北陸新幹線開業後の並行在来線に設置予定の新駅。福井~森田間に設置。2022年12月22日に、近町踏切地点が最適という旨の報告書が公表されました。高木町付近で、福井駅の北3.7kmくらいの場所です。詳細は未定です。 名古屋市地下鉄東山線「柳橋新駅」 東山線名古屋~伏見間。構想自体は古くからあり、構造的にも建設できるようになっています。河村市長が2021年の市長選で、改めて建設を公約。調査が進められています。2024年度までに結論を出す予定。
手柄山公園新駅

近畿地方の新駅

近畿地方の新駅設置計画をまとめました。ある程度設置が具体化してきた新駅を中心に、位置や開業予定時期をご紹介します。 JR大和路線「奈良・郡山間新駅」 JR大和路線(関西本線)奈良~郡山間(奈良市)。同区間を高架化し、途中の八条地区(大安寺近く)に新駅を作ります。周辺では奈良市の副都心と位置づける「八条地区プロジェクト」が計画され、新駅はその玄関口となります。 場所は済生会奈良病院の近くです。開業予定は2028年度です。正式駅名は未定。 JR山陽本線「姫路・英賀保間新駅」 山陽本線姫路-英賀保間(姫路市)。同区間にはスポーツ・文化施設が集まる手柄山中央公園があり、市が公園の再整備計画を進めるなかで、設置をJRに働き掛けてきました。同公園の再整備計画案では、ひめじ手柄山遊園がある北西部エリアを2025年度までに整備する目標を掲げており、駅も計画に合わせて開業できるよう、JR西日本に要望しています。 これを受け、JR西日本は2021年1月14日に、駅設置を正式表明。姫路駅から1.8km、英賀保駅から2.8kmの兵庫県姫路市西延末に、相対式ホーム2面2線の駅を設置すると明らかにしました。ホームは12両対応で、旅客上家は6両対応です。橋上駅舎で、エレベーター基(各ホーム1基)を備えます。 開業予定は2026年春。正式駅名は未定ですが、「手柄山公園」などの名称が有力でしょう。   大阪メトロ中央線「森之宮新駅」 JRメトロ中央線の森之宮検車場内に新駅を設置します。あわせて、森ノ宮~森之宮検車場間の側線を営業線として旅客化します。 場所は森之宮検車場の北端付近です。大阪城東部地区の再開発で、大阪公立大学のキャンパスなどが近くに設置されます。 新駅の開業予定は2028年春です。正式駅名は未定。「大阪公立大学前」などの名称が有力でしょう。   JR京都線「島本・高槻間新駅」 JR京都線(東海道本線)島本-高槻間(高槻市)。島本-高槻駅間は約5.3km離れており、京都~大阪間では駅間距離が最も長く、両駅の中間点付近、萩之庄1丁目周辺に新駅を検討しています。イオン高槻店の北200m付近です。 2019年4月以降、高槻市とJRによる勉強会を開催し、新駅設置の可能性を検討しています。市は、道路整備や公共施設の配置などまちづくりについても調査を進めています。開業予定、駅名などは未定です。   阪急神戸線「武庫川新駅」 阪急神戸線武庫之荘-西宮北口間。武庫之荘駅から約1.6km、西宮北口駅から約1.7kmの、武庫川橋梁上に新駅を設置する計画です。武庫川橋梁は2004年に架け替えられましたが、複線の旧橋梁の両側に単線橋梁を配置したため、上下線の間に広い空間があります。新駅はこの空間を活用し、2面2線のホームを設置します。 改札口は武庫川の両岸に設けます。どちらの改札も、歩行者と自転車によるアクセスを基本としていて、駅前広場や周辺道路の整備は当面おこないません。 2021年9月に、兵庫県、尼崎市、西宮市、阪急電鉄の4者で構成する「武庫川周辺阪急新駅に関する検討会」が、事業の具体化に向けて連携した取組みを進めることで合意しました。 2022年11月に、4者が基本合意書に署名し、設置が事実上決まりました。開業目標は2032年です。
琴電新駅

中国・四国地方の新駅

中国・四国地方の新駅設置計画をまとめました。ある程度設置が具体化してきた新駅を中心に、位置や開業予定時期をご紹介します。 高松琴平電鉄琴平線「太田~仏生山駅間新駅」 高松琴平電鉄(ことでん)琴平線の太田~仏生山間に予定されている新駅です。太田駅の南約450mです。東西に貫く県道太田上町志度線(整備中)との交点に作られます。 太田~仏生山間では複線化も予定されており、2026年度完成の予定。複線化とあわせて新駅が同時期にできる見込みです。

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