「としまえん」に行ってみよう。私鉄系遊園地にレトロな魅力

入園料もお手頃

大型テーマパーク全盛の日本ですが、昔ながらの遊園地は減っています。とくに私鉄系の遊園地は数えるほどになりました。その一つ、「としまえん」に行ってみました。

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レジャーの王様だった

昭和末期から平成初期の日本には、全国に遊園地がありました。鉄道会社も沿線に遊園地を作ったり誘致したりして、レジャー客を呼び寄せたものです。庶民にとって、遊園地は日曜日のレジャーの王様でした。

しかし、バブル崩壊後、昔ながらの遊園地は数を減らしています。東京ディズニーリゾートやユニバーサルスタジオジャパンといった限られた大型テーマパークが隆盛を極める一方で、日本全国の公園・テーマパーク数は減少傾向。

経済産業省の「特定サービス産業実態調査」によると、1997年に271か所あった遊園地・テーマパークは、2017年には129か所となっています。20年で半分以下にまで減少したわけです。

主な遊園地の閉園を調べてみました。

1999年9月 小田急御殿場ファミリーランド
2000年3月 沖縄エキスポランド
2000年4月 さやま遊園
2000年5月 到津遊園
2002年2月 横浜ドリームランド
2002年3月 向ヶ丘遊園
2002年3月 小田急向ヶ丘遊園
2003年1月 伏見桃山城キャッスルランド
2003年3月 甲子園阪神パーク
2003年4月 宝塚ファミリーランド
2004年6月 近鉄あやめ池遊園地
2005年2月 小山ゆうえんち
2006年8月 奈良ドリームランド
2009年2月 エキスポランド
2006年3月 神戸ポートピアランド
2009年9月 多摩テック

閉園はしていないものの、業態変換している施設もあります。結果として、昔ながらの遊園地というのは、だいぶ少なくなっています。

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私鉄系列の遊園地

かつては私鉄各社が乗客誘致のために、競って遊園地を郊外に設立しました。しかし、その多くは、すでに閉園しています。

私鉄系列の郊外型遊園地で現存しているものを探しても、限られています。

・としまえん(西武鉄道)
・西武園(西武鉄道)
・東武動物公園(東武鉄道)
・日本モンキーパーク(名古屋鉄道)
・ひらかたパーク(京阪電鉄)
・みさき公園(南海電鉄)

このなかで、「としまえん」は1926年の開園。「ひらかたパーク」(前身の香里遊園地が1910年開園)に次いで、2番目に長い歴史を誇ります。

としまえん

ライド系が豊富

前置きが長くなりましたが、いまや貴重な存在となりつつある「私鉄系遊園地」で、唯一東京23区内にあるのが「としまえん」。池袋から西武池袋線・豊島線に乗り15分ほどで到着します。9月の連休中に訪れてみました。

鉄道会社系列の遊園地だからか、「としまえん」のアトラクションにはライド系が豊富です。

まずは、としまえんのシンボル「カルーセルエルドラド」。

1907年にドイツ・ミュンヘンで造られた歴史的な回転木馬です。1971年に「としまえん」に移設され、2010年、日本機械学会により 「機械遺産」 に認定されました。

カルーセル・エルドラード

そして「模型列車」。600mmゲージという珍しい軌間の遊覧鉄道です。機関車は米チャンス社製で、アメリカ大陸横断鉄道Southern Pacific鉄道の1号機『C.P.HUNTINGTON』を模したものです。製造年は不明ですが、かなり古そうです。

乗車時間は4分以上あり、ゆっくり楽しめます。

模型列車

「スカイトレイン」も、人気ライドの一つ。高架を走る遊覧鉄道です。こちらは輸送力がやや乏しく、ゲートに近い立地からか、待ち時間は長めです。といっても20分程度ですが。

スカイトレイン

新登場の運転系ライド

「としまえん」で最も話題のライドといえば、「チャレンジトレイン」でしょうか。2017年9月に登場したミニ鉄道です。

利用客がマスコンとブレーキハンドルを操作して、電車を運転できます。軌間は520mmで、一周約180mのコースには踏切や駅、鉄橋、信号が設けられています。途中、加速や停車をしながら、3分程度で1周します。

