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近江鉄道は存続できるか。上下分離目指すが、廃止も選択肢

存続前提、廃止も選択肢

近江鉄道の今後の運営体制を議論する法定協議会が開催されました。上下分離などが検討され、近江鉄道は新体制への移行を目指しますが、廃止の可能性も残されているようです。

「存続ありきではない」

設置された法定協議会は地域交通活性化再生法に基づくもので、正式には「近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会」です。滋賀県と沿線10市町と学識経験者らで構成し、2019年11月5日初会合が開かれました。

地域交通活性化再生法は、地方自治体が地域の関係者による協議会を組織して地域公共交通網の形成計画や実施計画を策定し、関係主体が取り組みを進める制度です。鉄道事業については、上下分離などの再構築事業の実施計画を策定し、国土交通大臣が認定すれば、法律上の特例が受けられます。最近では、伊賀鉄道や養老鉄道が認定を受けています。

つまり、鉄道の地域公共交通再生協議会を開くということは、鉄道の存続を目指すという前提です。ただ、協議会の会長に選ばれた滋賀県の三日月大造知事は、「存続ありきではない」と強調。議論の行方によっては、廃線も選択肢であることを示唆しました。

近江鉄道

「事業継続は困難」

近江鉄道は1898年に営業を開始した歴史ある鉄道で、琵琶湖の東岸に本線(米原~貴生川)、多賀線(高宮~多賀大社前)、八日市線(八日市~近江八幡)の計59.5kmの路線網を有します。

2018年度の輸送人員は483万人と、ピークだった1967年度の4割に落ち込んでいます。ただ、もっとも落ち込んだ2002年度の369万人からは、110万人増加しています。

近江鉄道輸送人員
画像:「近江鉄道線の経営状況について」(近江鉄道)より

1994年度に赤字転落して以来25年間、黒字化は一度もなく、累積赤字は44億円を超えました。2027年度までの10年間で56億円もの設備更新費用が見込まれていることもあり、近江鉄道は「民間企業の経営努力による事業継続は困難」との見方を示しています。

近江鉄道の営業損益
画像:「近江鉄道線の経営状況について」(近江鉄道)より

近江鉄道に対し、県と沿線自治体は財政支援を実施しており、2021年度までの24年間で総額は15億円に達します。しかし、黒字化が見えない中、沿線自治体にも支援の姿勢にも濃淡が出てきているようです。

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会社は黒字経営

存続形態の議論では、鉄道設備の所有を切り離して、事業者は運行のみを担当する上下分離方式の導入が検討される見込みです。上下分離により、県と10市町の実質負担額は10年間で30億~42億円と試算されています。

ただ、近江鉄道は鉄道事業は赤字ですが、高速道路サービスエリア運営が好調で、2018年度決算の最終利益は2億9000万円と11年連続の黒字を計上しています。利益剰余金は48億4000万円あり、会社自体は健全経営です。そのため、黒字会社に対する支援ということになり、財政事情の苦しい自治体からは批判の声もあるようです。

輸送密度は?

近江鉄道の輸送密度は、2017年度の全線平均で1,902人。八日市~近江八幡間(八日市線)が4,681人、本線の彦根~高宮間が3,058人と、一つの目安である2,000人を越えています。一方で、高宮~多賀大社間(多賀線)は598人、本線の米原~彦根間は692人と3桁に留まります。これらの区間の全線を維持するのかについても、意見が出るかもしれません。

近江鉄道輸送密度
画像:「近江鉄道線の経営状況について」(近江鉄道)より

近江鉄道路線図
画像:「近江鉄道線の経営状況について」(近江鉄道)より

また、同社で車両検査などができるのは彦根電車区のみで、電車区に接続しない路線のみを存続させることはできません。つまり、輸送密度が最も高い八日市線・八日市~近江八幡間のみを残すことはできません。

今後のスケジュールについては、事務局が沿線住民アンケートなどを実施して結果をとりまとめ、2020年度上半期に存続への合意を確認します。その後、上下分離方式や分社化、財政負担などを議論し、同下半期に地域交通網形成計画を策定。2022年度中に新たな運営形態に移行することを目指します。(鎌倉淳)