JR美祢線の復旧費用が約58億円かかることが明らかになりました。JR西日本は単独での復旧は困難としています。
2023年豪雨で被災
JR美祢線は山口県の厚狭~長門市間46.0kmを結ぶローカル線です。2023年6月の豪雨被害で約80箇所が被災し、現在も復旧していません。
JR西日本は、2023年9月に被災状況を説明したものの、厚狭川全体の河川改修の検討に対応するなどとして、これまで復旧費用や復旧時期について明らかにしていませんでした。
復旧に58億円と5年間
2024年8月28日に開かれたJR美祢線利用促進協議会の復旧検討部会の初会合で、JRは復旧費用と工期を初めて公表。復旧費用は概算で58億円以上、復旧のための工事期間が着工後約5年かかるという見通しを明らかにしました。
工事費用の内訳は、被害の大きかった第6厚狭川橋梁の改築費が22億円、その他の設備の機能回復で10億円、他の橋梁の補強工事に26億円としています。
JRは、復旧費用とあわせて、営業費用についても2020~22年度の平均で6億円だったことを明らかにしました。この金額は、保守管理費と輸送管理費も含めたものです。
只見線、肥薩線の例に倣うと
JRでは復旧費用を公表する前から単独での復旧は困難としていて、路線のあり方についての議論を求めています。
現時点では費用負担の議論になっていないようですが、JRとしては、同様の災害復旧となった只見線や肥薩線の例を参考にしているのでしょう。両線は、上下分離をおこない、運転再開後は自治体が運行費を負担することで、JRが復旧に合意しました。
只見線は、当初試算で復旧費用81億円、赤字3億円と見積もられていました。肥薩線は235億円と9億円の赤字です。これに比べると、美祢線の復旧費用は少なく、赤字額は只見線と肥薩線の中間です。
只見線・肥薩線と同様のスキームにするのであれば、自治体は復旧費用で一定割合を負担した上に、運転再開後に年間6億円の費用の一部または全部を永続的に負担し続けなければならなくなります。
輸送密度を伸ばせるか?
沿線自治体で構成する利用促進協議会では、2024年5月に「復旧後の利用促進策の検討結果」を公表。2019年度に478人だった輸送密度を、最大1,292人にまで伸ばせるとの試算を示しました。
仮にこれだけの利用があるならば、運行費負担をしても「割に合う金額」といえなくもありません。
ただ、1,292人というのはかなり楽観的な数字で、これからの人口減少を考慮すれば、現実的には478人を維持できるかも微妙でしょう。
運転再開は早くても2040年ごろ
会議に出席した美祢市地域振興課長は、「JRによる鉄道での復旧を一番に望んでいるが、それ以外の復旧も協議して検討整理していきたい」と述べるにとどめています。
次の部会は10月頃に開かれる予定で、今後、美祢線の「あり方」と復旧について、大きな議論になりそうです。
議論にはそれなりの時間がかかりそうで、復旧が決まったとしても、10年かかる厚狭川改修工事を待って着手するため、工期5年を足すと、運転再開は早くても2040年ごろになるでしょう。バス転換という可能性も、ないとはいえません。(鎌倉淳)