JR西日本が「みどりの窓口」大削減。ネット予約で用は足りるか

2年で半減

JR西日本が「みどりの窓口」を大削減します。2年間で半減し、10年後には3割以下に。背景としてインターネット予約の拡大がありますが、それで用は足りるのでしょうか。

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10年で3分の1に

JR西日本によりますと、2020年度当初に約340駅ある「みどりの窓口」の設置駅を、2022年度末までに約180駅に半減します。2030年度末までにさらに減らし、新幹線駅停車駅や拠点駅など、約100駅にまで縮小します。

京阪神エリアに限ると、2020年度当初に約160駅あったのが、2022年度末に約120駅に減らし、2030年度末には約30駅にします。「京阪神で30駅」となると、かなり少なく、「みどりの窓口」は主要駅にしか存在しないレアな施設になりそうです。

みどりの窓口削減
画像:JR西日本プレスリリース

代替策として、オペレーターとの通話が可能な「みどりの券売機プラス」の導入駅を増やします。2020年度初めに100駅だったのを、2022年度末までに約180駅に増設。京阪神エリアでは、約70駅を約100駅にします。

「みどりの券売機プラス」は、カメラや割引証などを置く台座があるため、ジパング倶楽部や学割のきっぷ、通学定期券も扱えます。乗車変更、きっぷの払い戻しなどにも対応します。オペレーターとの通話機能があるので、サポートを受けながらきっぷの購入も可能です。

みどりの券売機プラス
画像:JR西日本ホームページより

さらに「高機能型券売機」も増設します。「高機能型券売機」には通話機能はありませんが、交通系ICカードの新規発行、チャージ、クレジットカードによる定期券発行、乗車券の払い戻しなどが可能です。

2020年度初めに150駅だったのを、有人駅を中心に約400駅に増設。京阪神エリアでは、約110駅を約270駅にします。

JR西日本の京阪神エリアとは近畿統括本部を指し、その管内には342駅がありますので、京阪神エリアの8割近くに「高機能型券売機」が設置されることになります。

みどりの窓口

窓口利用者は減少

JR西日本がみどりの窓口を縮小する背景としては、人手不足と経営効率化という課題があります。

利用者サイドから見れば、インターネット列車予約が充実してきて、必ずしも窓口を必要としなくなってきた、という面もあるでしょう。

JR西日本の列車のきっぷは、同社の予約サイト「e5489」で購入できますし、東海道・山陽新幹線では有料会員向けの「エクスプレス予約」に加え、年会費無料の「スマートEX」が普及してきました。そのため、みどりの窓口に寄らずとも、JR新幹線・特急のきっぷを購入するのが簡単になっています。

駅の指定席券売機(みどりの券売機)の台数も増えました。みどりの窓口の横にはたいてい指定席券売機があり、行列は少なめです。単純な特急券類の購入なら、指定席券売機で事足ります。

さらに、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあります。感染予防のためか、駅の有人窓口の利用は減少傾向にあります。

大阪駅発着の中長距離券を購入する場合、みどりの窓口を利用する割合は、2019年11月に3分の1程度だったのが、2020年11月は4分の1程度にまで縮小しています。いまや、特急券を購入する旅客のうち、7割以上が自動券売機やインターネット販売を利用していることになります。

みどりの窓口
画像:JR西日本プレスリリース

こうした状況を考えれば、人手が必要なみどりの窓口を徐々に減らして省力化していくのは、自然な流れといえます。

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慣れている人には簡単

実際、JRの予約サイトやアプリの使い勝手は改善し、インターネットでのきっぷの購入は、以前に比べて格段にラクになりました。駅の窓口まで足を運んで行列するよりも、PCやスマホを操作して購入するほうが、慣れている人には簡単です。

駅で購入する場合でも、単純な「乗車券・特急券」類なら、指定席券売機を使うほうが、窓口に並ぶよりも早く買えます。窓口はいつも混んでいるので「新幹線に乗るときは券売機に直行」という人も多いのではないでしょうか。

筆者個人の感覚としても、JR駅の窓口を利用する機会は非常に少なくなったと感じています。

ただ、最長片道きっぷなど、鉄道ファンが好む難しいルートのきっぷなどは、駅窓口でなければ買えません。また、複数予約を同時に依頼するときも、券売機よりも窓口のほうが間違えにくいでしょう。

そこまで複雑な案件でないにしても、「みどりの券売機プラス」は、仕様上は駅の窓口に匹敵する機能を備えてはいるものの、実際に操作をするのは利用者なので、スムーズにはいかないことも多いようです。

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ライトユーザーには難しい面も

JRのきっぷのルールは、鉄道に興味のない人にとっては、かなり複雑です。ところが、インターネット予約サイトや指定席券売機は、JRのきっぷのしくみについて、最低限の知識を持っている人を前提に設計されていると感じることがあります。

たとえば、新幹線の価格が「乗車券」と「特急券」で構成されていることを知らない人にとっては、「乗車券の選択」の画面で片道なのか往復なのか、乗車券なしなのか、乗車券の区間とは何なのか、迷ったりします。

当然のことですが、さまざまなハンディキャップを抱える人も、ストレスなくきっぷを買えるようにする必要があります。それを窓口の係員なしで実現するのは、簡単な話ではない、と思わなくもありません。

多様な利用者に対応するには、ハードを整えるだけでは足りません。迷わずに買いやすい仕組みや、シンプルでリーズナブルな企画きっぷの設定など、ソフト面の対応もさらに充実させてほしいところです。(鎌倉淳)

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