JR東日本が品川駅と田町駅の間に建設する品川新駅の概要を公表しました。新駅は東京五輪が開かれる2020年の春に暫定開業、2024年ごろの街開き時に本開業する予定です。品川新駅の概要と、品川駅の改造についてまとめてみましょう。
品川新駅は「和」のイメージ
品川新駅は、品川駅から約0.9km、田町駅から約1.3km付近のJR品川車両基地跡地内に建設されます。
デザインアーキテクトには、新国立競技場の設計を手掛ける建築家の隈研吾氏を起用。駅舎は地下1階・地上3階建ての、高さ約30m。総床面積は約7600平方メートルで、改札口は南北2カ所に設置されます。
駅舎には幅110m、奥行き35mの膜の大屋根が架けられます。大屋根は折り紙をモチーフとしており、新駅を象徴するデザインになります。全体的に膜や木などの素材を活用した「和」のイメージの空間を目指すそうです。
画像:JR東日本
駅構内は「ガラス張り」
駅舎の東西面はガラス張りとして、駅構内の中央部に約1000平方メートルの吹き抜けが設けられます。1階がホーム階で、山手線と京浜東北線が停車する2面4線です。東海道線のホームは設けられません。
画像:JR東日本
2階が改札口階で、イベントスペースなどもあります。3階にはテラスや店舗などが設けられます。各ホームにエレベーターを2基設置し、バリアフリーにも配慮します。
画像:JR東日本
想定利用者数は「五反田並み」
新駅の1日当たりの乗車人員は、2020年の暫定開業時は2.3万人、2032年ごろに13.3万人と想定しているそうです。13.3万人というのは、五反田駅の乗車人員(13万3814人)とほぼ同じ。山手線の駅では中堅に位置する利用者数です。
駅名は未定で、「高輪駅」などが有力候補としてあげられています。が、JRは「品川新駅」を仮称として用い、「高輪」を含めた既存地名を仮称に使いませんでした。
このため、JRはまったく新しい駅名を想定しているのではないか、とも思います。たとえば、品川車両基地跡地の再開発エリアに新しい「街の名前」を付け、それを駅名にも使う、というような形です。再開発エリアが「品川ニューシティ」になるなら、駅名も「品川ニューシティ」とする、など。筆者の勝手な予想ですが。
タワーマンションもできる?
JR東日本は、品川駅から品川車両基地跡地付近まで、一帯で開発する計画を立てています。品川新駅は、この大計画の一つにすぎません。品川駅には、リニア中央新幹線が2027年に乗り入れることも決まっており、品川・高輪エリアは今後十数年で大きく姿を変えそうです。
品川~田町駅間の車両基地跡地は、約13万平方メートルもあります。ここに、JR東日本は7棟の複合ビルを建設する予定です。6街区に分けて開発を進め、2020年の品川新駅開業の後、2024年に新駅を中心とする主要部分に複数のビルが完成します。最終的な完成は2030年代になる見込みです。
画像:JR東日本
ビルはオフィスや商業施設、住宅などが入った複合施設になります。居住施設も作られることが決まっていますので、タワーマンションのようなものができるのでしょう。再開発ビルの総延べ床面積は100万平方メートル強と、六本木ヒルズを上回る大規模開発になります。
泉岳寺駅新ホームは再開発ビルの下
品川新駅と隣接する京急・都営の泉岳寺駅周辺も再開発が予定されています。京急は泉岳寺駅近くにある本社を横浜に移転するなどして、第一京浜沿いに所有する土地を再開発用地として確保しました。
泉岳寺駅と品川新駅は連絡通路で結ばれる予定です。利用者の増加を想定し、泉岳寺駅のホームは拡幅されます。泉岳寺駅の新ホームは、再開発ビルの地下に入り込む計画です。
画像:東京都交通局
品川駅西口も大開発
京浜急行では、京急品川駅と駅ビルの「ウィング高輪EAST」、そして線路沿いに並ぶビル、さらに第一京浜を隔てた「シナガワグース」や「ウィング高輪WEST」などもまとめて再開発する予定です。
画像:京浜急行電鉄
シナガワグースは建て替えられ、ビジネスホテル、オフィス、会議場、住宅を備える複合ビルに生まれ変わります。土地が隣接する西武ホールディングスの「品川プリンスホテル」「グランドプリンスホテル高輪」も、リニア開業に向けて再開発される見通しで、京急と西武が協力する可能性もあります。
要するに、品川駅西口一帯が再開発されるわけで、駅前の町並みは一新されるでしょう。
京急品川駅2面4線化
京急品川駅については、2階にあるホームを1階に移し、現在の2面3線を2面4線にする計画です。配線などは明らかではありませんが、待避や折り返しが可能になり、柔軟なダイヤを組むことができそうです。
JR品川駅の2階コンコースの自由通路は、京急品川駅と第一京浜を跨いで、シナガワグースまで直結する計画です。
JRも現在、品川駅の改良工事中です。JRによると、「東海道線の東京方への折返し機能の整備、および車両基地のスリム化を目的」としているものです。上野東京ラインの品川駅折り返し機能が整備されれば、いまよりも柔軟なダイヤを設定することができるようになるのでしょう。
南北線乗り入れはいつになる?
計画満載の品川再開発の大トリは、地下鉄乗り入れです。品川駅に初の地下鉄が乗り入れる計画が、さきの交通政策審議会の答申に盛り込まれた。
新地下鉄は白銀高輪駅から南北線を延伸する計画が有力。これにより、品川から六本木、永田町などの都心部へのアクセスが改善されます。
地下鉄不在は品川駅最大の弱点でしたが、これが開通すれば利便性は一気に向上します。ただ、まだ構想段階にすぎず、完成するにしても2030年以降の話でしょう。
新幹線、リニア、空港と都心を結ぶ街
品川エリアの最終形は、新幹線とリニアが発着し、羽田空港へ直結し、東京駅や新宿など都心部へのアクセスが良好な「ゲートウェイ型新都心」です。
正直なところ、これまでの品川は、渋谷や新宿、池袋などといった他のターミナルに比べ、街の魅力はいまひとつでした。しかし、将来は大きく変わるでしょう。完成後の姿を想像すると、実にわくわくしてきます。
気がかりがあるとすれば、全部完成するまで自分が生きていられるか、ということでしょうか。(鎌倉淳)