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東急新空港線「渋谷~羽田空港」43分で勝負になるか。2040年頃開業へ

営業構想を申請

東急蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶ「新空港線」について、東急が営業構想を申請しました。東横線から多摩川線・新空港線への直通列車が設定され、京急蒲田での乗り換え時間を含めた渋谷~羽田空港間の所要時間は43分くらいになりそうです。

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営業構想を申請

新空港線は、東急多摩川線矢口渡駅から、東急蒲田駅、京急蒲田駅を経て、大鳥居駅に至る鉄道新線計画です。東急・京急の両蒲田駅を結ぶ「連絡線」とも表記されます。

大田区と東急電鉄が出資する第三セクター「羽田エアポートライン株式会社」が整備し、東急電鉄が運行を担います。

第1期の整備区間は東急蒲田駅~京急蒲田駅付近の0.8kmです。あわせて、矢口渡駅~東急蒲田駅間を地下化します。

東急は、2025年1月17日に、国土交通省に対して第1期区間の営業構想を申請。東急多摩川線と新空港線が直通運転を実施するほか、一部列車が多摩川駅から東横線に乗り入れる方針も示しました。

東急渋谷駅から多摩川駅を経て、京急蒲田駅に至る列車が走るということです。

新空港線
画像:東急電鉄プレスリリース
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「自由が丘~京急蒲田15分」の意味

営業構想では、「中目黒~京急蒲田23分」「自由が丘~京急蒲田15分」という想定所要時間も明らかにされました。

現状では、各駅停車で「自由が丘~多摩川4分」「多摩川~東急蒲田11分」です。つまり、「自由が丘~東急蒲田」は、乗り換え時間を含まずに現状で15分です。東急蒲田~京急蒲田間は0.8kmですので、所要時間を2分と仮定すると、各駅停車なら「自由が丘~京急蒲田」は17分の計算です。

となると、新空港線開業後に、「自由が丘~京急蒲田15分」を実現させるには、多摩川線内で通過運転をする必要がありそうです。つまり、「急行」を設定するのでしょう。

多摩川線の既存駅はホームが短いため、東横線の10両編成を直通させるなら、途中駅は通過となります。この点からも、東横線直通列車が多摩川線内で急行運転することは、間違いないでしょう。

地下化する東急蒲田駅と、新設する京急蒲田駅は、10連対応で整備して、東横線直通を受け入れられるようにするとみられます。

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東横線内のダイヤは?

では、この「多摩川急行」は、東横線内をどのようなダイヤで走るのでしょうか。

決まったことは何もありませんが、現在のダイヤに即してみると、15分サイクルで新横浜線に直通する急行(新横浜急行)が走らないスジが毎時2本空いています。これを「多摩川急行」に充当するのが順当な考え方でしょう。

「新横浜急行」は東横線内の表定速度が低く、中目黒~多摩川間を11分で走っています。「多摩川急行」も同じと仮定すると、中目黒~多摩川間が11分で、多摩川~京急蒲田間を12分で走れば、「中目黒~京急蒲田23分」となり、東急の発表と一致します。

多摩川線内には待避設備がないので、「急行」といえど、この程度の所要時間になるのでしょう。

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渋谷~羽田空港が43分?

現ダイヤにそのまま当てはめると、「多摩川急行」の渋谷~京急蒲田間の所要時間は26分となります。渋谷駅12時32分発の「多摩川急行」は、12時58分に京急蒲田駅に着く計算です。

京急蒲田駅での乗り換え時間は、大田区によれば「約6分20秒」ですので、13時05分発の京急空港線列車に間に合います。

すると、羽田空港第1・第2ターミナル駅に、13時15分に到着します。渋谷~羽田空港間の所要時間は43分です。

渋谷駅から山手線を使い、品川経由で同じ時刻に羽田空港に到着するには、12時38分発の内回り列車で間に合います。渋谷~羽田空港間の所要時間は37分です。

さらに、JRは、羽田空港アクセス線を建設中で、その西山手ルートが開業すれば、20分程度の所要時間になるでしょう。速達性では勝負になりません。

ただ、乗り換え利便性などを考慮すれば、東急沿線や直通先からは、羽田への新たなアクセスルートとして機能しそうです。京急蒲田駅での乗り換え動線を、どの程度スムーズにできるかもポイントになるでしょう。

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多摩川線の立体化にも期待

もちろん、開業はまだ先ですので、東横線のダイヤがいまと同じとは限りません。新空港線開業とともに、東横線の種別やダイヤを一新する可能性もあるでしょう。

東急としても、渋谷から蒲田、羽田への新ルートには力を入れたいでしょうから、より速達性の高い列車を設定するかもしれません。

将来的には、多摩川線の連続立体化とホーム延伸を実施する可能性もあるでしょう。現在の多摩川線は、18m車が4両までしか停まれませんが、全駅が20m車10両対応になれば、多様なダイヤを組むことができます。

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開業時期は?

今回の東急の手続きは、都市鉄道等利便増進法に基づく補助を受けるためのものです。申請した構想が国土交通大臣に認定された後、東急が速達性向上計画を作成して提出します。

同計画が認定されると、鉄道事業法における事業許可を受けたものとみなされます。つまり、今回の手続きは、新空港線の鉄道事業許可に向けた第一歩です。

新空港線が開業すれば、渋谷駅や新宿三丁目駅から、蒲田駅への直通列車が走ることになります。開業予定は2038年~2042年頃になる見通しです。注目性の高い新線だけに、開業が待ち遠しいところです。(鎌倉淳)

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旅行総合研究所タビリス代表。旅行ブロガー。旅に関するテーマ全般を、事業者側ではなく旅行者側の視点で取材。著書に『鉄道未来年表』(河出書房新社)、『大人のための 青春18きっぷ 観光列車の旅』(河出書房新社)、『死ぬまでに一度は行きたい世界の遺跡』(洋泉社)など。雑誌寄稿多数。連載に「テツ旅、バス旅」(観光経済新聞)。テレビ東京「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」ルート検証動画にも出演。