山形新幹線はどう変わるか。新型車両導入、福島駅改良に着手。新トンネル計画も

最高速度は300km/hに

JR東日本が、山形新幹線の変革に乗り出します。新型車両E8系を導入し、福島駅のアプローチ線建設にも着手。新トンネル計画も温めています。

この記事は「山形新幹線はどう変わるか。新型車両導入、福島駅改良に着手。新トンネル計画も」(2020年2月18日公開)を改訂したものです。

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E3系を更新

山形新幹線を現在走っているのはE3系。最高速度275km/hで、東京~山形間を最短2時間26分、東京~新庄間を最短3時間11分で結んでいます。

山形新幹線用のE3系は1999年の新庄延伸時に初投入され、現在最も古いのは1000番台の2005年製。主力となっている2000番台も2010年までに製造されたもので、更新期を迎えています。

こうした状況を受け、JR東日本は、山形新幹線向けの新型車両E8系を2024年春をめどに投入します。最高速度320km/hキロの秋田新幹線E6系をベースに、最高速度を300km/hに抑えた車両です。先頭形状は新デザインとして、ノーズがE6系の13mより短く、9mになっています。

E8系
画像:JR東日本プレスリリース

東北新幹線を300km/hで

JR東日本としては、E3系を順次E8系に置き換えて、東北新幹線区間を最高速度300km/hで走らせる、ということです。

山形新幹線「つばさ」の多くは、東北新幹線内で「やまびこ」と併結して走ります。その「やまびこ」は320km/h対応のE5系に置き換わってきています。

つまり、数年後には、「E5系+E8系」の「やまびこ+つばさ」が東北新幹線(宇都宮~福島間)を最高速度300km/hで走ることになります。

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新型車両の注目点

この発表で注目すべき点は、E8系がE6系をベースにしながら、最高速度が320km/hではなく300km/hで、先頭ノーズを短くしている点です。E6系よりも最高速度を抑える代わりに、先頭ノーズを短くしているわけです。

E6系は先頭ノーズが長いため、先頭車の座席定員が少なくなっています。E6系の先頭車両の普通車は32席で、E3系2000番台の52人に比べて4割も少なくなっています。つまり、E6系をそのまま山形新幹線に投入した場合、編成定員が減ってしまいます。車両数を増やせればいいですが、ホーム長の制約があります。

先頭車両の定員減を避けるためには、先頭ノーズを短くすればいいわけです。そのためには最高速度を抑えるのが有効です。それが最高速度300km/hのE8系の開発の意味でしょう。

E8系の編成定員は普通車329名、グリーン車26名の計355名。E3系の394名(普通車371名、グリーン車23名)より減るものの、E6系の330名(普通車308名、グリーン車22名)よりは多くなっています。先頭ノーズを短めにとって速度を抑えたことで、先頭車の定員をE6系より多く確保しました。

E8系グリーン車
画像:JR東日本プレスリリース

E8系普通車
画像:JR東日本プレスリリース

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速度差を許容

E8系が300km/h以上で運転できるのは宇都宮~福島間146kmに過ぎませんし、「やまびこ・つばさ」のほとんどの列車は、途中の郡山にも停車します。そのため、E5系との多少の速度差は許容する、ということなのかもしれません。

そうした事情がなければ、山形新幹線も秋田新幹線と同じE6系に揃えた方が効率的と思いますが、定員減は許容できず、ホーム延伸もできないなか、新たな形式を作るほかない、ということなのでしょう。

アコモデーションとしては、E8系は普通車・グリーン車ともコンセントを全席に備えます。車内Wi-fiも装備。大型荷物スペースを全車両に設置し、スーツケースも置けるようになります。車椅子スペースは1編成あたり普通車に2席、グリーン車に1席です。

E8系の製造数は、7両編成を17編成(119両)です。車両は2022年9月以降落成し、2026年春までに17編成すべてが置き換わる予定です。

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福島駅の改良工事

山形新幹線関連では、このほか、福島駅の線路構造を変える大規模改良工事にも着手し、駅周辺で用地買収の作業に入っています。

福島駅の配線改良については、長年の懸案なので、ご存じの方も多いと思います。現状の福島駅では、山形新幹線が上下線とも東北新幹線下りの14番線ホーム1本で運用しているため、上り「やまびこ」との併結作業をする場合、渡り線で下りの東北新幹線本線と2回平面交差することから、運行ダイヤ作成に制約が生じています。また、降雪で遅れが生じやすい冬期間は、ダイヤ乱れの原因ともなってきました。

このボトルネックを解消するには、山形新幹線(奥羽線)から東北新幹線上り線ホームに直接到達できるアプローチ線を新設しなければなりません。しかし、用地取得や路線形状の問題があり、難題でした。

用地買収に着手

この問題について、JR東日本は昔から改良を検討してきました。ニュースイッチ2019年02月05日付によりますと、JR東日本は「3次元モデルを使った線形検討を行い、道路、新幹線との立体交差や急勾配、急カーブがあり、難工事だが実現可能との結論を出した。事業性が判断できれば、詳細設計に移行するもよう」と報じています。

そして、E8系開発発表と同時に、JR東日本は、福島駅配線改良工事についても発表しました。在来線と東北新幹線上り線ホームを直接乗り入れできる新たなアプローチ線を建設し、山形新幹線の発着ホームが上下線で分離されることになります。すでに、駅周辺で用地買収の作業に入っているとの報道もあります。

福島駅アプローチ線建設
画像:JR東日本プレスリリース

福島駅上りアプローチ線建設
画像:JR東日本プレスリリース

福島駅アプローチ線建設は、北海道新幹線の札幌延伸を控えた、東北新幹線の高速化を支える側面があります。JR東日本では、新型車両「ALFA-X」を投入して、最高速度360km/hでの営業運転を目指しています。そのためには、福島駅のボトルネック解消が欠かせないため、懸案の解決に踏み出した、ということなのでしょう。

福島駅アプローチ線の供用開始は、2026年度末の予定。北海道新幹線札幌延伸開業予定の2030年に間に合うタイミングです。

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板谷峠新トンネル

山形新幹線の高速化で、残る最大の課題は、福島~米沢間の板谷峠を抜ける新トンネル建設です。JR東日本は、2015年に新トンネルの計画について調査し、結果をまとめています。

新トンネルの建設構想区間は奥羽線の庭坂~関根間で、全長23.1kmです。事業費は1,500億円で、フル規格新幹線対応の大口径トンネルにした場合は、さらに120億円がかかります。実現した場合、東京~山形間が約10分短縮されます。

新トンネルについては、山形県もJR東日本も建設に前向きです。したがって、いずれ建設される可能性は高いですが、事業費が巨額すぎて、実現の見通しは立っていません。(鎌倉淳)

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