アストラムライン(広島高速交通)は、広島市中心部の本通から、大町、長楽寺を経て広域公園前駅まで18.4kmを営業している新交通システムです。これをさらに延伸し、JR西広島駅を経て本通に至る環状線を形成する計画があります。
JR西広島駅までの延伸は「西風新都線」として事業化が決定しており、さらに平和大通りを経て本通に至る区間は将来構想となっています。西広島までの延伸開業時期は平成40年代初頭(2028年頃)を予定していましたが、2036年度頃に後ろ倒しになりそうです。
アストラムライン西風新都線の概要
アストラムラインの延伸計画は、現在の終点である広域公園前駅から、五月が丘団地、石内東開発地を経由し、己斐中央線の全線を通り、西広島駅に接続するものです。延伸区間は「新交通西風新都線」と名付けられ、路線延長は約7.1kmです。
6駅を新設します。広域公園前~石内東開発地までに3駅、その先2駅を導入空間となる己斐中央線に設置します。残る1駅は西広島駅です。
2019年2月5日の広島市議会都市活性化対策特別委員会で詳細な駅位置やルートが公表されました。それによりますと、五月が丘1、五月が丘2、石内東、己斐上、己斐中、西広島の各駅(いずれも仮称)を設けます。石内東は、ジ・アウトレット広島に隣接します。
西風新都線は単線で建設し、各駅に交換設備を設けます。高架部分が5.6km、トンネル1.5km。途中に最急勾配5.9%という急勾配区間があります。区間の表定速度は27kmです。
需要予測と費用便益比
利用者数は、事業化決定時には約15,200人(2030年度)と予測され、建設費は570億円と試算されました。しかし、2024年に見直され、約9,100人、約760億円に修正されています。
費用便益比は2015年公表の資料で1.3とされています。2024年見直し後の数字は明らかではありません。
アストラムライン延伸の沿革
アストラムラインは、開業当初から延伸が想定されていて、当初の計画では、草津沼田道路を導入空間として、新井口方面への延伸が予定されていました。しかし、西風新都と広島中心部を直結する路線として、JR西広島駅延伸が議論されるようになりました。
広島市が正式にアストラムラインの延伸計画を示したのは1999年11月です。このとき公表された「新たな公共交通体系づくりの基本計画」において、広域公園前駅から西広島駅までの区間を「新交通西風新都線」と位置付け、おおむね15年後の完成を目指す第Ⅰ期事業化区間としました。
さらに、西広島駅から平和大通りなどを経由し広島駅までの区間を「新交通東西線」、本通駅から広大跡地付近までの区間を「新交通南北線」として位置付け、西広島駅から白神社前交差点を経由し本通駅までの区間を第Ⅱ期事業化区間とし、残る区間を第Ⅲ期事業化区間としました。また、五日市、商工センター方面などへの延伸についても、将来、ネットワーク化する可能性のある発展方向と定義しています。
このうち、西広島駅まで延伸する「新交通西風新都線」の整備が最優先とされ、2001年1月策定の「広島市都市計画マスタープラン」や、2009年10月策定の「第5次広島市基本計画」に盛り込まれています。ただ、広島市の財政が厳しいうえに、アストラムラインの経営も不振が続き、延伸事業化にはなかなか至りませんでした。
そんななか、アストラムラインは2012年に初めての営業黒字を計上。2015年6月に、広島市は、西風新都線の西広島延伸を事業化させることを正式に発表しました。
同時に、これまでⅢ期事業化区間とされてきた「新交通東西線」及び「新交通南北線」の広島駅~白神社前交差点~広島大本部跡地前の廃止を決め、西広島~本通間だけが計画として残されました。この区間は「新交通都心線」と名付けられ、西風新都線整備後に事業化が改めて検討されます。
新型コロナ禍などによる社会環境の変化を受け、2024年3月に開業予定を後ろ倒しを発表しました。新たな開業予定は2036年度ごろとされています。事業費は3割増の約760億円となり模様です。。
アストラムライン西風新都線のデータ
営業構想事業者 | 広島高速交通 |
---|---|
整備構想事業者 | 未定 |
路線名 | 西風新都線 |
区間・駅 | 広域公園前~西広島 6駅新設 |
距離 | 7.1km |
想定利用者数 | 約9,100人/日 |
総事業費 | 約760億円 |
費用便益比 | 1.3 |
累積資金収支黒字転換年 | — |
種別 | 不明 |
種類 | 案内軌条式鉄道 |
軌間 | — |
電化方式 | 直流750V |
単線・複線 | 単線 |
開業予定時期 | 2036年度ごろ |
備考 | — |
※費用便益比は2015年公表の試算。
アストラムライン延伸の今後の見通し
アストラムラインの延伸については、広域公園前駅~石内東までの区間を「西風新都線」という形で部分開業することが構想されています。当初、開業時期は平成30年代後半とされており、2025年頃と見込まれていました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で事業スケジュールを見直し、2024年3月に開業予定を後ろ倒しを発表しました。新たな開業予定は2036年度頃です。また、事業費は3割増の約760億円となる模様です。
西広島から平和大通りの地下を走り本通へ至る区間の開業時期は見通せません。開業すれば、全線が循環系統となって便利ですが、開業するにしても相当先となりそうです。
【参考資料アーカイブ】
『アストラムライン延伸の事業化について(2015)』[PDF]