東京BRTが第2次プレ運行に移行しました。本格運行まであと1年と迫るなか、豊洲・有明方面まで拡大した路線に乗車してみました。
3路線を運行
「東京BRT」は、都心と臨海部を結ぶBRT(バス高速輸送システム)です。停留所などを東京都が整備し、京成バスと同社子会社の東京BRTが共同で運行しています。
2020年10月に、虎ノ門ヒルズ~新橋~晴海BRTターミナル間で第1次のプレ運行(暫定運行)を開始しました。
つづく第2次のプレ運行として、2023年4月1日より3ルートでの運行を開始。4月28日に増便して、運行体制を充実させました。
第2次プレ運行のルートは以下の3路線です。
(1) 幹線ルート
新橋~国際展示場・東京テレポート
(2) 晴海・豊洲ルート
虎ノ門ヒルズ・新橋~豊洲・ミチノテラス豊洲(豊洲市場前)
(3) 勝どきルート
新橋~勝どきBRT
「幹線ルート」の東京テレポートへの運行は土休日のみです。平日は国際展示場止まりです。
10分間隔に
日中時間帯の運行体制は、幹線ルートと晴海・豊洲ルートが20分間隔の交互運行となっています。これにより、両ルートが重なる新橋~勝どき間は10分間隔の頻繁運行となりました。
幹線ルートは日中全便が新橋~国際展示場間を運行。晴海・豊洲ルートは、毎時3本のうち2本が豊洲折り返し、残る1本がミチノテラス豊洲まで行きます。つまり、豊洲~ミチノテラス間は60分間隔です。
勝どきルートは、ラッシュピーク時に走るのみ。幹線ルートの東京テレポート行きは土休日に1日6本が設定されているだけで、試験運行の域を出ません。
晴海・豊洲ルートに乗車
前置きが長くなりましたが、5月中旬の平日午後に、まずは虎ノ門ヒルズから乗ってみました。晴海・豊洲ルートのミチノテラス豊洲行きです。
虎ノ門出発時には7人ほどの乗車ですが、日中なのでこんなものでしょう。
虎ノ門ヒルズから新橋駅までは、第1次プレ運行と変化はなく、信号にひっかかりながら進みます。そのため、一般の路線バスと変わらず、「高速輸送システム」を謳うBRTの印象はありません。
新橋から本領発揮
新橋で乗客が増え、十数人になります。ここからが、東京BRTの本番です。
新橋を出発し、信号を2つ越えると、環状2号線の「築地虎ノ門トンネル」に入ります。このトンネルの開通により、新橋~勝どき間が2~3分短縮されました。
実際に乗ってみると、本当にあっという間です。
トンネルを抜け、築地大橋の上に躍り出て隅田川を越えると、もう勝どき。新橋から5分ほどで着いてしまいました。
「BRT」らしい速さを実感します。
豊洲でほぼ全員が降車
勝どきで乗客の4割くらいが降りました。さらに朝潮運河を越えて晴海に入ります。
第1次プレ運行では終点だった晴海BRTターミナルは、途中停留所になり、道路上に移転しました。晴海トリトンの近くです。ここで残った乗客の半分が降車します。
旧晴海鉄道橋を右手に見ながら、豊洲に到着。ここで残ったほぼ全ての乗客が降りました。
そのまま乗り続けたのは、筆者と同じ「試し乗り」とおぼしき人たちだけです。
ミチノテラス豊洲
豊洲からの道路の流れがよく、終点のミチノテラス豊洲には定刻より少し早く到着。新橋からの所要時間は約25分です。
ミチノテラス豊洲はバスターミナルが整備されていて、わずかですが空港行きの高速バスも発着します。そのため、設備はしっかりしています。
ただ、バスターミナルは、じつに閑散としています。
BRTが毎時1本しか乗り入れないのは、利用者が見込めないからでしょう。
それでも乗り入れているのは、バスターミナルを作ったから使わなければという、政治的な理由からではないか、という気もします。
