志賀高原・横手山リフトが民事再生。「日本一のスキー場」経営難の理由を考える

エリア券導入と噴火が影響?

志賀高原の「横手山・渋峠スキー場」でリフトなどを運営する横手山リフト株式会社が、民事再生手続きに入ったことがわかりました。日本最高標高に位置し、パウダースノーで知られるスキー場が、なぜ経営難に陥ったのか考えてみます。

広告

日本で一番高いスキー場

長野県・志賀高原スキー場は18あるスキー場の総称で、「横手山・渋峠」はその一部です。志賀高原全体では最東部に位置し、群馬県と県境を接します。最大標高は2,307メートルで、志賀高原でもっとも標高の高いエリアです。

日本でもっとも標高が高いスキー場は、中央アルプスの千畳敷スキー場ですが、ここには簡易リフト(Tバー)しかありません。着座式常設リフトのあるスキー場としては、横手山・渋峠スキー場は日本で最も高い位置にあります。

つまり、標高において横手山・渋峠は「日本一のスキー場」です。質の高いパウダースノーでロングシーズン楽しめるゲレンデとして知られてきました。

横手山スキー場
写真:photolibrary

負債額5億6000万円

横手山・渋峠スキー場のリフトやスカイレーター(歩く歩道)、食堂、展望台、売店などを運営するのが横手山リフト株式会社です。リフトは、横手山第1~第6までの6区間7線と、渋峠第1ロマンスリフトとをあわせた計8線を運営しています。

帝国データバンクによりますと、同社は2018年6月28日に民事再生法の適用を長野地裁に申請、翌29日に保全命令・監督命令を受け、7月9日に再生手続き開始決定を受けました。負債額は約5億6000万円です。

2000年5月期には年収入高約4億2000万円を計上していたものの、その後は業績が伸び悩み、設備投資に伴う借入金負担が収益を圧迫していたそうです。

また、渋峠は草津白根山に近いことから、噴火の影響もあったとみられます。草津温泉から渋峠を経て志賀高原に至る国道292号(志賀草津道路)は、草津白根山の噴火警戒レベルが高いため、現在も通行規制が続いています。

広告

カルテル警告も影響か

このほか、志賀高原のカルテル問題が、横手山リフトの経営に影響を及ぼした可能性もあります。

志賀高原18スキー場の運営は6社に分かれています。志賀高原索道協会が全山共通のリフト券を発行していて、これを買えば志賀高原18エリアの全てを滑れます。このほか、いくつかの区域ごとにエリア券が販売されています。

以前は、各スキー場運営会社が個別のエリア券を勝手に発売することはできませんでした。志賀高原索道協会により制限されていたからです。これがカルテルにあたるとして、2014年2月に公正取引委員会が、志賀高原索道協会に対し独占禁止法違反(事業者団体による競争制限)で警告しました。

その後、各スキー場運営会社がエリア券を自由に発売するようになっています。志賀高原全山リフト券は1日5,000円ですが、焼額山や中央エリアでは、エリア1日券が4,500円、横手山・渋峠では3,600円と、手頃な価格です。

エリア券解禁前は、値段の高い全山券の利益を各スキー場で分け合うことができました。しかし、エリア券が解禁されると、価格の安いエリア券を、各スキー場運営会社が競いながら販売しなければなりません。

推測ですが、このエリア券解禁が、横手山リフトの経営に不利に働いた可能性もありそうです。そこに、草津白根山の火山活動が、追い打ちをかけたのかもしれません。

リフトは運行中

現在は夏山シーズンで、横手山においては、スカイレーターとスカイリフトが営業を行っています。今回の民事再生手続きで、リフトが停止したり、スキー場が閉鎖されたりすることは、今のところ起きていないようです。

志賀高原スキー場の2018-2019シーズンのプレオープンは11月17日が予定されています。横手山・渋峠スキー場も、変わらぬ営業が続けられるよう、願いたいところです。(鎌倉淳)

広告