「ローカル路線バスの旅Z 第19弾 谷川岳→銀山温泉」の正解ルートを考える。「微妙な難しさ」という按配

ロングがあったときは気をつけてください

テレビ東京系列の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第19弾が放送されました。田中要次と羽田圭介のコンビが、路線バスだけを乗り継いで旅をする番組です。マドンナは、フリーアナウンサーの馬場典子です。

今回の舞台は北関東から南東北。群馬県谷川岳から3泊4日で山形県銀山温泉を目指します。チェックポイントはありません。例によって正解ルートを検証してみましょう。なお、以下はネタバレ100パーセントです。また、結果論100パーセントです。行ってない筆者が机上で語っているだけです。ご理解ください。

※以下、掲載時刻は確認しましたが、間違いや勘違いがあると思います。ご容赦ください。また、間違いを見つけましたらご指摘ください。記事は掲載後に加筆・修正することがあります。文中は敬称略です。

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実際ルート

最初に、番組で3人が実際に旅したルート(実際ルート)をたどってみましょう。時刻表上の定刻を確認してみました。時刻のはっきりわからなかった部分は筆者の推定です。

▽1日目
谷川岳ロープウェイ10:25→11:15上毛高原駅11:35→13:07道の駅かたしな15:29→16:27湯元温泉16:40→17:48東武日光駅18:05→18:35下今市駅18:40→19:16鬼怒川温泉駅

▽2日目
鬼怒川温泉駅06:53→07:04新高徳駅07:10→07:56矢板駅→徒歩5km→09:02野崎中学校→徒歩2.3km→09:45一区町十文字11:01→11:13西那須野駅東口/西口11:22→11:42那須塩原駅西口12:30→12:45黒磯駅西口14:50→15:43追分→徒歩3.2km→関の森公園16:26→16:58白河駅前17:30→18:13石川駅前

▽3日目
石川駅前07:00→07:59須賀川駅前08:14→08:52郡山駅前09:30→09:50フェスタ11:48→12:15本宮駅入口→徒歩7.9km→高越15:04→15:10二本松駅前/二本松駅入口16:18→17:16福島駅東口17:45→18:34国見役場→徒歩5.7km→越河清水→徒歩11.4km→白石駅

▽4日目
白石駅前08:50→09:31遠刈田温泉10:27→11:15蔵王刈田山頂13:00→14:30山交バスターミナル15:00→15:40天童駅→徒歩8.1km→17:26さくらんぼ東根駅18:13→18:51尾花沢待合所(銀山温泉まで13km、最終バスは17:54)

ということで、3日目に約25kmを歩くという驚異の粘りで健闘したものの、最後、あと一本でバスが及ばず、尾花沢待合所にて失敗となりました。通算成績で9勝10敗の負け越しとなり、田中・羽田コンビでのシリーズ打ち切りが決まりました。

番組を見る限り、途中にどうしてもバスのつながらない区間もありそうで、なかなか難しいお題に感じられました。ゴール可能なルートはあったのでしょうか。検証してみましょう。


※Googleマップのルートは概略です。正確に表示しているとは限りません。(以下同)

ローカル路線バスの旅Z第19弾
Ⓒテレビ東京

「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第19弾 群馬県・谷川岳~山形県・銀山温泉
【放送日】2022年8月20日(土) 18時30分~20時54分(テレビ東京系列)
【出演】田中要次、羽田圭介、馬場典子
【ナレーター】津田健次郎

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かたしなで2時間待ち

1日目、一行は谷川岳ロープウェイ10時25分のバスで出発します。谷川岳からは上毛高原駅に向かうほかありません。そこから片品村方面のバスに乗るのは、妥当な選択でしょう。

最初のポイントとなったのは、鎌田です。ここには関越交通のバス営業所があり、近辺の交通の要衝です。ここで降りて情報収集するのか思いきや、一行は通り過ぎ、道の駅尾瀬かたしな前で降車。食事を摂ったあと、15時29分まで2時間以上も待って、日光方面につながる湯元温泉行きバスに乗り継ぎました。

