昭文社が「海外ガイドブック廃棄」で特損計上。新型コロナで発売断念

情報鮮度が落ちてしまい

旅行ガイドブックを出版する昭文社が、新型コロナウイルス感染症の影響で発売を延期していた海外旅行ガイドブックを廃棄すると発表しました。4700万円の特別損失を計上します。

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商品価値が損なわれ

昭文社は道路地図や旅行ガイドブック『まっぷる』シリーズの発売元として知られる出版社です。新型コロナウイルス感染症の影響で、新規の海外旅行ガイドブックの発売を延期していましたが、これ以上発売時期を見送ると情報鮮度が落ち、商品価値が損なわれることから、発売を中止し、廃棄すると発表しました。その結果、特別損失として4700万円を計上します。

「廃棄」の詳細については明らかにされていません。『まっぷる海外版』の定価は1,000円~1,200円程度(税抜き)なので、出版社の実入りを7割と仮定すると、1冊あたり700円~840円。平均780円として、約6万部分に相当します。「廃棄」を文字通り受け取ると、5~6万部程度のガイドブックを捨てる、ということになります。

ただ、昭文社は、新型コロナウイルス感染症が拡大した後、海外ガイドブックの刊行を全面的に中止してきたわけではありません。刊行実績を見てみると、2020年春から秋にかけてアジアやグアム、ハワイの『まっぷる』などが発売されています。書籍・雑誌は委託販売なので、すでに刷り上がったものは出荷されたとみられ、「廃棄」するのは印刷前の段階のものとみられます。

つまり、取材をおこない、制作を進めていたものの、刊行に至らなかったタイトル分の経費を特損として4700万円計上した、ということなのでしょう。刊行後、売れずに返品を受けた本も多いでしょうから、それらを含めると、海外ガイドブック全体の損失はこれにとどまらないとみられます。

パリ
写真はイメージです

売上高20%減

昭文社が発表した2020年度第3四半期決算では、出版部門を含むメディア事業について、「感染症拡大の影響により、旅やお出かけに関連する消費活動が著しく縮小する中、当社グループの主力出版物の実売が、特に海外旅行関連商品を中心に大幅に減少した上、市販出版物における営業活動も制限を受けることになりました」と説明。

結果として、メディア事業の売上高は21億2000万円となり、12億1500万円の営業損失を計上しています。21億円の売り上げで12億円の損失というのは、相当厳しい数字です。

連結決算は、売上高が対前年度比19%減の45億8200万円。6億5300万円の営業赤字(前期は2億2200万円の赤字)を計上しました。通期でも売上高は64億6000万円で20%減、10億2000万円の営業赤字、11億9000万円の純損失を見込んでいます。

新型コロナウイルス感染症が収束し、海外旅行に自由に行けるようになるには、相当の時間がかかるとみられます。海外ガイドブックは、書店でも棚が縮小されていて、売り上げ回復は当面難しそう。出版社には厳しい局面が続きそうです。

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