上野動物園の「新たな乗り物」のシステムが決まりました。詳細は明らかにされていないものの、ジェットコースターの原理を利用した「エコライド」のようです。
モノレールの代替交通機関
東京都の上野動物園には東園と西園があり、両園間をモノレールが結んでいました。しかし、車両の老朽化などで2019年10月限りで休止となり、2023年に廃止されています。
東京都ではモノレールに代わる「新たな乗り物」を整備することを決め、企画提案を公募。その結果が、このほど公表されました。
選定されたのは、「ジェットコースターと同様の構造を利用した脱輪の心配のない高い安全性の乗り物」で、「上り勾配ではモーター駆動で、下り勾配では条件により位置エネルギーを利用して走行する省エネシステム」です。
ジェットコースターの技術を発展
東京都は選定企業名や、システム名などの詳細は公表していませんが、内容的には、泉陽工業が東京大学生産技術研究所などと共同開発した「エコライド」を想起します。
泉陽工業のウェブサイトによりますと、エコライドは「ジェットコースターの技術を公共交通システムに発展させたもの」です。開発初期には「位置エネルギー利用のハイブリッド省エネ型エコライドシステム」と称されていました。
泉陽の紹介文と、東京都発表の表現に一致点が多いことから、上野動物園の「新たな乗り物」は「エコライド」の可能性が高そうです。
10mの巻き上げで400mを走行
「ジェットコースターの技術」とは、モーターで巻き上げて高い位置に登り、そこから勾配を下っていく仕組みを指します。「エコライド」では、10mの巻き上げで約400mの走行が可能で、安全性も確立しています。
車両側には駆動モーターやブレーキを持たず、車両の動きを全て地上側から操作します。車両が軽量なため、基礎構造も安価にでき、建設費を抑制できます。
ルートはどうなる?
東京新聞2024年3月29日付けによりますと、ルートは旧モノレールとほぼ同じで、車両は2両編成の60人乗り。つまり約300mの区間に、定員30人の2両編成が走ることになります。
ルートの詳細は明らかにされていませんが、東京都が設定している整備エリアは以下のピンク色の部分です。
整備エリアは細長いですが、エコライドは周回軌道が基本で、単線往復はできません。そのため、起点と終点をループ状にする形での複線に近い路線になるのでは、と予想します。一部は不忍池の上空を走るかもしれません。
普及に向けて
内装デザインの例として示されているイラストでは、座席がロングシートの形状で並びます。軽快に利用できそうなイメージです。
選定にあたって評価されたのは、「現況の地形に合わせたルート設定となっており、かつルートに適した車両の形式である」「混雑時の動線やバリアフリー等について十分に配慮されている」「緊急時の応急体制等が確立されている」「既存樹木への影響に配慮されている」などの点です。
エコライドはこれまで実験線を走行したことはありますが、公共交通機関としての採用例はありません。正式採用となれば初めてのことで、普及の第一歩になりそうです。(鎌倉淳)