番組でも紹介されたとおり、ここから尾瀬沼方面に進み、歩いて檜枝岐方面に向かうという選択肢もありました。そうすれば展開は大きく変わっていたのですが、これについては後述します。

宇都宮ルート

湯元温泉、東武日光駅、下今市駅と乗り継いで、1日目は鬼怒川温泉泊まりとなりました。放送を見る限り、思うように情報収集ができずに流れ着いたようにも感じられましたが、他にルートはなかったのでしょうか。

考えられる方向性としては、県都・宇都宮に抜けることでしょうか。その場合は、以下のようになります。

▽1日目
東武日光駅18:06→19:14県庁前20:39→21:39玉生車庫→徒歩9.7km→矢板駅

▽2日目
矢板駅→徒歩5km→野崎中学校前07:42→08:05大田原市役所08:52→09:20那須塩原駅東口/西口09:55→10:10黒磯駅西口11:00→11:50追分→徒歩10.5km→実業高校前15:03→15:23白河駅前16:00→16:43石川駅前17:00→17:59須賀川駅前

▽3日目
須賀川駅前06:45→07:17郡山駅前07:30→08:18本宮市役所→徒歩0.9km→本宮駅前11:30→11:41大山字岩ヶ作交差点→徒歩6.3km→若宮二丁目13:15→14:23福島駅東口14:55→15:44国見役場→徒歩5.7km→ 越河清水17:37→18:06白石駅前19:14→19:55遠刈田温泉

▽4日目
遠刈田温泉07:22→07:52村田役場前→徒歩0.3km→村田中央08:25→08:48川崎中央→徒歩0.3km→かわさきまち09:40→10:56仙台駅前/仙台駅西口11:05→12:51尾花沢待合所14:19→14:53銀山温泉

東武日光駅から宇都宮方面に向かうバスに乗り、宇都宮市中心部で乗り換えると、玉生車庫に21時39分に到着できます。ここで泊まれば、翌日は実際ルートに収斂しますが、玉生車庫付近にめぼしい宿はありません。

仕方なく矢板まで踏ん張って進むと想定すれば、2日目以降が「1本早い」乗り継ぎとなり、福島以降が段違いに楽になります。最終日はほとんど歩かずにゴールできたでしょう。

とはいえ、1日目に矢板に着けたとしても深夜です。上記の乗り継ぎでは、野崎からのバス情報を仕入れた上で、矢板を翌朝6時台に出発しなければなりません。2日目からそれができるかというと疑問も残ります。

すなわち、一行が1日目に鬼怒川温泉に向かって泊まったことが、間違っていたとまではいえません。

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湯西川温泉ルート

実際の田中・羽田一行は、宇都宮ルートは考えもせず、鬼怒川温泉に向かいました。バス営業所で那須方面への詳細な情報を得て、翌朝、新高徳駅に戻り、矢板駅に向かいます。

このとき、湯西川温泉方面へ向かうことも検討したようですが、その場合はどうなっていたでしょうか。

▽2日目
鬼怒川温泉駅08:35→09:05湯西川温泉駅→徒歩13.7km→上三依塩原温泉口駅12:20→13:05塩原温泉バスターミナル13:15→14:00西那須野駅西口

このように、西那須野駅に到着するのが14時となります。実際ルートでは11時すぎに到着していますので、約3時間遅くなります。徒歩距離も長いので、湯西川温泉へ向かわないことは正しい選択だったといえます。

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白河越え

実際ルートに戻ります。2日目、矢板駅に午前8時頃到着。ここでバスが途切れるので、大田原市バスがある野崎方面に進むものの、時間があわず、結局7kmほど歩いて西那須野駅へのバスを捕まえました。

矢板から大田原を経て黒磯駅に至る乗り継ぎはいくつかバリエーションがありますが、結果に違いがないので省略します。

黒磯駅からは、追分を経て白河の関(関の森公園)に抜けます。「バス旅」ファンにはおなじみの「白河越えルート」です。黒磯から白河に抜けるには、他に適当なルートはありません。

