岡山駅前広場路面電車乗り入れ

岡山駅付近

岡山駅前には、岡山電気軌道の路面電車の停留所があります。この停留所を岡山駅前広場に移設し、JR線との乗り換え利便性を向上させる計画があります。2026 年度末の開業予定です。

岡山電気軌道駅前広場乗り入れの概要

岡山電気軌道の岡山駅前電停は、JR駅ビルから市役所筋を挟んだ東側にあります。ここから軌道を西(駅方向)に約100m延ばし、岡山駅東口駅前広場内に乗り入れさせる形で、駅前広場を整備します。

JRの駅ビル前に、2面3線のホームを備えた電停を新設。JR岡山駅東口を出て電停までの距離は現在の約180mから約40mに短縮します。これにより、JR線からの乗り換えを36秒に短縮します。

現在の岡山駅前電停は東西に2カ所のホームを備えますが、これを東側(現降車ホーム)に集約し、西側(現乗車ホーム)とともに地下街と接続する階段を廃止します。東側ホームは通常の電停として存続します。

岡山駅路面電車乗り入れ
画像:岡山市ウェブサイトより


 

2018年11月22日に、デザイン案が決定。岡山の名所・後楽園をモチーフとしたデザインが採用となりました。

2020年3月13日に特許を交付。開業予定を2023年度として着工しましたが、設計ミスで計画変更が生じ、2022年1月になって、2025年度開業に延期することが明らかにされました。2023年1月10日に本格的な工事に着手しましたが、その後、さらに遅延が発生し、2026年度末に先送りされました。

事業費は当初43億円と見積もられていましたが、2022年に66億円へ上振れ、最終的に94億円(うち軌道部分は11.6億円)となっています。駅前広場整備事業としておこなっているため、路面電車乗り入れに直接的に94億円もかかるわけではありません。補助金として社会資本整備総合交付金を活用しています。

岡山駅路面電車乗り入れ
画像:岡山市ウェブサイトより

 

岡山駅前広場路面電車乗り入れの沿革

岡山駅前広場への路面電車の乗り入れは、大森雅夫市長が1期目就任直後の2013年12月に検討を表明し、計画が動き出しました。交通結節点となる岡山駅の利便性と中心市街地の回遊性を高める狙いとされました。

乗り入れ方法としては、岡山駅構内に接続する「平面乗り入れ」、岡山駅2階の中央改札口に接続する「高架乗り入れ」、駅前電停付近から地下に入る「地下乗り入れ」、現在の岡山駅前電停からエスカレーターなどで2階のJR中央改札を結ぶ「歩行者デッキ連結」の4案が提示されました。

有識者の調査検討会の協議の結果、コスト、利便性などから2015年11月に「平面乗り入れ」が採用されています。

その後、「路面電車乗り入れを含めた岡山駅前広場のあり方検討会」により、バスやタクシー乗り場を含めたレイアウトやデザインを検討してきました。2018年にデザイン案を公募。応募のあった6案のうち、同年11月に「弥田俊男設計建築事務所」の案に決定しました。春日大社の国宝殿増改築で設計デザインに携わるなどの実績がある事務所です。

2018年度のデザイン案決定により、2019年度に詳細設計、2020年度に着工、2023年度の運用開始というスケジュールとなりました。

ところが、2022年1月に、2025年度への開業延期を公表。火災に備えて避難通路を確保することが必要だったところ、建築基準法の認識不足で計画に入れていなかったのが主な要因というお粗末な理由でした。

事業費は43億円から86億円に増える見通しとなり、案内所や大ひさし、植栽などを中止して事業費を66億円に圧縮することになりました。このため、採用されたデザイン案も、一部変更となりました。

さらに、2023年8月には、移転の補償などに時間がかかり、開業が2026年度末となることが明らかになりました。事業費もさらに上振れし、最終的に94億円になる見通しです。

岡山駅前広場路面電車乗り入れのデータ

岡山駅前広場路面電車乗り入れデータ
営業構想事業者 岡山電気軌道
整備構想事業者 岡山市
路線名 東山線
区間・駅 岡山駅付近
距離 0.1km
想定利用者数 約10,800人/日(岡山駅電停の想定乗降者数)
総事業費 約94億円(軌道部分は11.6億円)
費用便益比 1.07
累積資金収支黒字転換年 3年
種別 軌道事業
種類 軌道
軌間 1,067mm
電化方式 直流600V
単線・複線 複線
開業予定時期 2026年度末
備考 社会資本整備総合交付金

※データは主に岡山電気軌道の軌道事業の特許申請資料(2018年)より。最新情報は岡山市ウェブサイトより。

岡山駅前広場路面電車乗り入れの今後の見通し

岡山駅前広場路面電車乗り入れは、2020年3月に特許が交付され、工事が始まりました。2020年度に着工し、2022年度中の工事完了、2023年度の運用開始を目指しましたが、2026年度に延期となりました。ただ、遅れが生じるにせよ、実現は間違いない状況です。

岡山の路面電車では、環状化などの延伸構想もありますが、それについては全くの白紙です。

【参考資料アーカイブ】
岡山電気軌道からの軌道事業の特許申請1』[PDF]
岡山電気軌道からの軌道事業の特許申請2』[PDF]