JR東日本が「オフピーク定期券」を導入します。割引率は10%程度になる方向ですが、気になるのは、定期券が使えない時間帯です。
ピークの利用減目指す
JR東日本の深澤祐二社長は、2023年3月に「オフピーク定期券」を導入する方針を明らかにしました。
オフピーク定期券は、ラッシュのピーク時間帯に使えないかわりに、通常の定期券よりも価格を安く設定するものです。鉄道会社としては、ピーク時間帯の輸送量に対応する設備を維持する負担が重いので、ピークの乗客数を減らし、混雑を平準化させることが目的です。
10%割安に
深澤社長によりますと、オフピーク定期券は通常の定期券より10%割安にする想定です。首都圏の通勤定期券を対象に導入し、通学定期券には導入しません。
全時間帯で利用できる通常の定期券も残しますが、価格は1~2%値上げする見通しです。JR東日本は、バリアフリー設備を導入する名目で、2023年春に首都圏で運賃を値上げしますが、通常の定期券はこれに上乗せする形で値上げするようです。
制限時間帯は?
気になるのは、オフピーク定期券が使えない「制限時間帯」です。鉄道各社ではこれまで時差回数券を多く発売してきましたが、それと同じにするなら10時~16時頃が有効で、それ以外が無効ということになります。
ただ、10時~16時のみ有効では、毎日の通勤には使えません。したがって、オフピーク定期券は時差回数券より利用時間が広く設定されそうです。ピーク時間の平準化を目指すのであれば、7時~9時頃と17時~19時頃のみ利用不可にすれば事足りるでしょう。
しかし、利用者の立場からすれば、朝夕4時間も使えない時間帯があると不便で、10%割引くらいでは二の足を踏む人も多そうです。
10%割引なら
10%という割引率から適切な制限時間を考えてみると、1日の運行時間(5時~1時)の10%相当で使えないのが合理的です。1日20時間の運行時間の10%ですから、2時間程度の制限にとどまります。
たとえば、朝7時~9時のみ利用不可で、夕ラッシュ時間帯には制約を設けないかもしれません。朝に比べると夕ラッシュのピークの山は低いので、それでもピークシフトの役割を果たせるでしょう。
利用者としても、出社時間帯の制約は受け入れやすいですが、帰宅時間帯の制約があると使いにくい気がするので、「朝のみ利用不可」のほうが、購入層は広がるのではないでしょうか。
差額で乗れるのか
制限時間帯に利用した場合の差額についても、気になります。
オフピーク運賃の割引額相当の1日あたりの差額(10%程度)を払えばいいのか、満額の通常運賃を支払わなければならないのか。使い勝手に大きな差が出るポイントでしょう。差額で済むなら、制限時間帯が長くても受け入れられやすいでしょう。
制限時間帯の設定を全区間一律にするのか、利用駅ごとに変更するのかも気になる点です。
制度の詳細は未発表ですが、JR東日本は近く国土交通省に認可申請する見通しで、そう遠くないタイミングで商品概要が発表されそうです。(鎌倉淳)