都心部・臨海地下鉄、ルートと駅位置の全詳細。首都高速改良と同時施工か

2040年代開業目指す

前ページより続きます

首都高速地下化と同時施工か

臨海地下鉄東京駅が想定される呉服橋交差点付近では、首都高速の日本橋区間地下化事業が行われています。

同事業では、呉服橋交差点付近で、外堀通りの地下を走る首都高速八重洲線との接続のため開削工事が予定されています。この開削工事とあわせて、臨海地下鉄の工事も施工すれば効率的です。

首都高日本橋地下化
画像:首都高速道路日本橋区間地下化事業パンフレットより

新銀座駅の駅位置も、首都高速道路の改良と関連しています。駅位置が想定されているのは、東京高速道路(KK線)と首都高速八重洲線が交わる西銀座ジャンクション付近です。

首都高速日本橋地下化の関連工事で、この区間も東京高速道路が「新京橋連絡路」として地下化される予定です。駅位置付近には首都高速の丸の内入口が設置される予定なので、この工事にあわせて、臨海地下鉄も同時施工する計画とみてよさそうです。

首都高新京橋連絡路
画像:「東京都市計画道路 都市高速道路第1号線等の変更(素案)」より
広告

首都高速晴海線とも同時に

新銀座から晴海方面へのルートは、晴海通りの地下ではなく、みゆき通りの地下を通ります。これも、首都高速の工事と関連しているようです。

首都高速では、銀座付近の「築地川区間」で大規模な改良工事を予定しています。このとき、銀座付近のS字カーブを改良して、都心環状線と晴海線(未開通)の接続位置とする計画が立てられています。

下図は、築地川区間と首都高速晴海線(青色)の計画図です。

首都高速晴海線計画
画像:「東京都市計画道路 都市高速道路第1号線等の変更(素案)」より

首都高速晴海線は、銀座料金所付近で都心環状線から分岐して、国立がん研究センターの横を抜けて、築地市場跡地をかすめて晴海方面へ抜けていきます。これは、臨海地下鉄のルートと重なります。

つまり、首都高晴海線の未開通区間である晴海~銀座間と、臨海地下鉄を一体的に整備する計画であることが推測できます。それもあり、臨海地下鉄は、築地市場につながるみゆき通り地下を通るルートとなっているのでしょう。

おそらくは、新築地付近で首都高速晴海線と臨海地下鉄が並走し、首都高晴海出口と地下鉄新築地駅が近い位置で設けられ、隅田川地下付近で両者が分かれる形になるとみられます。

広告

再開発との連動

再開発と連動する側面もあります。東京駅のできる呉服橋周辺では、日本橋地区、大手町地区、八重洲地区で、それぞれ大規模な再開発が予定されています。駅と接するのは、八重洲一丁目北地区(下図の「計画地」)などです。

八重洲一丁目北地区
画像:「都市再生特別地区(八重洲一丁目北地区)都市計画(素案)の概要」より

新銀座駅も、東京駅前の再開発地域の南端に接していて、東京高速道路跡地の活用も検討されているエリアです。新銀座駅に近い、東京交通会館の建て替えも含めた再開発構想も浮上しています。

新築地は、いうまでもなく築地市場跡地の再開発事業が関連します。2022年3月に発表された「築地地区まちづくり事業」実施方針によれば、跡地には「舟運、バス、地下鉄などのインフラから成る広域交通結節点」が設けられると明記されています。臨海地下鉄は、築地市場の再開発と連動した計画であることがわかります。

築地地区まちづくり事業事業実施方針
画像:「築地地区まちづくり事業事業実施方針」より
広告

つくばエクスプレス直通運転

つくばエクスプレスの東京駅延伸計画とも関係します。つくばエクスプレスは、現在、秋葉原駅が起点になっていますが、これを東京駅まで延伸する計画があります。

交通政策審議会答申198号では、臨海地下鉄とつくばエクスプレス延伸の一体整備が提案されていて、両線が直通運転することが、いわば前提となっています。両線が東京駅や新銀座駅といった都心部の駅を共用することで、事業効果を高める狙いがあります。

今回発表された臨海地下鉄の事業計画では、つくばエクスプレスの延伸と接続は「今後の検討事項」とされました。つくばエクスプレスは複数の都県が出資する第三セクターであり、臨海地下鉄と違って都が単独で延伸を判断することはできないので、こういう表現になるのでしょう。

そのため、決定には時間がかかるでしょうが、いずれ建設が決まる可能性は高いといえます。

つくばエクスプレスの秋葉原駅と、臨海地下鉄の東京駅が計画されている呉服橋付近は、直線距離なら1.5kmしか離れていません。ただ、地下空間を活用できそうな広い道路でつながっていないため、ルート取りが気になるところです。

