弘南鉄道の大鰐線が廃止へ。時期は2017年3月末。2013年8月にも正式決定。「上下分離方式」などで存続も模索

弘南鉄道大鰐線が廃止される方針であることがわかりました。廃止時期は2017年3月31日限り(4月1日廃止)。同社の船越弘造社長が6月27日の定時株主総会で明らかにしたものです。

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利用者はピーク時の14%に減少

弘南鉄道は青森県西部の地方鉄道で、大鰐線は中央弘前-大鰐間13.9キロを結んでいます。大鰐線の利用者数は1974年度の約389万8000人をピークに、2012年度は約57万6000人に減少。これはピーク時の14.8%にすぎません。

大鰐線のこの9年間の累積赤字は約2億3000万円にものぼります。弘南鉄道では、大鰐線のほかに弘南線(弘前-黒石間16.8キロ)も運行していますが、弘南線は黒字。大鰐線の赤字を弘南線の黒字でカバーする状態が続いています。弘南鉄道全体での、2012年度の経常損益は約831万円の赤字で、赤字は2期連続です。大鰐線の赤字は解消される見通しが立たず、この先4年間でも約7500万円の赤字が見込まれています。

背景には、沿線の大鰐温泉スキー場や大鰐温泉の不振、弘前南高大鰐校舎の閉校などがあります。大鰐線の沿線には高校が多いのですが、親の送迎も増えていて、鉄道利用者は減少の一途。また、起点の中央弘前駅周辺の商業地の衰退も影響しています。今後の少子高齢化や過疎化を考えると、旅客需要が好転する要素はほとんどありません。こうしたことから、4年後の廃止方針を固めたということです。

大鰐線

運行継続も検討

船越社長は、自治体の公的支援による運行継続には否定的です。ただし、「上下分離方式」による存続には含みを残しています。「上下分離」とは、線路や駅舎、車両などの下部を自治体や第三セクターが保有し、それを鉄道会社が借りて上部の旅客営業を行うもの。また、土地や施設を自治体に無償譲渡し、自治体から業務を受託して運行継続するなどの方法も検討されているようです。

今後、同社は沿線の5市町村に説明し、住民の意見も聴取したうえで、廃止方針を8月の取締役会で議決する方針です。ただ、2017年3月末としている廃止時期に関しては流動的とのこと。

もう一路線の弘南線については存続します。弘南線の2012年度の利用者数は約134万9000人で、こちらも多いとはいえませんが、11年度比では0.1%増と横ばいを保っています。大鰐線に比べれば、まだ経営的に余力があるようです。

※追記
大鰐線については、弘前市と大鰐町の要請により、約1ヶ月後に「路線廃止方針」は撤回されました。その後、関係2自治体などでつくる弘南鉄道大鰐線存続戦略協議会が発足。路線周辺の街づくりや企画きっぷの販売など地域活性化と一体となった取り組みを推進した結果、2015年4~12月の利用者数が前年同期比1524人増の37万3828人となり、2010年以降で5年ぶりの増加となりました。2016年7月には、国土交通省より「地域公共交通優良団体大臣表彰」を受けています。

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