天栄ルート

次のポイントは、白河から須賀川への乗り継ぎです。一行は白河駅の案内所で聞き込んだ上で、石川方面へ向かいましたが、大信庁舎を目指して天栄村に至る選択もありました。以下のようになります。

▽2日目
関の森公園16:26→16:58白河駅前17:50→18:20大信庁舎前18:20→18:32天栄村役場(→徒歩10.1km→鏡石駅)

▽3日目
天栄村役場06:44→鏡石駅前07:10→07:30須賀川駅前07:50→08:35郡山駅前08:45→09:34太田熱海病院/太田病院前10:00→10:49本宮駅前11:30→11:41大山字岩ヶ作交差点→徒歩6.3km→若宮二丁目13:15→14:23福島駅東口14:55→15:44国見役場→徒歩5.8km→越河清水17:37→18:06白石駅前19:14→19:55遠刈田温泉

本宮以降は宇都宮ルートと同じで、3日目に遠刈田温泉に到着できます。3日目に遠刈田温泉に泊まれればゴールできることは宇都宮ルートで示していますので、天栄ルートでもゴール可能です。

天栄村役場付近に宿泊施設はなさそうですが、少し離れれば旅館はありますので、送迎を仰ぐことはできるでしょう。それができない場合は、2時間ほど歩いて鏡石まで行けばホテルがあります。上記では、参考として鏡石駅まで歩くルートを括弧内で示しています。

いずれにしろ、2日目に天栄村まで到達できれば、3日目に須賀川駅07時50分発のバスに間に合います。このバスに乗れれば郡山以遠の乗り継ぎが抜群によく、3日目に遠刈田温泉まで到達することが可能になります。

実際ルートでは、須賀川駅に3日目07時59分に到着しています。9分の差でこの須賀川駅07時50分発に間に合いません。直後に出る須賀川発08時14分発のバスで追いかけていますので、ほとんど差は無いように見えてしまいますが、このバスでは郡山駅から先、本宮への乗り継ぎが悪いのです。

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上蓬田ルート

実際ルートに戻ります。一行は白河駅から石川駅に至り、翌朝、須賀川へ向かうバスを見つけ出しました。

しかし、須賀川方面行き以外のバスに乗る方法もありました。以下のようになります。

▽3日目
石川駅前06:50→07:25上蓬田07:30→08:35郡山駅前08:45→09:34太田熱海病院/太田病院前10:00→10:49本宮駅前

石川駅から上蓬田を経由すれば、郡山駅前に8時半過ぎに到着し、太田熱海病院経由で11時前に本宮に着けます。以降は天栄ルートと同じです。

要するに、2日目に白河駅で大信庁舎前方面に向かうか、3日目に石川駅で上蓬田方面に向かえば、ゴールできる可能性がぐんと高まった、ということです。白河駅では案内所で聞き込んだ結果なので仕方ありませんが、石川ではバスの営業所までは行っていないようです。

石川営業所行きのバスはまだあったようですので、そこで聞き込みができていればと悔やまれます。

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フェスタから歩いていたら

実際ルートに戻ります。一行は須賀川発08時14分のバスに乗車して、郡山駅前に08時52分に到着。本宮方面に抜けられる太田熱海病院前行きのバスが08時45分に出たばかりで、乗り継げませんでした。

このため、一行は09時30分発のバスでフェスタまで行きました。そこから本宮まで8km余り。本宮行きのバスは11時48分発です。

羽田は本宮まで歩くことを主張する一方、田中は2時間後にバスが出るのに8kmを歩くことに意味を見出しません。結局、時間切れで休むことになったのですが、仮に、ここで歩いていたらどうなっていたでしょうか。

▽3日目
フェスタ09:50→徒歩8.7km→本宮駅前11:30→11:41大山字岩ヶ作交差点→徒歩6.3km→若宮二丁目13:15→14:23福島駅東口14:55→15:44国見役場→徒歩5.8km→越河清水17:37→18:06白石駅前19:14→19:55遠刈田温泉

