東武鉄道が、特急「スペーシア」の新型車両を2023年に導入します。わかっていることをまとめてみました。
東武のフラッグシップ特急
「スペーシア」は東武鉄道100系特急車両の愛称です。バブル絶頂の1990年6月に営業運転を開始し、ゆったりとした車内設備などで人気を博しました。
東武スカイツリーライン・日光線・鬼怒川線の浅草~東武日光・鬼怒川間を「けごん」「きぬ」といった列車名で走り、一部はJR線に乗り入れて新宿にも顔を出します。1991年には鉄道友の会の「ブルーリボン賞」を受賞しています。
100系はシートピッチが1,100mmという、JRのグリーン車並みのアコモデーションが売りもので、東武の「フラッグシップ特急」として君臨してきました。2011年には客室内装のリニューアルを実施。しかし、走行開始以来30年が経過したこともあり、更新について注目が集まっていました。
新型車両を2023年導入
これについて、東武鉄道は、スペーシアの新型車両として「N100系」を24両(6両編成)導入する計画を明らかにしました。N100系は、これまでの「スペーシア」と同様、浅草~東武日光・鬼怒川温泉間で運行します。導入時期は2023年を予定します。
東武鉄道によりますと、N100系は「より上質なフラッグシップ特急」で、車両に乗り込んだ瞬間から「自分だけの最適な日光・鬼怒川エリア」とつながることができ、何度も同エリアを訪れたくなる車両を目指すとのこと。
車両デザインは現在のフォルムを進化させ、日光東照宮陽明門などの「胡粉(ごふん)」を彷彿とさせる白をイメージしています。窓枠は栃木県の伝統工芸である鹿沼の組子や江戸の竹編み細工などをモチーフにしました。
新たな座席タイプも想定
車内設備は、現在も設置している個室を維持。さらに、新たなタイプの座席も想定しています。座席数は212席。ラウンジやカフェカウンターを設置することから、車内販売サービスも提供するようです。
さらに、新型コロナウイルスなど感染症対策として、高度な除菌消臭機能を有する空気清浄機などを搭載します。
環境性能では、現行スペーシアと比べ、CO2排出量を最大40%削減。運行の使用電力相当分は、全て再生可能エネルギー由来の電力に実質的に置き換え、CO2排出量を実質「ゼロ」とします。
製造は日立製作所で、同社が開発したアルミ製標準型車両「A-train」コンセプトにより、山口県下松市の笠戸事業所で製造します。
愛称や車両インテリアなどの詳細は、現時点では未発表です。
定員は大幅減
上記が東武鉄道から公表された内容ですが、わかる範囲で補足してみましょう。
まず6両編成は現行100系と同じです。編成定員は、現行100系が288名ですので、212名ならば76名、約26%も減ります。となると、現行の1,100mmのシートピッチが維持されるかはともかく、窮屈になることはなさそうで、「グリーン車並み」の快適性はそのままでしょう。一部にはソファ席などの導入も検討されているようで、座席のバリエーションが増えそうです。
外観デザインでの注目点は、眺望のよさそうな車両正面。これまでの東武特急は、前面展望を重視しない傾向がありましたが、今回は違うかもしれません。
地下鉄直通はせず?
車両正面に貫通扉が設けられていない様子なのもポイントでしょうか。前面に非常用の扉がないと地下鉄に乗り入れできないので、東京メトロへの直通は考慮されていないことになります。
プレスリリースに、運転区間として「浅草~東武日光・鬼怒川温泉」と明記されていることからも、日比谷線や半蔵門線への直通乗り入れはなさそうです。
導入は24両なので4編成です。現行100系は9編成あるので5編成少なく、当面は現行スペーシアとの併用になりそうです。N100系は2024年以降に増備するようですが、9編成を新造するかはわかりません。
運転区間に新宿が含まれていないことから、最初の4編成は東武線内で運用され、当面、JR直通はしないようです。(鎌倉淳)