埼玉高速鉄道の岩槻延伸について、さいたま市は2023年度に、事業化に向けた要請をおこないます。延伸後は快速運転を実施する前提ですが、途中駅での待避施設は作りません。
さいたま市長が表明
さいたま市の清水勇人市長は、2023年1月5日の記者会見で、埼玉高速鉄道の岩槻延伸について、「2023年度のできるだけ早いタイミングで、鉄道事業者へ要請する」との考えを示しました。
埼玉高速鉄道線は、赤羽岩淵~浦和美園間14.6kmを結ぶ路線です。浦和美園から岩槻を経て蓮田までの延伸計画があり、さいたま市ではこのうち浦和美園~岩槻間について優先的に事業化する方針です。
都市鉄道利便増進法の適用目指す
2022年6月には、清水勇人市長が市議会で、「2023年度に鉄道事業者に対する要請をおこなう」と表明。1月5日の記者会見では、この方針を改めて示したといえます。
埼玉高速鉄道の延伸では、都市鉄道等利便増進法の適用を受ける予定です。その認定を受けるには、事前に地元自治体が鉄道事業者に事業化を要請する手続きが必要となります。手続きに際し、自治体は整備期間や費用などを盛り込んだ計画素案を作る必要があり、清水市長の発言は、この作業が大詰めに近づいていることを示唆しています。
快速運転を前提
気になるのは、延伸事業のB/C(費用便益費)と採算性です。2018年3月に公表された延伸計画に関する報告書では、B/Cが1を上回り、採算性の基準を満たすのは、沿線開発と快速運転を前提とした場合に限られます。
この試算を基にするのであれば、岩槻延伸を事業化するには快速運転をする必要があります。
これについて、1月5日の記者会見で、さいたま市の未来都市推進部の担当者は、「快速運転のための追い越し施設を盛り込むことは決まっていない」と述べ、待避設備を整備しない見通しを明らかにしました。
待避設備を建設すれば、快速運転でより高い速達効果が見込めますが、事業費も増えるのでB/Cが1を下回る可能性があります。それを避けるため、「待避設備を設けないで快速運転をする」という前提で、事業着手を目指すわけです。
毎時16本のうち3本
ちなみに、報告書で示された快速列車の停車駅は、赤羽岩淵、鳩ヶ谷、東川口、浦和美園、岩槻の各駅です。赤羽岩淵~岩槻間の所要時間は21分で、各停に比べ5分早い想定となっています。
運行本数は、ピーク時は毎時16本のうち3本。オフピーク時は10本のうち3本です。
本当に運行するのか
この報告書が公表された時点の埼玉高速線のオフピーク時間帯は、浦和美園発着と鳩ヶ谷発着がそれぞれ毎時5本ずつでした。快速運転を実施する場合、浦和美園発着の各停を毎時4本、鳩ヶ谷発着を毎時3本に削減して、追い越さない快速を運転するという想定でした。
その後のダイヤ改正で、鳩ヶ谷発着が赤羽岩淵発着に変更となり、現在は全線で毎時5本の運行体制となっています。延伸開業後、想定ダイヤ通りにするなら全体として増便となりますが、現状のダイヤを踏まえた新たな快速運転計画は示されていません。
路線全体としてみても、快速運転で便利になるかというと微妙で、本当にこんな中途半端な快速列車を運行するのか、という率直な疑問も浮かびます。
正直なところ、B/Cを基準内に収めるための方便として快速運転を用いているようにも感じられ、開業後、数年したら「利用状況に鑑みて」快速運転はなくなってしまうのではないか、と思わなくもありません。
それはさておき、なかなか進まなかった埼玉高速鉄道の岩槻延伸計画に、現実感が出てきたのは確かなようです。(鎌倉淳)