北陸・北海道新幹線延伸で開業遅れの可能性。入札不調や残土問題で

予算積み増しも検討

北陸新幹線敦賀延伸、北海道新幹線札幌延伸の建設工事に遅れが出てきました。開業予定日が後ろ倒しになる可能性もあります。状況をまとめてみました。

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「厳しい情勢」

北陸新幹線の金沢~敦賀間は、2023年春の開業目標で建設工事が進められています。ところが、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)の細田博之座長が、2020年10月9日に、「厳しい情勢」と発言。工事の遅れが明確になりました。

北陸新幹線の工事の遅れは、少し前から関係者の間では話題になってきました。遅れの原因は入札工事の不調が相次いだこと。工事のコストが上がりすぎて、予定価格で落札する業者がなかなか決まらない状況が続いています。新型コロナウイルス感染症の拡大で、対策のためのコストが大きくなりすぎている側面もあるようです。

さらに、石川・福井県境の加賀トンネルで地盤のひび割れが確認され、追加工事が必要になっています。敦賀駅の工事も本格着工に至っていません。

こうした状況を背景に、杉本達治福井県知事らが2023年春の確実な開業を求めて細田座長を訪問。冒頭の「厳しい」発言は、その際に、座長から返されたものです。知事が与党に開業予定の遵守を求めなければならない時点で、かなり情勢は逼迫していることがうかがえます。

北陸新幹線E7系金沢駅

また予算を増やすのか

知事が与党を訪問する意味は、予算措置です。入札不調を解消するには予算を増額するほかなく、細田座長はその手当を検討する方針を示しています。つまり、開業延期を明言したわけではなく、予算を増やすことを予告したわけです。

とはいえ、北陸新幹線は2019年に、物価高騰などを理由に2263億円も建設費を積み増したばかり。さらに予算を増やせば、金額によっては、見通しの甘さを指摘されることもありそうです。

そもそも、金沢~敦賀間は2012年に工事が始まり、当初の開業目標は2026年春でした。その後、福井県の強い要望で2015年に3年の前倒しが決定したという経緯があります。11年後の開業予定を8年後に前倒ししたわけで、そのぶん工期に余裕がなかったという背景もあります。

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大きな影響

整備新幹線の開業遅れは、周囲に大きな影響を及ぼします。なかでも並行在来線の扱いは難しいところ。福井県並行在来線準備会社は、2022年春に300人体制で開業を迎えるため、すでに採用試験などを行っています。

しかし、新幹線の開業が遅れれば、並行在来線会社の開業も遅れます。同社は遅れた期間収入がないわけで、資金面の手当てが必要になります。

逆に、JR西日本はその期間、在来線を維持しなければならないわけで、人繰りや設備投資を再検討しなければならなくなります。在来線特急列車の車両の転属先など、影響は北陸本線以外にも及びます。

さらに、敦賀~大阪間の延伸にも影響を及ぼします。同区間の延伸については、敦賀開業後速やかな着工を求める声もありますが、敦賀開業が遅れれば、そのぶん後ろ倒しになるのは避けられません。

北海道新幹線は残土問題

2030年度の開業を目指す北海道新幹線の札幌延伸についても遅れの可能性が指摘されています。札幌市と小樽市を結ぶ札樽トンネル(26.2km)の工事で、有害物質を含む残土の受け入れ先が決まらないためです。

同トンネルの残土の一部は、ヒ素などの重金属を含む「要対策土」です。そのため、札幌市内の受け入れ先候補地の周辺住民が反対しており、受け入れ先が決まっていません。

当初候補に挙がったのは「厚別区山本の市有地」と「手稲区金山の民有地」ですが、いずれも強硬な反対に遭い、その後、「手稲区山口のごみの最終処分場」が候補に加わりました。しかし、こちらも周辺農家などが強く反対しています。

26kmという長大トンネルの札樽トンネル着工が遅れれば、全体工程も逼迫します。現時点で2030年度の開業予定が後ろ倒しになるとまではいえませんが、残土の受け入れ先が決まらなければ、開業は見通せません。

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