大宮の「鉄道博物館」の「ミニ運転列車」と同じような乗り物です。連休中でも20分程度並べば乗れたので、整理券方式の鉄道博物館よりは、乗りやすそうです。

チャレンジトレイン

アンチックカー

「アンチックカー」も魅力的なライドです。1966年に設置されたクルマのアトラクションで、軌道の上を自動で走るシンプルな遊戯施設です。

昔の遊園地の乗り物って、こんなに素朴だったのか、と体感できます。

アンチックカー
画像:としまえんウェブサイトより

最新の運転系ライドから、昔ながらの「遊園地の乗り物」が楽しめるのが、「としまえん」の特徴の一つでしょう。

他にもジェットコースターなどたくさんのアトラクションがありますが、「としまえん」全体では、幼児から小学校低学年までのライドが充実しています。デパートの屋上遊園にあるような、200円程度で走るミニライドも散在していました。

アトラクションの数は豊富ですが、正直、レトロ感漂う施設が多いのも事実。古びた建物のデザインに昭和の残り香を感じられるのも、「としまえん」の特徴です。それを「魅力」と受け止めるかどうかは、人によるでしょう。

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リーズナブルな遊園地

「としまえん」は、実にリーズナブルな遊園地です。

入園料は大人1,000円、こども500円。のりものフリーパスが付いた「のりもの1日券」(以下1日券)は大人4,200円、こども3,200円です。この価格だと、とくに安いとは感じられませんが、実際は割引制度が豊富です。

まず、「キッズ1日のりもの券」(以下キッズ券)という、幼児・低学年向けライドに限ったチケットがあり、大人2,900円、子ども2,400円。小さな子どもを連れたファミリーなら、これだけで十分遊べます。

さらに、11月末までの平日は「スーパーウィークデー」と題して、「1日券」が大人2,200円、子ども1,200円の割引価格。「キッズ券」は大人1,700円、子ども1,000円と格安です。

親子4人で合計5,400円。どこかのテーマパークの大人1日券より安く、遊べてしまうわけです。

3連休でも大幅ディスカウント

週末でも割引があります。筆者が訪れたのは9月の3連休ですが、「秋のアメリカンフェスティバル」と題して、1,100円引き。「キッズ券」なら大人1,800円、子ども1,300円とお手頃です。

割引対象日は9月15日(土)~17日(祝)と9月22日(土)~24日(休)。つまり、3連休でも一家4人で6,200円と、大幅ディスカウントをしているのです。

筆者は連休中に子ども連れで訪れてみましたが、この価格で子どもを丸1日、思う存分遊ばせられるのは助かります。

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決算は22万円の赤字

「としまえん」の経営状態はどうなのか、と運営会社である株式会社豊島園の2018年3月期決算公告を見てみると、純利益はマイナス22万円。つまり22万円の赤字です。利益剰余金は2,632万円に過ぎません。

帝国データバンクによりますと、親会社にあたる西武鉄道HDの「沿線レジャー業」の収入高は、2017年度で207億円。「西武園」と「としまえん」などをあわせた数字です。「としまえん」のプールの収入も含まれているでしょう。

オリエンタルランドの4,065億には遠く及ばず、富士急行(富士急ハイランド)の275億円、長島観光開発(ナガシマスパーランド)の260億円の後塵を拝します。よみうりランド(201億円)とほぼ互角でしょうか。

東京都が閉園計画?

2011年には、東京都が「としまえん」を含む一帯を「練馬城址公園」として再整備する方針を掲げ、土地買収に乗り出すことが明らかになりました。「としまえん」の閉園を前提とした計画ですが、西武側は土地の売却を否定。その後、この話の進展は報じられていません。

園内は、お世辞にも「景気がいい」雰囲気はなく、前述したようにレトロな施設が多いです。ファミリーには適した遊園地ですし、中高生が小遣いで遊ぶにもいいですが、カップルがデートで訪れる場所にはなりにくいかもしれません。インバウンドを取り込むのも、簡単ではなさそうです。

しかし、むせかえるような人出に呑まれることもなく、のどかにアトラクションを楽しめるのは、老舗遊園地ならではの魅力です。低価格で、小さな子でも遊びやすい、ファミリーの味方。鉄道駅から徒歩0分とアクセスも抜群。秋の行楽シーズンに、一度訪れてみてはいかがでしょうか。(鎌倉淳)

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