9月25日に刊行された『鉄道未来年表』(鎌倉淳著、河出書房新社)には、原稿にしながら、ページ数の都合でやむなく削除した項目があります。その一部を、「補遺編」としてご紹介します。今回は、「みなとみらい線、根岸延伸の実現可能性はあるか」です。
(※以下は、『鉄道未来年表』で未掲載となった項目の原稿を基に記事化したものです)
元町・中華街からの延伸工事
横浜環状鉄道みなとみらい線は、横浜駅と元町・中華街駅を結ぶ4.1kmの路線である。基本的に全列車が東急東横線と直通運転をしているので、東横線利用者にもおなじみの路線だろう。東横線渋谷駅発の列車の大多数の行き先が、「元町・中華街」となっている。
その終点、元町・中華街駅から、さらに先に線路を延ばす工事がおこなわれている。港の見える丘公園の地下に、車両留置場を作っているのである。
東急との借地契約が切れ
みなとみらい線が開業したのは2004年である。開業から20年も経って、なぜ、いまごろ終点付近に車両留置場を作っているのか。
じつは、今のみなとみらい線には車両基地がない。代わりに、東急の元住吉検車区に敷地を借りて、基地代わりにしている。
この借地契約は2019年までだった。というのも、みなとみらい線の建設に着手したころは、根岸まで延伸する計画があり、延伸実現時に根岸付近に車庫を確保する予定だったからだ。
しかし、延伸計画は停滞した。多くの需要が望めなかったからだ。2016年度に需要予測がおこなわれたが、1日2万人程度の利用にとどまるという結果だった。地下鉄を建設するには少ない。
みなとみらい線を運営する横浜高速鉄道は車両置場に困り、結局、4編成を収容できる車両留置場を地下に建設することにした。総延長は約589mで、2030年に供用を開始する予定である。
「劇的な土地利用の変化」があれば
この留置場を足がかりに、本牧・根岸方面への延伸ができないか。そう考える人も多いだろう。
しかし、横浜高速鉄道の最大株主である横浜市に、前向きな動きはみられない。
2022年3月の横浜市議会では、当時の副市長が「劇的な土地利用の変化が出てこないと事業化は難しい」と答弁した。「劇的な土地利用の変化」とは、たとえば根岸周辺の工業地帯で、大規模な再開発が行われるようなことを指すという。
本牧や根岸に「第二のみなとみらい」を作るのであれば、地下鉄の必要性が高まるので、事業化の可能性が出てくる、という話である。ただし、そうした大規模再開発計画は、いまのところ浮上していない。(鎌倉淳)
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【本書の内容構成】
序章 鉄道未来年表 2025~2050
1章 人口減少時代の鉄道の未来
2章 東京圏の鉄道の未来
3章 大阪圏の鉄道の未来
4章 新幹線と並行在来線の未来
5章 地方鉄道の未来
6章 車両ときっぷの未来
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