阪急神戸線の武庫之荘~西宮北口間に新駅を作る計画が、事業化に向け動き出します。仮称は「武庫川新駅」。わかっている詳細をまとめてみましょう。
武庫之荘~西宮北口のほぼ中間
「武庫川新駅」(仮称)構想は、阪急神戸線武庫之荘~西宮北口間の武庫川上に新駅を作る計画です。兵庫県、尼崎市、西宮市、阪急電鉄の4者で構成する「武庫川周辺阪急新駅に関する検討会」が、2013年度から検討を進めてきましたが、このほど、4者が事業の具体化に向けて連携した取組みを進めることで合意しました。
検討会が公表した報告書によりますと、新駅は武庫之荘駅から約1.6km、西宮北口駅から約1.7kmの、武庫川橋梁上付近です。上下線の間に2面2線のホームを備え、改札口は両岸に計2箇所設置します。可動式ホーム柵やエレベーター、エスカレーターなどのバリフリー設備も設置。改札やコンコース内通路といった駅施設の規模や配置は未定です。
阪急神戸線の武庫川橋梁は2004年に架け替えられましたが、複線の旧橋梁の両側に単線橋梁を配置したため、上下線の間に広い空間があります。新駅はこの空間を活用します。
橋梁上に駅施設を設置することになりますが、河川内に新たに基礎構造物を設置して駅舎を新設する形式ではなく、既存の鉄道橋梁を利活用した構造とします。このため、上下線橋脚にホームを架ける形になります。
歩行者と自転車でアクセス
駅周辺整備については、西宮市側は駅開業に最低限必要となるアクセス歩道と自転車駐車場の整備を行います。駅周辺が閑静な住宅地であることから、歩行者と自転車を優先したアクセスを想定します。
将来的には、連続立体交差事業や周辺の都市計画道路整備事業などにあわせて、駅前広場や駅アクセス道路などの整備を検討します。
尼崎市側も、新駅へは自転車と歩行者を中心としたアクセスを基本とし、歩行空間などの基盤整備や改修を進めます。阪急電鉄高架下用地を駅前空間ととらえ、その活用方法についても検討します。
両市とも、クルマでアクセスできる駅前広場や広い道路などは、当面整備しません。
概算事業費50億円
武庫川新駅の利用者は、近隣のJR立花駅、甲子園口駅、阪急西宮北口駅、武庫之荘駅の利用者の転換を見込んでいて、1日22,623人が転換利用するとみています。
概算事業費は鉄道施設が約50億円。そのほか、高架下に設置する自転車駐車場が約5億円、周辺道路等整備事業として、西宮市側が約1億円、尼崎市側が約4億円かかります。合計すると約60億円です。
近年の関西圏の鉄道新駅の事業費をみてみると、西山天王山駅(2013年開業)が約20億円、JR摩耶駅(2016年開業)が約40億円ですから、武庫川新駅はやや高めです。橋梁上に建設し、2箇所の出口を作ることなどが理由でしょう。
都市・地域交通戦略推進事業等による国庫補助を想定しており、駅設備に関しては国、自治体、事業者が各3分の1(約17億円)ずつを負担します。周辺整備は国と自治体が2分の1ずつ負担します。
特急停車駅増も?
武庫川の幅は堤防を含めると250m以上ありますので、河川上にホームを設置したとして、8両編成の列車(160m)が停まっても100m程度余ります。さらに、駅施設は東西に伸びる形で配置しますので、どちらの改札口からも、列車に乗るまで100m近く歩くことになりそうです。
河川橋梁上の駅としては、阪神電鉄の武庫川駅が知られていますが、その約3km上流に、今度は阪急の駅ができることになります。川の上にホームがある駅は各地にありますが、ホームがすっぽり川幅に収まる駅は珍しいので、新たな鉄道名所になるかもしれません。
また、「歩行者と自転車によるアクセス」を掲げることで、駅周辺整備を最小限にとどめているのも、武庫川新駅の特徴といえます。大都市圏の新駅は、駅周辺の再開発を伴うことも多いのですが、武庫川新駅に関しては、そうした計画はいまのところありません。
新駅設置で、阪急電車のダイヤにも注目が集まります。現状の十三~西宮北口間では、日中ダイヤで普通は特急の待避をしません。しかし、新駅設置で普通の停車駅が増えれば、特急のスジが寝てしまう可能性があります。
となると、スジを寝かせないために、日中の運転間隔を広げるか、特急の塚口停車案が浮上するかもしれません。(鎌倉淳)