呉服橋から秋葉原駅東口を道路空間の下でつなぐなら、やや大回りになりますが、たとえば下図のようなルート取りが考えられます。約2kmです。この場合も、首都高速日本橋地下化や周辺の再開発と歩調を合わせて工事するほうが効率的です。

つくばエクスプレス東京延伸
画像:Google Map

広告

羽田空港接続

臨海地下鉄の終点ができる有明・ビッグサイト駅から、羽田空港への接続も今後の検討事項とされました。

有明・ビッグサイト駅は、りんかい線の国際展示場駅と隣接しています。りんかい線は、JR羽田空港アクセス線の臨海部ルートに組み込まれる予定です。

つまり、臨海地下鉄を有明まで開業させれば、羽田空港へ向かう路線と「接続」できます。これだけなら難しい話ではありません。

ただ、「接続」だけでなく、JR羽田空港アクセス線に「直通」するとなると、JR側のメリットが小さそうなこともあり、現時点では非現実的に感じられます。むしろ、中央防波堤方面への延伸のほうが、可能性としては大きそうです。

いずれにしろ、つくばエクスプレスとの直通運転に比べると、羽田空港への直通運転や臨海部での延伸は、遠い将来の構想の域にとどまりそうです。

臨海地下鉄、羽田空港接続
画像:「都心部・臨海地域 地下鉄構想 事業計画検討会 事業計画案(令和4年11月)」より
広告

事業費5,000億円規模

臨海地下鉄の事業化計画によれば、概算事業費は4,200億円~5,100億円です。キロ当たり688億円~836億円となり、とんでもない金額です。

最近着工が決まった、メトロ南北線品川延伸の総事業費が1,310億円でキロ当たり524億円。有楽町線住吉延伸は2,690億円で、キロ当たり560億円ですから、それに比べても高めです。外堀通りでは首都高速の下を掘るので、相当に深い位置になるでしょうし、運河や埋立地の地下も通るので、建設費がかさむのでしょう。

あまりにも高額なので、本当にできるのか、という気もしなくもありません。ただ、首都高速改良やまちづくりと連携した建設計画が練られているようなので、地下鉄だけ挫折することはなさそうです。

他の都市計画と絡めることで事業費を抑え、整備効果を高める工夫がされているようで、実現可能性はきわめて高いでしょう。

事業スキームとしては、地下高速鉄道整備事業費補助または都市鉄道利便増進事業費補助を想定しています。補助率は前者が35%、後者が33%です。都の試算によれば、費用便益比は1.0以上で、累積資金収支は30年以内に転換し、補助要件を満たすようです。

広告

2040年完成

臨海地下鉄の開業予定は未定ですが、東京都では2040年までの開業を目指すとしています。首都高速日本橋区間地下ルートの開通予定が2035年。首都高晴海線は事業化計画が未発表ですが、築地川区間の大規模改良後の話となれば、開通は早くて2040年頃でしょう。

これら首都高速工事と一体的に臨海地下鉄の工事もおこなうのであれば、2040年代開業になるのは必然と言えるでしょう。一部の先行開業を期待する声もありそうですが、首都高速晴海線と並行で建設するならば、大幅な前倒しは難しそうに感じられます。

車両基地の問題

車両基地(車庫)の問題もあります。臨海エリアはすでに開発が進んでいて、地下鉄沿線に車庫用地となりそうな広い空き地は見当たりません。可能性として思いつくのは、有明の東京臨海広域防災公園の地下くらいですが、かなり深い位置にならざるを得ないでしょうし、そんな地下深くに車庫を作るだろうか、という気もします。

地上に車庫を作るなら、つくばエクスプレスと直通運転して茨城県方面にでも土地を探すしかなさそうです。そのためには、臨海地下鉄開業時にTXとの直通運転が実現している必要があります。

上述したように、つくばエクスプレスの東京駅乗り入れも、首都高速日本橋地下化工事と歩調をあわせたほうが効率的なので、同時期に工事が行われるかもしれません。距離からすれば、秋葉原~東京間は2km程度ですし、この区間を開業させるだけなら、首都高速晴海線の工事を待つ必要はありません。

そう考えると、案外、つくばエクスプレスの東京駅乗り入れが先行して、臨海地下鉄の開業が後になる可能性もないとはいえません。

なんであれ、順調にいって、臨海地下鉄の開業はいまから約20年後の話です。順調にいかなければ、30年後くらいになるかもしれません。遠い将来なのか、近未来なのか、受け止め方はさまざまでしょうが、臨海エリアの方には楽しみな計画であることに違いありません。(鎌倉淳)

広告