富山県の観光といえば、立山黒部アルペンルートが有名です。ロープウェイ、ケーブルカー、トロリーバスなど、さまざまな交通機関を乗り継いで北アルプスを横断するルートは、世界的にも大規模な山岳観光ルートとして知られてきました。
しかし、実は立山・黒部エリアには、あと二つ「知る人ぞ知る」とてつもない観光ルートがあります。「黒部ルート」と「立山カルデラ」です。どちらも一般には非公開ですが、「見学会」「学習会」などのツアーに参加すれば行くことはできます。筆者も参加してみました。
黒部ルートとは?
まず、黒部ルートとは、黒部峡谷鉄道欅平駅から黒部ダムまでの、関西電力の物資輸送専用ルートです。欅平駅からトロッコ列車、竪坑エレベーター、関西電力黒部専用鉄道(上部軌道・地下トロッコ列車)、インクライン、専用地下道バスを乗り継いで通り抜けます。途中には、有名な黒部川第四発電所もあります。いろんな乗り物に乗り込んで、地底深く突き進み、発電所を見学し、最後は黒部ダムに到着! これは冒険的なおもしろさがあります。
いっぽう、立山カルデラは、富山地方鉄道立山駅の南方に広がる立山火山のカルデラです。土砂災害が頻発するので一般人は立ち入り禁止ですが、砂防工事のための道路はよく整備されています。戦前に栄えた立山温泉跡地や、産業遺産クラスの古い砂防堰堤などが見学可能。そして最後には、砂防工事用のトロッコ軌道に乗車。このトロッコ軌道は、立山駅付近の千寿ヶ原から水谷まで敷設されていて、途中に38段のスイッチバックが設けられています。これだけのスイッチバックが続く山岳鉄道は世界にもほとんど例がありません。
水谷から千寿ヶ原へ
筆者は水谷から乗り千寿ヶ原に下りてきましたが、迫力満点の軽便列車でした。逆ルートのツアー(千寿ヶ原から水谷に登るツアー)もあります。
どちらも素晴らしい観光ルートです。
こんな素晴らしい観光資源がなぜ一般に未開放なのかというと、どちらも工事・作業のためのルートであって、一般人が見学できるように作られていないからです。一般人が利用できるようにするには、さまざまな法規制に従わなければならないのですが、そうした規制をクリアするためには多額の費用がかかるからです。
また、純粋に「観光客は作業の邪魔」「危険なエリアである」などの意見もあるでしょう。黒部発電所の重要性や、カルデラ内部に観光客が入ることの危険性については、筆者にも理解できます。
作業用にしておくのはもったいない
しかし、これだけの施設があるのに作業だけに使う、というのは20世紀的な発想にも思えます。企業活動や土木事業が優先で、観光は「二の次」というのが20世紀の日本でした。しかし、これからの日本は観光産業を大事にしないといけません。黒部ルートも立山カルデラも、「世界から人を呼べる」観光エリアになりうる可能性を秘めています。事実、立山黒部アルペンルートはアジアからの観光客に人気の観光地になっていますが、黒部ルートや立山カルデラはそれに匹敵する人気になるパワーを秘めている気がしてなりません。
さまざまな障害はあるでしょうが、ぜひ「世界屈指の山岳地下施設」である黒部ルートと「世界屈指の山岳鉄道」である立山トロッコを一般人が利用できるように検討してほしいものです。