鉄道各線が、2019年台風19号で大きな被害を受けました。被害の大きかった路線について、各社が発表した内容や、報道された情報も含めて被害状況をまとめてみます。暫定版の内容を更新して加筆した【改訂版】です。なお、ご利用時にはご自身で最新情報をお確かめください。
北陸新幹線
長野市内を流れる千曲川が氾濫した影響で、北陸新幹線長野車両センターが浸水被害にあいました。留置中の北陸新幹線E7/W7系の10編成、あわせて120車両が水につかりました。10編成の内訳はJR東日本が保有するE7系が8編成で、JR西日本が保有するW7系が2編成です。場所は屋外が7編成、屋内が3編成でした。
北陸新幹線の全車両の3分の1が被害にあったことになります。当分の間、同新幹線は車両不足が避けられない状況となっています。
北陸新幹線の車両は50Hz、60Hzの両周波数対応で、碓氷峠の急勾配を高速で走行できる機能を備えています。そのため、東北新幹線向け車両をそのまま転用することはできません。
また、120両にも及ぶ車両の修理または新造には少なくとも1年程度、状況によってはそれ以上かかるとみられます。したがって、当面、北陸新幹線は運行本数を絞ったダイヤになりそうです。
現在、JR東日本では上越新幹線向けE7系の増備を進めていますが、この増備車両を北陸新幹線用に振り向けることも考えられます。その場合、上越新幹線の車両やダイヤにも影響が及ぶ可能性もあります。
北陸新幹線長野車両センターの機器類も被害にあったとみられますが、詳細はわかっていません。線路は長野~飯山間で冠水した影響で信号装置が被害を受けています。
北陸新幹線は、東京~長野間と、上越妙高~金沢間で折り返し運転をしています。全線の復旧には1~2週間かかるようです。運転再開後も、車両不足により通常の5~6割という減便運行になる見通しです。
中央本線
中央本線の四方津~梁川間において、山の斜面で土砂崩れが発生し、下りの線路上に大量の土砂が流れ込みました。この影響で高尾~大月間で運休が続いていますが、相模湖~大月間は、10月18日に運転を再開する見通しです。
高尾~相模湖間も18日に運転を再開する見通しですが、下り線のみを使用する仮復旧となり、普通列車が1時間に1本程度の運転になる予定です。
全面的な運転再開は10月下旬ごろになる見通しで、それまでは、中央本線の特急「あずさ」「かいじ」「富士回遊」「はちおうじ」「おうめ」はいずれも運転を取りやめます。
両毛線
両毛線では大平下~栃木間で、永野川に架かる鉄橋の橋台の背面が流出する被害が生じています。
その影響で足利~小山間が不通となっていましたが、10月16日から栃木~小山間で2時間に1~2本程度の間隔で運転を再開。足利~岩舟間も20日に運転再開を予定しています。
岩舟~栃木間は河川の堤防工事終了後、1カ月程度を見込んでいるとのことで、長期間の運休となりそうです。
水郡線
水郡線には、複数の橋梁に被害が出ています。袋田~常陸大子間の第六久慈川橋梁で橋桁が流出。朝日新聞によると、西金~上小川間の第二久慈川橋は傾き、磐城浅川~里白石間の第二社川橋にも流出被害が出ているとのことです。
このため、常陸大宮~郡山駅間で運転を見合わせています。NHKによると、常陸大子~郡山間の復旧に1か月かかり、常陸大宮~常陸大子間については、被害が特に大きいため、運転再開の見通しは立っていないということです。
東北本線
東北本線では、新白河~郡山間で路盤流出、郡山~松川間で橋梁盛土流出が生じ、新白河~松川間で運行再開に見通しが立っていません。
藤田~白石間は複数箇所で道床が流出しましたが、10月17日に運転再開予定です。
磐越東線
磐越東線は、郡山~小野新町で橋梁盛土流出、小野新町~いわき間で盛土流出があり、全線復旧の見通しが立っていません。
八戸線
八戸線では、陸中中野駅構内の線路の盛土が崩れるなどの被害が発生。その他にも、階上~久慈間の複数箇所で被害が出ています。デーリー東北によると、八戸線の同区間の運転再開には2カ月程度かかる見通しです。
吾妻線
吾妻線は、土砂崩落などの影響で、長野原草津口~大前間で長期間運転を見合わせます。中之条~長野原草津口間は10月16日から運転再開しており、特急「草津」は全列車運転します。
小海線
小海線は、滑津〜北中込間で鉄橋の一部が損壊するなどの被害が発生したようです。小諸~野辺山間で、当面運転を見合わせます。
飯山線
飯山線は、千曲川堤防決壊の影響で、十日町~豊野間で当面、運転を見合わせます。
箱根登山鉄道
箱根登山鉄道は、土砂崩れによる橋脚流失や電柱崩壊、道路からの雨水流入による道床流出などが発生しました。全線で運休中で、復旧には長期間要するとしています。
東武鉄道
日光線では、静和~新大平下間で線路砕石が流出しました。北鹿沼~板荷間では築堤が崩壊しています。このため、栗橋~栃木間および新鹿沼~下今市間で運転を見合わせています。復旧には相当日数かかる見込みです。
佐野線では、渡瀬~田島間で線路砕石が流出しており、全線で運転を見合わせています。こちらも復旧には相当日数かかる見込みです。
しなの鉄道
しなの鉄道では、大屋~田中間の線路上空の海野バイパス跨線橋が崩落したため、上田~田中間が運休しています。復旧に相当の時間を要する見込みとのことです。
長野~妙高高原間は千曲川堤防決壊により線路や電力設備が冠水したため、安全確認と修繕を行っており、10月18日により長野~豊野間で運転再開予定です。豊野~妙高高原間は、停電の影響により引き続き運休する予定です。
上田電鉄
上田電鉄では、千曲川の堤防の一部が崩れた影響で、上田~城下間の千曲川橋梁が崩落しました。線路の一部も被害にあっており、復旧は見通せません。下之郷~別所温泉間は運転を再開していて、上田~下之郷間はバス代行輸送を行っています。
阿武隈急行
阿武隈急行は計27カ所で土砂崩れや陥没などの被害が発生し、梁川~槻木間が当面運休となる見通し。福島~梁川間は運転を再開しています。
三陸鉄道
三陸鉄道では、リアス線全線で少なくとも63カ所に被害が出ています。とくに、両石~釜石間と織笠~岩手船越間の路盤流失、陸中宇部~久慈間の盛土崩落の被害が大きいということです。全線復旧には1カ月以上かかる見通しです。
東日本大震災以来
台風19号の被害の状況がようやく判明してきましたが、被害は東日本の広範囲にわたっています。これだけの鉄道路線が被災したのは、東日本大震災以来です。三陸鉄道では、大震災から8年を経てようやく復旧したばかりの釜石~宮古間で大きな被害が出てしまいました。
長野地区の被害も深刻で、まだ状況がわからない区間もあるようです。早期の復旧を願ってやみません。(鎌倉淳)