根室線富良野~新得間の廃止方針が固まりつつあります。国鉄時代に特急が走行した線区の廃止は過去に例がきわめて少なく、時代の変遷を感じさせます。
石勝線開通で特急撤退
根室本線は滝川~根室間443.8kmを結ぶ長大路線です。かつては道央と道東を結ぶ幹線として機能していて、滝川~釧路間を、函館からの特急「おおぞら」が走っていました。
しかし、1981年に石勝線が開通すると、滝川~新得間は道東への幹線ルートの役割を譲り、特急列車の定期運行がなくなりました。滝川~富良野間は「フラノエクスプレス」が不定期で走るものの、富良野~新得間は不定期特急の運行区間からも外れています。
このうち東鹿越~新得間は2016年の台風で被災し、現在に至るまで復旧していません。JR北海道は、同区間を含む富良野~新得間について廃止方針を表明。地元は抵抗したものの、1月28日に廃線を最終的に受け入れる方針で合意しました。実際に廃止されれば、国鉄時代に特急が走っていた区間が廃止されることになります。
過去には信越線も
国鉄の「特急走行線区」で廃止された区間が、過去に例がないわけではありません。1997年の北陸新幹線開業時に、並行在来線となった信越線の横川~軽井沢間が第三セクターに移管されず廃線となりました。
信越線横川~軽井沢間は「新幹線」という新たな特急走行ルートができたため廃止されました。その点、石勝線の開通で特急走行ルートから外れ廃止に至る根室線富良野~新得間と、似た側面があります。
とはいえ、県境の一駅間が廃止された信越線と異なり、根室線は80kmに達する距離が廃止されるので、規模が違います。
函館線も候補
北海道では、もう一つ、廃止候補の国鉄「特急走行線区」があります。函館線長万部~小樽間です。かつては特急「北海」が函館~旭川間を結んでいました。しかし、北海道新幹線の札幌延伸にともなう並行在来線に指定されていて、廃止を含めた議論がおこなわれてきました。
2月3日に開かれた沿線自治体の会合で長万部~余市間の廃止が事実上決定。残る余市~小樽の議論が残された形となっています。
函館線は、函館~長万部間も並行在来線に指定されています。こちらは、いまも特急「北斗」が走る大動脈です。貨物列車も走るため、北海道新幹線開業後に線路がなくなることはなさそうですが、一部区間で旅客廃止の可能性はありそうです。
石北線も心配
廃止方針は示されていないものの、先行きが心配な区間としては石北線も挙げられます。国鉄時代に特急「おおとり」が走り、現在も「オホーツク」「大雪」が運行している道東への主要路線ですが、JR北海道は単独で維持困難としています。地元自治体で維持へ向けた取り組みがあるものの、先行きは見通せません。
同様の路線として宗谷線も挙げられますが、特急「宗谷」は2000年の運行開始で(当時は「スーパー宗谷」)、JRになってからの運行です。
肥薩線も見通せず
存廃が心配な区間といえば、肥薩線も挙げられます。肥薩線には国鉄時代に特急「おおよど」が博多~宮崎間を人吉経由で走っていましたし、近年も「九州横断特急」「いさぶろう しんぺい」などが走っていました。しかし、2020年7年の豪雨被害で被災し、八代~吉松間で復旧のめどがたっていません。
沿線自治体は復旧への費用負担に前向きですが、運行を担当してきたJR九州が慎重な姿勢を示していて、運行再開できるのかは見通せません。
肥薩線には、鹿児島本線の一部として開業したという歴史があります。海沿いの新線が開業して幹線ルートの座を譲りました。その意味では、根室線滝川~新得間と似た歴史をもっています。
国鉄時代の特急列車は走行区間が主要幹線に厳選されていました。それだけに、令和になって廃線が議論されている姿を見ると、時代の流れを痛感せずにはいられません。(鎌倉淳)