豊洲市場バス停は隣接
ミチノテラス豊洲のバス停から、幹線ルートの豊洲市場前のバス停はすぐです。下りは徒歩1分、上りは道路を渡るので3分くらいでしょうか。
豊洲市場の停留所は、道路上にぽつんと置かれています。上屋もベンチもなく、「BRT」の特別感はありません。
少し待って、幹線ルートの上り便で、新橋に戻ります。
豊洲市場から乗ったのは筆者含め2名。途中の勝ちどきで数名の乗車がありました。途中乗車では、乗客一人一人が運転席で運賃を支払うので、どうしても時間がかかります。
数名なら問題ありませんが、ラッシュ時は停車時間が長くなりそうです。運賃収受は、本格運行に向けた課題でしょう。
幹線ルートで
新橋から、幹線ルートで国際展示場に向かいます。夕方の通学時間帯にさしかかり、中高生の乗客が多く、やや混雑しています。
先ほどと同じく、築地虎ノ門トンネルであっという間に勝どきに着き、半分ほどが降車。ここから晴海を抜けて、一気に豊洲市場前に。ここでも数人が降りました。
次の有明テニスの森では、子連れのファミリーがベビーカーを引きながら降りていきます。利用時に上下移動の少ないBRTは、空いていれば地下鉄よりも子連れに優しい乗り物です。
高速湾岸線を渡って、終点国際展示場到着。りんかい線の駅前のロータリーに発着します。
ロータリーの中央には、連節バスが停車しており、日中の留置場所にもなっているようでした。
臨海アクセス改善
全体を乗り通しみて、新橋~勝どき間でトンネルが開通した効果はやはり大きく、都心から臨海エリアへのアクセスがだいぶ改善した印象です。
新橋~有明間なら、ゆりかもめより速いので、とくに便利になりました。
印象的だったのは、地下鉄大江戸線も併走している新橋~勝どき間の利用者が、思っていた以上に多かったことです。
大江戸線の汐留駅は新橋駅から離れていること、地下鉄の上下移動を嫌う人が少なからず存在することが理由でしょうか。新橋~勝どき間に関しては、汐留駅まで歩いて地下鉄に乗るよりも、BRTのほうが速いからかもしれません。
「急行バス」程度
「速さ」を実感した東京BRTですが、実際のところ、現状の速さは、道路事情の良さと、停留所の少なさが理由にも感じられます。
辛口に表現すれば、一般路線バスの「急行バス」程度の話で、「高速バスシステム」を謳うほどの革新性を見いだせるのかは何ともいえません。
バス停留所も、一般路線バスとほとんど変わりありません。途中停留所に上屋もベンチもなく、シンボル性にも乏しいというのが実感です。
運賃収受方法を改善
現状の東京BRTは「プレ運行」という位置づけで、本格運行には至っていません。本格運行時が始まるのは2024年春の予定です。
東京都の事業計画によると、本格運行時には運賃収受方法を変更し、乗車券を停留所などで事前販売したうえで、全トビラ乗車とする予定です。
課題である運賃収受方法を改善して停車時間を短縮し、公共交通優先施策もあわせて、表定速度向上を図るわけです。最終的には、LRTや新交通システム並みの速さを目指すそうです。
停留所を「駅」に
停留所も改善します。上屋を設置し、ベンチや情報案内板、券売機の設置も検討します。プラットホームをかさ上げして、バリアフリーにも配慮するそうです。
事業計画では、停留所について「地域の生活拠点となるよう『駅』としての機能・構造にします」と意気込んでいます。
東京BRTが、これまでの路線バスと一線を画した「新たな交通システム」として認知されるには、速度に加え、停留所設備の使いやすさも大切でしょう。
本格運行まであと1年。どういう形に整備されるのか、期待したいところです。(鎌倉淳)