大阪市の地下新線「なにわ筋線」について、JR、南海、阪急の3鉄道事業者と大阪府・市が整備について合意し、建設を正式発表しました。ただ、運行系統など不明な点も多く残っています。なにわ筋線の建設について、いまわかっていることをまとめながら、不明点を予想してみましょう。
途中駅は中之島、西本町の2つ
なにわ筋線は、大阪市を南北に貫く地下新線です。整備区間は北梅田(仮称)~JR難波・南海新今宮間の7.4km。途中に中之島、西本町の2駅が設けられます。
西本町でJR線と南海線が分岐し、南海線方面ではさらに南海新難波駅が設けられます。福島と西大橋にも駅建設が検討されましたが、建設費削減のため見送られました。
北梅田~西本町がJR・南海の共同運行営業区間、西本町~JR難波がJR単独営業区間、西本町~新今宮が南海単独営業区間となります。開業目標は2031年春。いまから14年後です。
阪急新線も同時開業目指す?
北梅田ではJRの地下新線(東海道支線)に接続し新大阪まで乗り入れ、北梅田~新大阪間も実質的に「なにわ筋線」に組み込まれるとみられます。北梅田~新大阪はすでに工事が始まっていて、2023年に開業予定です。
これとは別に、阪急が北梅田~十三の「なにわ筋連絡線」を建設も検討します。阪急は十三~新大阪間の「新大阪連絡線」も実現させる姿勢も示しており、両線は一体的に事業化されるとみられます。
阪急なにわ筋連絡線が実現する場合、狭軌で建設され、なにわ筋線に直通できる仕様になるようです。なにわ筋連絡線の開業目標時期は明らかではありませんが、毎日新聞2017年5月20日付によりますと、なにわ筋線が完成する2030年ごろをにらんで検討を進めるとのことです。
報道が事実なら、なにわ筋線との同時開業を目指していることになります。
南海は利益2年分を投入
なにわ筋線の整備は「上限分離方式」で行われます。大阪市などが出資する第三セクターが建設し、JR、南海両社が線路を使う形です。JR東西線を建設・保有する「関西高速鉄道」などを建設主体と想定しているようです。東西線同様、JR、南海両社とも第二種鉄道事業者になるとみられます。
事業費は3300億円で、JRと南海が40年かけて運行収益から一定の負担額を返済していきます。距離の長い南海がJRより多くを負担する見通しのようです。
日本経済新聞2017年5月23日付によりますと、南海とJRの負担比率を6対4とし、大阪府市の負担割合を同一と仮定した場合、負担額は、「国が約797億円、南海774億円、大阪府・市それぞれ607億円、JR516億円」になるとのことです。
南海電鉄の2017年3月期決算の営業利益は318億円ですから、同社にとっては、営業利益の2年分以上をなにわ筋線につぎ込む計算になります。
阪急のなにわ筋連絡線は、別事業となります。同連絡線の事業費は明らかではありません。
運行形態はどうなる?
詳細な運行形態は未定ですが、JR特急「はるか」と南海特急「ラピート」が乗り入れることは確実です。産経新聞2017年5月23日付によりますと、ラピートもJR新大阪発着になることでJRと南海が合意済みだそうで、事実なら新大阪駅のJR線ホームに南海「ラピート」が姿を見せることになります。
北梅田~関西空港までの所要時間は、「はるか」で最短30分台になる見込み。2023年に東海道支線が地下化され北梅田駅が開業した時点で、北梅田~関西空港は51分になるとされており、なにわ筋線開業後は、さらに10分以上短縮されることになります。
なにわ筋線の途中駅が2駅に絞られたことで、駅通過時の減速運転が不要になり、所要時間短縮ができるのかもしれません。
JRおおさか東線と乗り入れが有力
料金不要の普通・快速列車等の運行形態は明らかではありません。2023年の東海道支線北梅田駅開業時には、JRおおさか東線(新大阪~久宝寺、新大阪~放出は建設中)の列車が北梅田に発着する予定ですから、なにわ筋線も難波~北梅田~新大阪~久宝寺といった運行系統が有力です。
難波以南は、現在のJR難波駅の運行系統をそのまま延ばすなら、大和路線乗り入れが主体になります。ただ、実際には、運行系統の改変が行われるでしょうから、なにわ筋線にJR京都線や阪和線の普通・快速列車が乗り入れる可能性もあるでしょう。大和路、紀州路・関空快速は、いずれもなにわ筋線経由になりそうです。
南海系統については、前述のとおり「ラピート」はJR新大阪まで乗り入れるようですが、普通列車等がどうなるのかはわかりません。
阪急のなにわ筋連絡線が同時開業するなら、南海系統は基本的に阪急に乗り入れそうです。連絡線の開業が遅れるなら、当面は北梅田駅折り返しになるのかもしれません。
西本町駅の位置は?
ところで、なにわ筋線には、大阪市中西部の鉄道空白地域を解消する目的もありましたが、記述の通り、事業計画では北梅田~難波間に途中2駅しか設置されませんでした。
そのため、鉄道空白地域を埋めるという役割は薄まり、大阪府南部と梅田エリアを時間短縮する高速鉄道の性格がより強くなったといえます。
鉄道空白地域を埋める、という意味では、完全な新駅となる西本町駅がその役割を担います。駅位置ははっきりしませんが、公表された地図をみると、地下鉄中央線に接する南側に描かれており、阿波座1丁目交差点南側付近のようです。
地下鉄中央線に新駅ができるという情報はいまのところなく、単独駅になる可能性が高そうです。(鎌倉淳)