このように、8.7kmを1時間40分で歩ききれば、本宮駅前を11時30分に出るコミュニティバスに乗ることができました。この場合、上記の天栄・上蓬田ルートに追いつき、2日目に遠刈田温泉に到着。ゴールの可能性が高まったといえます。

ただ、8.7kmを1時間40分を実現するには、時速5.3km程度で進まなければなりません。不可能とはいえないまでも、意識して歩かなければ達成できない速歩でしょう。本宮駅から先の情報を得ることができない状況で普通に歩いていたら、おそらくはタッチの差で間に合わず、疲労と悔しさが増加したに違いありません。

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ゴールの気配

結局、一行は、フェスタで休養を十分にとった後、本宮から二本松市内の高越まで約8kmを歩きます。その後、バスを乗り継いで国見役場に18時34分に到着。さらに越河清水まで5.7kmを歩きますが、着いたのが20時15分。白石方面へのバスは終わっていました。

時間的には、宿を探してもいい頃合いですが、田中・羽田一行は、ここから驚異の脚力を見せつけます。越河清水からさらに歩き、最終的に、国見役場から白石駅まで約17kmを歩き切りました。これにより、3日目に白石市内に入ることができ、ゴールの気配が見えてきました。

一行は白石駅で、蔵王刈田山頂行きのバスを見つけます。ただ、その先の様子がわからないことと、仙台方面への可能性も探るため、4日目に早起きして情報収集をすることに。

その結果、蔵王へ向かえば山形市へ抜けることを知る一方、仙台方面への有力ルートを見つけることができず、「蔵王ルート」を選択してしまいました。

仙台ルート

このとき、「仙台ルート」を見つけ出していたら、どうなっていたでしょうか。

▽4日目
白石駅前08:50→09:31遠刈田温泉→徒歩11.1km→川崎役場前13:03→14:08仙台駅前/仙台駅西口15:15→17:01尾花沢待合所17:54→18:21銀山温泉

実際ルートと同じバスで白石駅前を出発し、遠刈田温泉に到着後、隣にある川崎町まで約11kmを歩けば、上記のように乗り継いでゴールが可能でした。

仙台から尾花沢へのバスは、おなじみ48ライナーです。田中・羽田一行は過去に利用経験があるので、このバスの存在はわかっていたようで、仙台まで行けば何とかなることは知っていました。

しかし、川崎町から仙台駅へのバスルートを調べきれず、結果として、ゴールを逃してしまったわけです。

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仙台ルートは選べたか

川崎町から仙台へのバスは、かわさきまち停留所など発着のタケヤ交通と、川崎役場前など発着の宮城交通があります。タケヤ交通は毎時1本程度ありますが、宮城交通は土曜日の場合、1日2本だけです。

そのため、当記事では、宇都宮ルートなどでタケヤ交通を使う乗り継ぎで検討してきましたが、上記の「仙台ルート」では、川崎役場前を13時03分に出る宮城交通を使っています。

白石駅から遠刈田温泉へのバスも宮城交通系列のミヤコーバスでした。白石市内にはミヤコーバスの営業所があり、駅から2kmほど離れていますが、早朝には十分な時間があったので、情報収集は可能だったでしょう。

白石営業所に行けば、川崎役場前からの宮城交通バスの情報を得られた可能性が高く、そうすれば「仙台ルート」を選ぶことはできたでしょう。そう考えると、もったいないことでした。

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第10弾の経験

一行が蔵王ルートを選んだ背景として、第10弾の成功もありそうです。

第10弾で、一行は、越後湯沢~山形駅の乗り継ぎを成功させています。したがって、山形駅まで行けば、銀山温泉方面へ乗り継げることを知っていたのでしょう。

そして、目の前には土日限定の蔵王行きのバス路線があり、山形へ抜けられるという情報も得られたので、こちらが正解と考えてしまったのかもしれません。

しかし、遠刈田温泉から蔵王方面へのバスに乗った瞬間に、ゴールの可能性は潰えてしまいました。経験が仇になることは、「バス旅」ではよくあることです。

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