初めて子連れ旅行をしてみて思ったこと。日本の「キッズフレンドリー」は世界に通用するか?

いままで一人旅が多かった筆者ですが、1歳児を連れて家族旅行をしてみました。帰省を除けば初めての「子連れ旅行」です。そこで体験したこと、思ったことをまとめてみました。

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どこに泊まるか?

子連れ旅行で最初に頭を悩ませるのは、「どこに泊まるか」ということ。幼児という生き物は、何をしでかすか予測がつきません。障子や襖があれば破るでしょうし、和室の床の間の絵を引っ張るかもしれません。そのため、民宿や旅館には、心配で泊まれません。

となると、ホテルの洋室になりますが、その場合は、ベッドがハードルになります。幼児は寝相が悪く、ベッドで寝ると転落の不安があります。

食事の問題もあります。他の宿泊客に迷惑をかけないためには部屋食が理想ですが、部屋食を提供している宿は「障子や襖がある宿」が主体です。

あれこれ考えましたが、結局、「子連れ歓迎」「ファミリー向け」の看板を掲げる宿に泊まるのがいいだろう、という結論になります。とりあえず、ファミリー向けで有名な星野リゾートの「リゾナーレ八ヶ岳」に行くことにしました。

リゾナーレ八ヶ岳

鉄道は選択しづらい

次なる問題は交通機関です。最初に検討したのは鉄道。乗っているだけで目的地へ連れて行ってくれるのはやっぱり魅力です。最近のJR駅はバリアフリー化が進んできましたし、子連れでも何とかなるのでは? と考えました。

が、JR駅は混雑しますし、大荷物で移動するには不便です。ホームでは子どもから一瞬も目が離せませんし、子連れでゆっくり待てそうな待合室も記憶にありません。

さらに、長距離列車のほとんどには、荷物置き場がありません。そのため、列車にはベビーカーを持ち込みにくいですし、かといって荷物をキャリーケースで転がしながら、抱っこで歩くなんて大変すぎます。

鉄道の座席にはシートベルトもありません。チョロチョロする子どもを狭い座席でずっと抱えていなければならず、座ってからも大変そう。

考えれば考えるほど、JR特急を1歳児連れで利用するには覚悟が要ります。結論として、幼児を連れた旅行で鉄道は選択しづらいです。

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レンタカー・高速道路は子連れに便利

ということで、列車はやめて、レンタカーを借りることにします。キャリーケースとベビーカーを積めるように、荷物スペースの広いワゴンタイプを選びました。必要なときに、必要なタイプのクルマを借りられるという点で、レンタカーは便利です。チャイルドシートも安価でレンタルできます。

高速道路も子連れに便利です。十数キロごとにサービスエリアかパーキングエリアがありますので、子どもがぐずったら、休憩して車外に出して散歩させることができます。

サービスエリアならお湯がありますので調乳できますし、最近リニューアルした施設なら、おむつを替えたりできる子ども向けスペースが設置されています。談合坂サービスエリアのフードコートには、子連れ優先スペースもありました。

談合坂
談合坂サービスエリア下り線

リゾナーレ八ヶ岳の配慮

さて、リゾナーレ八ヶ岳は、かつてマイカル系列の会員制リゾート施設でした。現在は星野リゾートによるファミリー向け施設になっています。「大人のためのファミリーリゾート」をコンセプトとしており、「赤ちゃん連れ、お子さま連れのご家族にやさしいポイントがいっぱい」とPRしています。

実際に行ってみると、施設はバブル期の建物をそのまま使っており、ファミリー向けに大きく改修したわけではないようです。そのため、エレベーターの数が少なかったり、階段に子ども向けの手すりがなかったりと、ハード面がファミリー向けに最適化されているというわけではありません。

ただ、ソフト面はよく考慮されています。赤ちゃん連れや子連れ向けの向けの部屋を用意しており、ベッドに転落防止用の柵を設け、調乳ポットやおむつゴミ箱を設置し、タオルなどリネン類を豊富に提供する、といった、細かい配慮が行き届いています。スタッフも子連れにとても優しいので、気持ちよく過ごせます。

リゾナーレ八ヶ岳

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レストランとプール

レストラン「ワイワイグリル」には、子連れ向けのビュフェが用意され、テーブルにはエプロンやウェットティッシュが備えられています。子ども用イスも年齢にあわせて複数用意されていますし、ベビーカーをテーブルに横付けさせることもできます。ビュフェの食事は子ども向けの料理が揃っている一方、大人が食べても美味しいと思う水準です。

ワイワイグリル

ホテルのプールや大浴場にも、子連れで入れます。幼児は粗相が多いので、世の中の多くのプールや大浴場は、おむつの取れていない子どもは入れません。しかし、リゾナーレではそれが可能です。

なにより助かるのは、他の客も、圧倒的にファミリーが多いということ。子どもがレストランで騒いでも、中庭で走り回っても、迷惑な顔をされません。なぜなら、どこの家庭も同じようなものなのですから。子連れに寛容なのは子連れなのだなあ、と実感します。

隔離された旅行

結局、筆者は、クルマという隔離された空間で移動し、ファミリー向けホテルという隔離された空間に泊まるという、隔離された旅行をしてしまいました。そのせいか、子連れ旅行といっても快適で、なんの不満もない旅になりました。

道中、通りすがりの方に迷惑をかけることもありましたが、みなさん笑って許してくれましたし、子ども連れだからといやな顔をされることは一度もありませんでした。ただ、これも隔離された空間を主に旅していたから、かもしれません。

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日本で子連れは少数派

日本において、「キッズフレンドリー」な観光施設、宿泊施設は多くはありません。高齢化社会の日本において子連れは少数派ですし、旅行をする経済的余裕のある育児世代は少なくなっています。そのため、観光産業が子連れを重視しづらいことは、容易に推察できます。

一方で、リゾナーレや、高速道路のサービスエリアの一部で導入されているような子連れ旅行者への配慮は、なかなか行き届いていると思います。

日本の観光施設の「キッズフレンドリー水準」は、欧米に比べればまだまだかもしれませんが、「幼児連れでも旅行できる」レベルにはなっています。一部の施設に限れば、世界に通用する水準に達しつつあるのではないか、という印象です。

ホンネをいえば、「隔離されていない空間」も子連れが気兼ねなく旅行できるようになればいいのですが、いまの人口構成の日本でそれを求めるのは難しいと感じます。ですから、一部の空間が子連れ向けに充実していて、それで旅行を完結できれば十分ではないか、と思います。

訪日客にもキッズフレンドリーを

最近の日本の観光産業を支えているのは、急増している訪日客です。訪日客にも子連れはいますから、「子連れ旅行にも優しい国、日本」を世界にPRできれば効果はありそう。

ただ、現状をみると、訪日客がよく使う鉄道やバスには、キッズフレンドリーに課題がありそうですし、その解決は容易ではありません。それよりは、レンタカーや高速道路を、外国人にも使いやすくする方策を充実させるほうが、当面は現実的に思えます。

子連れ旅行者が増えることは、日本を訪れる子どもが増えることを意味します。幼少期に日本を訪れた外国人は、将来、きっと日本ファンになってくれるはず。そのためにも、日本人にも外国人にも使いやすい、キッズフレンドリーな旅行施設が増えることを願いたいところです。(鎌倉淳)

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