航空会社の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)が急騰しました。今後の見通しとあわせて見てみましょう。
基準価格が17,000円台に
国際線旅客が航空券購入時に支払う燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)について、JALは2023年12~2024年1月発券分で、価格を引き上げることを発表しました。
燃油サーチャージは、燃油市況価格の直近2か月間の平均に基づき算定されます。
JALによりますと、12-1月発券分の基準となるシンガポールケロシンは、直近2ヶ月の市況価格が119.25米ドルでした。また、同期間の為替平均は1ドル146.15円でした。これを乗じた1バレルあたりの基準金額は17,429円となりました。
10-11月発券分は、市況価格94.59米ドル、為替141.20円で、基準金額は13,357円でした。この2ヶ月で、原油価格が26%も高騰し、為替も3%円安に振れています。結果として、基準価格が30%も値上がりしたわけです。
JALの新サーチャージ金額
これにより、JALでは12月1日発券分から燃油サーチャージの価格を一気に4段階引き上げます。ひとり1区間片道あたりの燃油サーチャージは、日本から北米・欧州・オセアニアなどが47,000円に、ハワイ・インドなどが30,500円に、タイ・シンガポールなどが24,700円になります。
これは片道の金額なので、往復の場合、北米・欧州・オセアニアなどが94,000円に、ハワイ・インドなどが61,000円に、タイ・シンガポールなどが49,400円となります。
過去1年の変化を振り返る
燃油サーチャージは、2022年10-11月発券分がピークで、その後は値下がり傾向となり、2023年8-9月発券分を底として上昇に転じています。今回は4段階の急騰で、2022年12-2023年3月分以来の高値となります。
過去1年の燃油サーチャージの変化は下表の通りです。
路線 | 10 -11月 | 12-3月 | 4-5月 | 6-7月 | 8-9月 | 10-11月 | 12-3月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
北米・欧州・中東・オセアニア | 57,200 | 47,000 | 36,800 | 33,400 | 28,800 | 33,400 | 47,000 |
ハワイ・インドネシア・インド・スリランカ | 37,400 | 30,500 | 23,600 | 21,300 | 18,400 | 21,300 | 30,500 |
タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ | 29,800 | 24,700 | 19,600 | 17,900 | 15,000 | 17,900 | 24,700 |
グアム・パラオ・フィリピン・ベトナム・モンゴル | 22,900 | 17,800 | 12,700 | 11,000 | 9,200 | 11,000 | 17,800 |
東アジア(韓国、モンゴルを除く) | 12,900 | 11,400 | 9,900 | 8,400 | 7,100 | 8,400 | 11,400 |
韓国 | 7,700 | 5,900 | 4,100 | 3,500 | 2,900 | 3,500 | 5,900 |
※片道あたり、発券日基準。
最高値の3ランク下に迫る
今回の燃油サーチャージ額は、JALが公表している適用価格表の「ゾーンL」に該当します。前回の「H」より4ランク上です。最高値だった2022年10-11月の「O」の3ランク下にまで近づきました。
ゾーン | 基準価格 | サーチャージ額 |
---|---|---|
A | 6,000円~7,000円 | 4,500円 |
B | 7,000円~8,000円 | 8,900円 |
C | 8,000円~9,000円 | 13,400円 |
D | 9,000円~10,000円 | 17,800円 |
E | 10,000円~11,000円 | 20,200円 |
F | 11,000円~12,000円 | 24,200円 |
G | 12,000円~13,000円 | 28,800円 |
H | 13,000円~14,000円 | 33,400円 |
I | 14,000円~15,000円 | 36,800円 |
J | 15,000円~16,000円 | 40,200円 |
K | 16,000円~17,000円 | 43,600円 |
L | 17,000円~18,000円 | 47,000円 |
M | 18,000円~19,000円 | 50,400円 |
N | 19,000円~20,000円 | 53,800円 |
O | 20,000円~21,000円 | 57,200円 |
今後の見通しは?
最近の原油価格は、産油国の減産や中東情勢の緊迫化で急騰したものの、その後下落に転じています。直近の数字を見ると、基準となるシンガポールケロシンの市況価格は121米ドルで、今回の基準価格の119米ドルから若干の上昇にとどまっています。
一方、為替相場は円安傾向が続いており、149円台で膠着しています。今回の基準価格の146円に比べると2%ほど円安です。
このままの状況で推移すれば、次回の基準価格は今回と近い数字となり、燃油サーチャージの金額も大きく変わらないでしょう。
ただ、中東情勢や、米国の金利動向によっては、原油価格や為替に大きな変動があっても不思議でなく、気がかりな状況が続きます。(鎌倉淳)