上野動物園が「小型モノレール」導入検討。有力候補はあの会社?

ひょっとしてあの会社?

東京都が上野動物園の東園と西園を結ぶ新たな輸送機関の導入を検討します。小型モノレールを想定していますが、それ以外の乗り物の可能性も探ります。

広告

マーケットサウンディング調査を実施

上野動物園では、1957年にできた懸垂式モノレールが東園と西園を結んでいました。しかし、老朽化のため2019年に運行を終了。車両更新を検討したところ、部品の入手が困難などの理由で、最終的に廃止という判断になっています。

東京都では、廃止されたモノレールにかわり、東園と西園を結ぶ新たな輸送機関を検討することを以前から明らかにしていました。これについて、2022年2月24日に、上野動物園の乗り物などの整備運営に関する「マーケットサウンディング調査」をおこなうと発表しました。

上野動物園モノレール

動物園の魅力を向上

マーケットサウンディング調査とは、民間事業者との意見交換などを通し、事業に対してさまざまなアイデアや意見を把握する調査です。

今回の調査は、上野動物園で新たな乗り物の導入を検討するにあたり、民間事業者に参入意欲や事業イメージをたずね、事業効果や実現可能性の高い事業実施につなげることが目的です。

調査実施要項によりますと、「上野動物園の名物として60年以上親しまれ続けてきたモノレールの歴史を継承しつつ、動物園全体の魅力を向上させる、幅広い事業」の提案を募集します。

広告

小型モノレールを想定

募集しているのは「東園と西園を行き来する新たな乗り物」の、車両、軌道、駅舎などの整備と、維持・運営についての提案です。「新たな乗り物」は小型モノレールを想定していますが、それ以外の提案も可能としています。ただ、既存モノレールと同等以上の輸送能力を備えることが条件です。

乗り物の工事や運行に当たっては、近接する飼育動物への配慮が必要とのことです。具体的には、西園に新設された「パンダのもり」の近くを通ることから、大きな音や揺れの生じる乗り物は認められない、ということでしょう。

ちなみに、廃止されたモノレールの運行実績は、以下の通りです。

・1日当たり平均運行本数:120回程度
・1日当たり最大運行本数:160回程度
・1時間当たり平均乗車人数:500人程度
・1時間当たり最大乗車人数:820人程度

毎時820人は、たとえば30人乗りの小型バスなら毎時27~28本程度で運べます。14往復とすれば4~5分間隔で達成できます。

既存モノレールの総延長は330mでしたので、速度はそれほど出なくても問題なさそうです。

上野動物園新モノレール
画像:東京都
広告

既存モノレールの保存も

東京都は、このほか、「新たな乗り物と一体に運営する収益施設」や「既存モノレール施設の活用」についてもアイデアを募集します。

前者は駅舎併設の施設や、車両や駅舎を活用するアイデアです。後者は、既存モノレールの車両や駅舎、軌道などの活用方法です。

東京都によると、既存モノレール施設は全て撤去することを想定していますが、現状のまま存置したり、車両など一部を移設して活用するアイデアも募集するということです。

嘉穂スロープカー?

以上が、東京都の調査の概要です。

小型モノレールを前提とするならば、候補として真っ先に思いつきそうなのが、嘉穂製作所の「スロープカー」でしょう。さまざまなタイプの斜面走行モノレールが、国内130箇所で稼働しています。たとえば、下の英彦山スロープカーは、40人乗りの2両編成です。

嘉穂スロープカー
画像:嘉穂製作所(英彦山スロープカー)

上野動物園で廃止されたモノレールの40形の編成定員が62名でしたので、嘉穂スロープカーなら、それと同程度以上の輸送力は確保できそうです。

そのほか、音の静かな電気バスなども候補に挙がりそうです。提案範囲が東園・西園の全体に及ぶので、軌道を必要としない乗り物のほうが効果的という見方もありそうです。

実際に、どのような提案がなされて、どういう形に収まるのかは、現段階ではわかりません。

なんであれ、新たな乗り物が上野動物園に導入され、思い出の詰まる既存モノレールの遺構や車両が多少なりとも保存されるのであれば、これほど喜ばしいことはありません。(鎌倉淳)

広告
前の記事西九州新幹線「リレー方式」はいつまで続くのか。9月23日に部分開業するけれど
次の記事ローカル線、輸送密度2000人以下で法定協議か。国交省「地域モビリティ検討会」資料を読み解く